SSブログ

春の浮き富士 [水彩画とスケッチ]

20140403_ukihuji.jpg

3月29日、晴れてはいるが淡い雲が広がる典型的な春の一日。
つい二、三日前まではその姿をくっきりと見せていた富士も、
さすがに春霞には勝てない。

富士は見えなくとも、春霞の海も良いではないか、
と、相模湾を見下ろす展望台に向かう。
海抜90メートルの高台に立つと予想どおりの春景色。
目に映るなにもかもが霞のフィルターに覆われている。

明度は高いけれど彩度の低いその風景をぼんやり眺めていると、
突然、眼前に富士が浮き上がってきた。
もちろんその場に着いた初めから見えていたはずだが、
なぜかしばらくの間を置いてから目に飛び込んできた。

空と海との境も良く分からない、
そんな淡いブルーグレーの大気の真ん中に、
富士山はポンと浮かんでいる。
無風状態と光の角度が作りだす春の幻影のよう。

絵に描いてしまうと、何かが違う。
でも、その印象の一滴をなんとか紙の上に置いてみた。

『春の浮き富士』
F4(32×23.4cm)Drawing Block 水彩とパステル
nice!(90)  コメント(21) 
共通テーマ:アート

初秋の鎌倉文学館 [水彩画とスケッチ]

20140317_bungakukan.jpg


春たけなわというのに秋風景、ところは鎌倉長谷の文学館。
訪れたのは去年11月の半ばころ、
それから四ヶ月後の、この三月に描いた一枚。

鎌倉駅を出た江ノ電、駅の数にして三つ目の長谷駅まで、
その線路にほぼ並行してバス通りが走っている。

友人がその通り沿いにブティックを開いているのだが、
こちら方面にくると、いつも立ち寄るのがならいになっている。
この日も、健康問題や世間話とコーヒーのセットをいただく、
いつもご馳走さま。

そこから歩くこと数分、明るい通りを海側とは反対の住宅街へ入る。
間近には人で溢れる長谷寺や大仏もあるが、
車の影も消え、人通りもちらほらと見える程度の
このあたりの空気はいたって静かだ。

バス通りから二、三分も歩けば住宅街も終わり、
豊かな木々とその背後の山の気配に入り込む。
こういった環境はこの土地ならではのものだろう。
都内から転居した心地よさのひとつを実感する一瞬だ。

住宅街を抜け緩やかな上り坂を奥へ進む。
数メートル進むごとにどんどん深くなる(ような気のする)
木々の密度を味わいながら歩けば、
直に文学館の入口に着く。

この文学館、もとは旧前田侯爵家の別邸だったが
鎌倉市が1985年以来、文学館として使っている。
そういえば目黒に住んでいたときも、
駒場の旧前田侯爵邸は良く通い、絵も何点か描いた。
建物の立派さは本宅のほうが勝っていると思うが、
この鎌倉の別邸のロケーションは格別だ。
南に開けた先に見えるのは由比ガ浜越しの相模湾、
そして明るく広い庭園やバラ園、
にわか鎌倉文学愛好者になるも良し、
日差しを浴びながら庭の趣に身を置くのも良し、なのだ。

今日あたりも、きっと絶好の空気に包まれているだろうなぁ、
と、思いつつ。

『初秋の鎌倉文学館』
F6(41×32.5cm)ホワイトワトソン・水彩

nice!(103)  コメント(18) 
共通テーマ:アート

桜、2014年春。その1 [水彩画とスケッチ]

20140416_sakuryama.jpg

去年は満開のタイミングと諸事情の折り合いがつかず、
それと描く気力もなかなか湧かなかった桜。
もちろん、この気力問題のほうが重要なファクターなのだが、
そんな一年前を思い出しながら今年の桜、まずは一枚目。

ところは、逗子市と葉山町の境にある丘陵地、
その住宅街の中にある桜山中央公園。

この公園、地図上で見ると南北が100メートルと少しなのに、
その両端の高低差が50メートル近くもある。
かなりの急傾斜地にある公園なのだ。
敷地の中央には優に200段を超える階段があり、
それが園内を上下するの唯一の“路”となる。
まぁ、足腰の弱った方やベビーカーを押しながらでは、
花見もままならないわけで、
その点では誰からも愛される公園とは言い難いかもしれない。

それはともかくとして、
その階段の一段ごとに変わる花景色には目を奪われる。
二、三歩降りて、あっ、一段戻ったほうが美しい、
いやもう少し下がったほうが、、、
そんなことを繰り返しながら目に映るのは、
動きを止めない光の粒子と、
まだ濃くなりきらない影が生み出す春の舞台。
当然のことではあるが、
ひと月前に比べ、空気の密度も一段と濃い。

園の比較的に低いところに明るく開けた広場がある。
美味しそうにお弁当タイムを楽しむ人たちを横目に、
そこからの眺めを描いてみる。
いつかは吉野の山の千本桜をこの目で見たいもの、
そんな突然の妄想が頭をよぎりながら。

桜を桜らしく描くのではなく、
満開の桜から受けた印象を描けばよい、
とは思うものの、やはり難しい。

さて、二枚目にとりかかろうか、な。

『桜、2014年春』
F6(40×31cm)ウォーターフォード・ホワイト 水彩

nice!(108)  コメント(31) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。