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氷川丸、変わらず。 [水彩画とスケッチ]

20090318_hikawamaru.jpg

 18日、知人の個展会場に向かう前に描いた氷川丸。気温が上がり、のどかな日差しではあったけれど、空は黄砂でうすぼんやり。

 1960年代の末まで横浜に住んでいた私にとって、明るく綺麗に整頓された今の横浜は、どこか他人行儀だ。そして訪ねるたびになんとはなしの違和感を覚える。

 考えてみれば、1960年代は戦争が終わってまだ25年足らず。戦後の面影もほとんど消え、いちおう街らしくなってきたとはいえ、それはまだ化粧の第一段階が済んだ程度の時代。そんな街の表層をひと皮向けば、まだまだ未整理というか「やっとここまで立ち直った」というぎりぎりのメイクアップがあちらこちらに見える、そんな時代だったのだ。

 青春期のそんな横浜の印象が強く残っているせいか、この十年ほどの新しい横浜は、どうもピンと来ない。
 みなとみらい。明るく開放的な空間は、新しい横浜のシンボル的なエリアだ。が、そのなんともプラスティックな印象は、他の都市の大規模開発とどこが違うのだろう?
 ビジネス+行政的な視点からすれば「まったく独自の街造り」とは思うが、その結果として目の前にあるものの姿が、ここまで均質化されてしまうのは、ちょっとどうかなぁ、とも思う。
 元町、山手、といった場所も軽やかに化粧された表層ばかりが目に映る。日本中?、みんなこんなに明るく小奇麗な姿になってしまって良いのだろうか?その根っこは、大規模リゾート型(というのも変だけど)遊園地と何ら変わらない、と、素朴な疑問が湧く。(ちょっと単純化し過ぎた感想だけれど、大方のところでこの傾向は見られるのではあるまいか。)

 もちろん、こういった感想を抱くのは、たぶんにノスタルジックな感傷もあると思う。が、この屈託のない明るさには、人の心に訴えかける情緒の「何か」が決定的に欠けている。これはたぶん日本中を覆う共通の空気なのではないだろうか?どこへ行っても、何を見ても、大方は均質化された街の顔つき。

 抗菌処理されたような山下公園や「みなとみらい」あたりの光景の中で、黒ペンキで塗られた氷川丸の無骨な船体、ここだけには場所にとって大事な要素のひとつである「時の痕跡」が、わずかに残されている。

 絵は明るいのに、文章は気難しくなってしまった。。。

2009年3月18日・横浜 山下公園
F6(40×31cm)コットマン(中目)
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コメント 14

crest

春ですね。黄砂は嫌だが春霞はいい。淡い色彩の中にいつも力がありますね。今回の船舶にもそれを感じます。
by crest (2009-03-21 09:20) 

アキラ

絵を描く方の感性なんだろう・・・と思って興味深く読ませて戴きました。
横浜に来て(今は逗子ですが)40年以上経っています。
徐々に変わるので仰るように変わったとも思っていなかったのですが、改めて考えてみると、「そ~だな~!」と・・・
私なりに気になっているのは、最近「横浜の匂い」がしなくなったこと。
「感覚」を匂いと表現しますが、そうではな「物理的」な(鼻で感じる)匂いが。。。
by アキラ (2009-03-21 10:20) 

よしあき・ギャラリー

何かのどかで、春の気配です。
by よしあき・ギャラリー (2009-03-21 11:36) 

HEIJI

そういえば氷川丸は以前と変わりないのに、周りはずいぶん変わりましたねー。
横浜によく遊びに行くようになったのは80年代なんですけど、
それでもけっこう変化を感じます。(四半世紀経ってるし)
なんだか横浜、行ってみたくなりました。
by HEIJI (2009-03-21 20:12) 

akipon

僕の父親も、山下公園は昔は汚い公園だったと言っていました。
ゴミばかり目立つ場所だったと。
今は小奇麗で、家族のお散歩に良い場所になりました。
昔を知る人には味気の無い場所になってしまったんでしょうか。
均質化している、というのは同感です。
by akipon (2009-03-21 22:40) 

こぎん

子どもの頃に観た氷川丸と同じです~!
「均質化された街の顔」・・・どこへ行っても同じ大型店とチェーン店・・・
とっても残念に思いますし、
ひと昔前は、街って・・・暗い、ヤバイ、子どもが行ってはいけないとこが必ずあって、
そこから何かを感じ取って育つ部分があったなぁ~って思います。
by こぎん (2009-03-22 08:24) 

ハイマン

「時の痕跡」確かに感じます!
by ハイマン (2009-03-22 09:16) 

井上酒店

とても素敵な絵ですね。僕は好きですよ。
by 井上酒店 (2009-03-22 18:57) 

はじ坊

以前、東京FMビル側から、皇居の半蔵門を見たとき、この景色は江戸時代から変わっていないのだろうなあと思った事があります。でも、反対側から見た光景は、恐ろしいほどに変わっているのでしょう。
今の町並みは、再開発されて、どこもかしこもオシャレにこざっぱりとしています。でも、e-g-gさんのおっしゃるとおり、均質化されてしまい、面白みに欠けてしまっているように感じます。
by はじ坊 (2009-03-22 22:43) 

e-g-g

◎crestさん
春霞、いい響きですね。
今回の色は、かなり明るめにしてます。
船体の黒いペンキは実に黒々しく、
それをそのまま描くと、とんでもなく重くなる?という感じです。

◎アキラさん
この界隈に感じる違和感は、ずいぶんと前から持ってました。
なにしろ、絵を描き始めてからまだ五ヶ月ですから
「絵を描く方、、、」というのは、ちょっと。

横浜の匂い、私もなんとなくわかります。
かつては整備の行き届かない川も多かったですからね、
元町の脇の中村川なども、ずいぶんと匂っていたような、、、

◎よしあき・ギャラリー さん
そうですね、黒い船でありながらも、
全体としては、ほんのり明るく、
とにかく重くならないように気を使いました。

◎HEIJIさん
横浜、いくたびにきれいになってますね~
明るくきれいになって、何が悪い?と言われそうですけど、
なにかこうニュアンスが消えていくような感じがします。

◎akiponさん
そうですか、父上様も横浜ですか。
戦後の復興も、たぶん東京よりはだいぶ遅れたと思います。
とにかく横浜は雑然とした街でした。
まぁ、いまどきそんなこと言うのはオジサンだけですけどね。

◎こぎんさん
>ひと昔前は、街って・・・暗い、ヤバイ、
そうなんですよ、それなんですよ!
これが無いと街に奥行きが出ない、、、
そういった負の部分をきれいサッパリ排除して、
街はみな同じ顔つきになる、ということでしょうか。
これは、街中に限らず、郊外のベッドタウンなんかも
同じことですね、、、

◎ハイマンさん
氷川丸には暗く思い記憶のほうが多いと思いますけれど、
それをこうやってきちんと保存してゆくのは、
大事なことと思いますね。

◎井上酒店さん
ありがとうございます。
構図が、いまひとつなんですけどね、
次は、もっと良くなるように描きます。

◎はじ坊さん
反対側というのは、あの深い杜の中からの、ということですね?
これは面白い視点ですね~
チャンスは巡ってきそうにありませんが、
想像するだけでも楽しいですね。

オシャレにこざっぱりすることは、悪いことではないですよね。
これは正論なので、それに対して均質化を避けるアイデアを出す、
これはなかなか厄介な課題ですね~

by e-g-g (2009-03-23 20:28) 

masa

公園、確かに綺麗になった気が。。
でもハマトラスタイルのお姉さまに憧れたmasaとしては
元町の「キタムラ」や「ミハマ」に行くと
まだまだ老舗横浜が残っていて好きだなぁ。。
ガツガツ商売やっている感じが無い空気感
横浜の良いところです^^
老舗は残って欲しいなぁ。。
by masa (2009-03-24 23:30) 

e-g-g

◎masaさん
ハマトラ、おぉ懐かしい!
たしかに、きちっとした良い店も
ちゃんと残っていますね。
ずっとがんばって欲しいものです。
そういえば、ワタクシ、
四十数年前(たぶん)に買ったフクゾーのマフラーを
今でも使ってますよ。

by e-g-g (2009-03-25 20:22) 

barbie

10代の後半はハマトラでした(^^ 家族旅行で横浜に行ってミハマやフクゾーに行った思い出があります。関東は人が多くて何となくよそよそしくて苦手なんですが、横浜や鎌倉は大好きな場所です。
by barbie (2009-03-25 23:32) 

e-g-g

◎barbieさん
かつての横浜は、なんともいえない微妙な空き地があったり、
要するにあまりきちんとした都市計画の意識が少なかったと思うんですね、
それが、ある種ののんびり感といいますか「ヌケ」に通じていました。
きちっと整備された今の横浜は、
普通の大都会になりつつあるのかもしれません。

by e-g-g (2009-03-26 11:23) 

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