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桜、2014年春。その2 海辺の大島桜 [水彩画とスケッチ]

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大島桜は海風に強い。
少し調べてみたら、そんな記載があった。

相模湾を見下ろすこの高台、
嵐が来れば塩をたっぷりと含んだ海からの風が
いやというほど吹きつけるはずだ。
そんな荒れた天気の日に訪れたこともないので、
実際のその姿は知る由もないが、
ともかく風に勝たなければ、この花も咲かないのだ。

四月の上旬、穏やかに晴れ上がった春の昼下がり、
その高台にある公園に向かう。

散り始めた染井吉野は、
それでもまだまだ色気を振りまいている。
人も空気も、その「気」に絡め取られてしまいそう。

ところで、
歌舞伎十八番のひとつ『助六縁江戸桜』の幕開け、
舞台が明るくなった瞬間に、桜の花が一斉に目に飛び込んでくる。
その効果は見事なもので、
明るさと艶やかさは、歌舞伎座の席に座っていても、
いまここは現代の東京なのか? 
と、不思議な感覚にとらわれるほどだ。
助六の桜が染井吉野かどうかは分からない。
でもしかし、主役は私よ!と微笑みながらつぶやくその咲きっぷり、
それがいちばん似合うのは染井吉野という気がする。

その染井吉野を横目に斜面に咲く大島桜を眺める。
遠目にはほんのり緑がかって見えるのは、
花と葉が一緒に開いてしまうから。
この桜になんとなく清潔で爽やかな印象を抱いてしまうのは、
その色合いのせいだろう、と思う。

逗子湾とその先の葉山の海は、春の日差しを受けて眠そう。
いや、海を眺めている自分が眠いだけなのかもしれない。
少し遠くには、海辺の山にポツポツと山の桜、
ほんのりとした色合いの連なりが目にとても心地良い。

天候、花の咲き具合、そして日常の諸々、
花見というのはほんとうにタイミングがすべてと思う。
風に吹き飛ばされることもなく、しっかりと花開いた桜。
この大島桜に咲く花を見られるのも、また一年後。

『海辺の大島桜』
F6(410×32.5cm)ホワイトワトソン・水彩

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