シュミットの四季、あるいは田園の雷。 [聴く・クラシック音楽]
“停滞する前線に向かって南の湿った空気が、、、”この天気予報のアナウンスを、もう何日聞いているだろう?
今日も雷雨が来るのか?と空を見上げながら、ヴィヴァルディの「四季」から「夏」を聴く。
CDはベンジャミン・シュミット(Vn、指揮)とカメラータ・ザルツブルクの2001年の録音。実は「四季」のLP、CDはさほど持っていない。イ・ムジチ以外に誰の演奏があったかな?たしか四種類くらいはあったはずだけど、、、
そんな事情はともかくとして、ヴィヴァルディの四季を聴くたびに、季節の感じ方も大陸が違えば当然違ってくるのだ、というなんとも当然のことに思いが至る。
アジア・モンスーン型の過酷な夏に慣れた我々の耳には、ヴィヴァルディの夏は、ずいぶんと優しいものだ。夏というのは、こんなものじゃない!と、つい言いたくなるけれど、それがヨーロッパの夏なのだろう。
シュミットの「夏」はモダンである。メロディの叙情性を追い求めるようなことはあまりしない。だから、もう少し粘った方が夏の気だるさとか粘り気が出るのに、と思うところもある。ともかく、明快なアクセントを付けながら曲の形をくっきりと浮かび上がらせる。途中、これはクラシック?と思うほど、ノリの良い拍を刻んだりする。それは、一瞬ロックを聴いているような錯覚をもたらすほどだ。
もっとも、これは「夏」だからこそのスタイル。たとえば「春」を聴いてみると、音楽の流れやデリケートな陰影の表現に精力を向けたアンサンブルの響きが聴こえる。それは、押しつけがましさのない気持ちの落ち着く「春」だ。この「夏」が、その「春」との対比を意識した演奏になっているのは当然のことであろう。
ついでに言うと、シュミットの「春」は抑えた春である。浮き浮きとした華やいだ春の印象を期待すると肩すかしを食うかもしれない。文字通りの春爛漫なら、イ・ムジチあるいは典型的美音ヴァイオリニストの演奏の方が勝っていると思う。
シュミットの四季は、かつて一世を風靡したイ・ムジチの流れるような「四季」とは、まったく別種の音楽。このベストセラーになったイ・ムジチの四季は1958年の録音だから、それから50年が経っている。この半世紀のあいだに演奏のスタイルも、もちろん聴き手の好みや感覚だってがらっと変わる。いや、変わらない方がおかしい。シュミットの四季は、その変わりようの、ひとつの典型なのかもしれない。
そんなことを考えていたら、他のヴァイオリニストの四季も、ちょっと聴きたくなったりもするが、さて、このヴィヴァルディの四季という音楽、なぜか気を入れて聴く機会の少ない音楽でもある。
* * *
この数日、雷がよく鳴る。あちらこちらにも落ちて電車を止めたりもしている。その実害を伴う落雷とは違って、イメージとしての雷といえば、やっぱりベートーヴェンの「田園」。ゲルマンの地に落ちる雷と、日本のそれが同じようなものなのかどうか?そのあたりは不明だけど、このシンフォニーの第4楽章の雷の描写はやはり見事である。
シュミットの四季を聴いたあとで、さて田園も、と思ったけれど、すでに頭の中にその第4楽章は鳴っている。今日は、そのイメージだけにしておこう。誰のCDを引っぱり出すか?考えるのも面倒くさいし。
それにしても「田園」で鳴る雷は、数分後には晴れ間もさして、清々しい情景が約束されている。この数日の停滞前線豪雨はその兆しを見せない。
Title :Benjamin Schmid: Vivaldi / Kreisler / Paganini: The Four Seasons / Concerto in one Moment
Rabel:OEHMS CLASSICS
No. :OC 303
http://www.oehmsclassics.de/cd.php?formatid=95
ちなみにドイツでの価格は9.99ユーロ。今日(9月1日)のレートで計算すると1,580円ほど。私は1年前にタワーレコードで590円で買ったのだが。
国内盤:
BMJ JAPAN
BVCO38002
ヴィヴァルディ:協奏曲集四季
クライスラー:1楽章の協奏曲〔ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調より〕
ベンジャミン・シュミット/カメラータ・ザルツブルク
*国内盤の価格は、ほぼユーロの数字に近い。
今日も雷雨が来るのか?と空を見上げながら、ヴィヴァルディの「四季」から「夏」を聴く。
CDはベンジャミン・シュミット(Vn、指揮)とカメラータ・ザルツブルクの2001年の録音。実は「四季」のLP、CDはさほど持っていない。イ・ムジチ以外に誰の演奏があったかな?たしか四種類くらいはあったはずだけど、、、
そんな事情はともかくとして、ヴィヴァルディの四季を聴くたびに、季節の感じ方も大陸が違えば当然違ってくるのだ、というなんとも当然のことに思いが至る。
アジア・モンスーン型の過酷な夏に慣れた我々の耳には、ヴィヴァルディの夏は、ずいぶんと優しいものだ。夏というのは、こんなものじゃない!と、つい言いたくなるけれど、それがヨーロッパの夏なのだろう。
シュミットの「夏」はモダンである。メロディの叙情性を追い求めるようなことはあまりしない。だから、もう少し粘った方が夏の気だるさとか粘り気が出るのに、と思うところもある。ともかく、明快なアクセントを付けながら曲の形をくっきりと浮かび上がらせる。途中、これはクラシック?と思うほど、ノリの良い拍を刻んだりする。それは、一瞬ロックを聴いているような錯覚をもたらすほどだ。
もっとも、これは「夏」だからこそのスタイル。たとえば「春」を聴いてみると、音楽の流れやデリケートな陰影の表現に精力を向けたアンサンブルの響きが聴こえる。それは、押しつけがましさのない気持ちの落ち着く「春」だ。この「夏」が、その「春」との対比を意識した演奏になっているのは当然のことであろう。
ついでに言うと、シュミットの「春」は抑えた春である。浮き浮きとした華やいだ春の印象を期待すると肩すかしを食うかもしれない。文字通りの春爛漫なら、イ・ムジチあるいは典型的美音ヴァイオリニストの演奏の方が勝っていると思う。
シュミットの四季は、かつて一世を風靡したイ・ムジチの流れるような「四季」とは、まったく別種の音楽。このベストセラーになったイ・ムジチの四季は1958年の録音だから、それから50年が経っている。この半世紀のあいだに演奏のスタイルも、もちろん聴き手の好みや感覚だってがらっと変わる。いや、変わらない方がおかしい。シュミットの四季は、その変わりようの、ひとつの典型なのかもしれない。
そんなことを考えていたら、他のヴァイオリニストの四季も、ちょっと聴きたくなったりもするが、さて、このヴィヴァルディの四季という音楽、なぜか気を入れて聴く機会の少ない音楽でもある。
* * *
この数日、雷がよく鳴る。あちらこちらにも落ちて電車を止めたりもしている。その実害を伴う落雷とは違って、イメージとしての雷といえば、やっぱりベートーヴェンの「田園」。ゲルマンの地に落ちる雷と、日本のそれが同じようなものなのかどうか?そのあたりは不明だけど、このシンフォニーの第4楽章の雷の描写はやはり見事である。
シュミットの四季を聴いたあとで、さて田園も、と思ったけれど、すでに頭の中にその第4楽章は鳴っている。今日は、そのイメージだけにしておこう。誰のCDを引っぱり出すか?考えるのも面倒くさいし。
それにしても「田園」で鳴る雷は、数分後には晴れ間もさして、清々しい情景が約束されている。この数日の停滞前線豪雨はその兆しを見せない。
Title :Benjamin Schmid: Vivaldi / Kreisler / Paganini: The Four Seasons / Concerto in one Moment
Rabel:OEHMS CLASSICS
No. :OC 303
http://www.oehmsclassics.de/cd.php?formatid=95
ちなみにドイツでの価格は9.99ユーロ。今日(9月1日)のレートで計算すると1,580円ほど。私は1年前にタワーレコードで590円で買ったのだが。
国内盤:
BMJ JAPAN
BVCO38002
ヴィヴァルディ:協奏曲集四季
クライスラー:1楽章の協奏曲〔ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調より〕
ベンジャミン・シュミット/カメラータ・ザルツブルク
*国内盤の価格は、ほぼユーロの数字に近い。
2008-08-31 22:54
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コメント(9)
ヴィヴァルディの四季は、とっても有名な曲で、学校でも一回は鑑賞する曲ですが、たしかに、聴く機会は少ないような気がします。
春は、給食の時間に流れていたかな。
夏ってどんな曲だったかしら・・
時代ともに演奏も変わってくるのですか。
聞き比べてみるのも面白いですね。
外国に比べると日本のCDはすごく高いとか。
590円で買ったなんて信じられません。
価格の設定は、いったいどういう仕組みになっているのでしょか。
by mamire (2008-09-01 17:40)
◎mamireさん
「春」を給食の時間に流す学校、多いようですね。
我が娘も、小学校の六年間、毎日聴いていたそうです。
CDの値段、国内盤の新譜はちょっと高いですね。
クラシックの場合は、安い輸入盤があふれてますkら、
なかなか手を出しにくいですね。
是非聴いてみたい日本人演奏家のものなど、
ごくたまに買う程度です。
それもほとんどの場合、後追いで輸入盤が入ってきますので、
よほどのことがないと、、、
by e-g-g (2008-09-02 19:48)
雷はベートーヴェンの田園ですね
あの雷は奏者にも難しいようですね。。
なので余計に印象に残ってるのかも?
聴いている側にも緊張が走ります
早く天気が安定してほしいです。
でないと安心してチャリに乗れませーん(>_<)
by masa (2008-09-02 21:24)
ヴィヴァルディの「四季」の「夏」まったく浮かばないです。(^^;
また残暑が厳しくなって、ちょっと前の涼しい時期は何だったのかなぁ〜。
あの時はもう夏は終わったと思いました。(でも、本気ではなかったけど。笑)
by berry (2008-09-03 09:44)
◎masaさん
演奏者にも難しい、、、そうでしょうね~
聴いているだけで、けっこう緊張しますからね。
私はいつも、ティンパニ奏者がタイヘンだろうな、と思ってます。
自転車日和、もうすぐですね。
◎berryさん
9月になって、いよいよ本格的な夏です。。。
アッツイですね~
「四季」は、夏も、それから秋も冬もいいですよ。
私は春以外を聴くほうが多いかもしれません。
by e-g-g (2008-09-03 15:51)
クラシック音痴なんで・・・
子どもの頃に観たディズニーの「ファンタジア」以降、な~んも成長していないのです。
あの映画で雷のシーンがありました・・・
「田園」だったかな? 「禿山の一夜」だったかな? なんて思い出していますが・・・どっちも違うかも。
雷がなると・・・猫にほらほら・・・お臍取られちゃうよ~~って言っていました。
猫のへそを探すのは難しいです^^;
by こぎん (2008-09-04 08:43)
◎こぎんさん
ファンタジアはテレビで一度見たくらいですが、
「田園」も「禿山の一夜」も、ありましたね、
他には「くるみ割り人形」とか、「春の祭典」とかも、、、
ともかく、クラシックはもの凄~く幅が広いですね、
いろんな聴き方があって楽しいです。
うん?ネコのヘソ???
そういえば探したこと無いですね~
さて、どの子から探そう、、、
by e-g-g (2008-09-05 11:33)
◎xml_xslさん
◎カフェオランジュさん
◎響さん
◎Nicoli♪さん
nice、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-09-05 11:36)
◎井上酒店さん
◎dalandさん
ナイス、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-09-22 07:04)