色覚のシミュレーション [日々のデザイン]
今回も色覚の話の続き。
色覚とひとくちに言っても、いくつかのタイプがあることは前回に書いた。
・C型(一般色覚)
・P型(色弱全体の約25%)
・D型(色弱全体の約75%)
・T型(色弱全体の約0.02%)
この4つに分かれるが、このうちP型とD型の場合は赤と緑がほぼ同じ色に見える。
と言われても、さて実際にどう見えるのか、一般色覚の目からはなかなか想像できない。
デザインをする際も気をつけようとは思うものの、いつも色覚のフィルターを意識するのは容易ではない。ところが、いまはこの色覚の違いを簡単にシミュレートできる便利なソフトがある。今回は、東洋インキ製造の「UDing Simulator」というソフトを使って試してみた。
上のサンプルは前回の記事の「YAMABUKI」のオリジナル(左)とP型にシミュレートした画像(右)。黄はやや濃くなっているが色相の変化は少ない。それに対して緑色系統のマスは見事にオレンジあるいは茶に変わってしまう。各色の明度差はほぼ保たれているとはいえ、色合いのコントラストをつける意味合いもあった緑が黄からオレンジの同系色内に取り込まれている。
春気分の山吹が一気に秋の気配になった、と呑気にいえる場合は良いが「何か」を伝えようとするには、やはりまずい。
つぎは、駐輪場の清算機の表示。一般色覚のC型(左)では良く「色分け」されている確認、訂正、領収書のボタンがD型の色覚(右)では見事に一緒になる。もちろん一般色覚でも「赤が訂正・オレンジが領収書」という社会コードが成立しているわけではない。だから文字表示はもちろん必要だし、色覚の異なる人でも文字の助けでなんとかはなる。そうなると、こんどは「より読みやすい書体や大きさ、色」といった課題が浮かんでくる。
最後は、もう20年以上も昔にデザインしたジャムの瓶のラベル。これをD型にシミュレート(右)。
ストロベリージャムの苺の赤味がみごとに抜け落ちて褐色になる。色覚の違う人にとって、このストロベリージャムの苺の赤が変わってしまうことは、デザインした当時から分かってはいた。が、やはり苺は苺らしく鮮やかな赤を映し出して欲しいのが心情。写真の撮影も印刷の現場でも、その赤を如何に美しく表現するか、ずいぶんと知力も体力も使ったし。
色は美味しさ感を表す上でとても大事なものである。ただ色覚の違いという観点から見ると、その色の美味しさ感の基準も一様ではないと気づかされる。
色の持つ記号やシグナルとしての情報の確実性と、色によって引き出されるヒトの感覚的認知の違い、この両面に配慮しなければならない。さっ、もっと勉強しよう。
2008-05-01 20:31
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コメント(15)
色のことはよく分かりませんが(ごめんなさい<(_ _)>)、プッシュボタンの数字が踊っているのが素敵です。多分恣意的なものではないでしょうが、ほんのちょっとしたアンバランスが”不快”から”愉快”に変わっている典型のような気がしました。
by micyu (2008-05-01 23:25)
自分が本当にどの色をどのように感じているのか、分からなくなってきました。
否応なしに飛び込む色彩を鬱陶しく感じることもありますが、それは贅沢なのかもしれません。
by mamire (2008-05-01 23:49)
色使い、本当に重要ですね。今日仕事でオフィス家具の
ショールームに寄ったのですが、最新のオフィスって凄いです。
僕の職場とは大違い(^^;)。机も単調なグレーから、木目調に
変わるだけで印象が全く違います。
ジャムのデザイン、20年前のものとは思えないです。良いものは
色褪せないですね^^。
by akipon (2008-05-02 20:20)
イチゴはイチゴらしい赤
私もその方がいいと思うなぁ
by ハイマン (2008-05-03 08:19)
自分がどう見えているか・・・他人と比べようがないんで・・・
自分が見えている色が本物の色なのか、分からないですね~~。
色覚に障がいのある人って・・・どれ位居るんでしょうね。
屋外の印刷物は最初に赤が飛んでしまうんで・・・段々オレンジに。。。
最後に黄色が残ってセピアっぽくなりますね。。。
by こぎん (2008-05-03 08:35)
同じ色でも見ている人によって違うということ、普段は意識していないですね。道路標識とかはそのあたりが考えられているのかなあ。
でも、商品のパッケージやラベル、とくに食品は苦労が多いのでしょうね。
色覚だけでなく、自分が見て感じる色(ものごと)は、他の人も同じように感じるものだ・・・とついつい思ってしまいます。
by HEIJI☆ (2008-05-03 11:41)
◎micyuさん
って、誰?と思ったら、、、
名前、変えられたのですか。
以前のも、良かったですけど。
そうなんですよね、きっとシールを貼るときに
1から3くらいまではけっこう慎重にやったのに、
その後は、、、という感じですね。
ほのぼのしていて、親しみが持てます。
他に何台かあった清算機も同じような感じでした。
でも、シールを貼ったということは、
その前は、いったいどうなってたんでしょうね。
◎mamireさん
色の感じ方、おおよそは見えているんでしょうね。
でも、一般色覚者でも微妙な違いはあると思います。
それと、歳を重ねていくとだんだんと黄ばんで見えたり、
もっと進むと色の差が分かりづらくなったり、いろいろありますね~
◎akiponさん
今頃は九州?
この30年くらいのあいだに、
オフィスや公共の場の色使いは、ずいぶんと豊かになりましたね。
いま生まれる子供たちの色感覚は、
確実に私の世代とは違ってくると思います。
ジャムのほうは、そうですね、あまり悩まずにデザインしたものです。
◎ハイマンさん
イチゴはイチゴらしい色で。
そのとおりですね、ただ、その色が感じられない見え方もあるのですね。
色でコミュニケーションする時は、いちおう頭に入れておきたいものです。
◎こぎんさん
日本には一般色覚以外のP・D・T型の人が320万人ほどいるといわれています。
男性では20人に一人、女性では500人に一人の割合ということです。
インクが退色した古びたポスターや看板、
あれはあれでひとつの情緒ですね。
あっ、昭和の記憶などと言ってみたり。
◎HEIJI☆さん
標識類はかなり細かい決まりもあります。
でも、万全ではないらしいですよ。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、
ともかく人の五感は、みんな少しずつ違うのだ、
そう思っていたほうが良いかもしれません。
by e-g-g (2008-05-03 20:17)
◎カフェオランジュさん
◎一真さん
◎akiponさん
nice、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-05-03 20:19)
自分が赤って思ってる色は他の人が見たらどんな風に見えてるのだろう?
好きな色がみんな違うように違って見えるんだと思ってます。
by 響 (2008-05-07 02:55)
◎響さん
科学的な色の見え方については、おおかた同定できると思います。
ただ実感的には、たとえば赤とひと口にいっても、
朱っぽい、ローズっぽい、と幅が広いですよね。
このあたり、個々の好き嫌いもありますし、厄介といえば厄介、
面白いといえば面白いと思います。
by e-g-g (2008-05-07 11:32)
色弱の人がどのように見えるか、
のシミュレーションですか。
言われてみれば、非常に重要ですよね。
交通信号なんかも、右か左か、で赤信号
を判断している状況なのでしょうけど、
たとえば、赤と「STOP」を交互に点灯させる
といった方法をとれば、よりわかりやすく
なるかもしれませんね。現在のLED信号灯
でしたら、簡単にできますから。
by tak (2008-05-07 23:46)
◎takさん
左から「青・黄・赤」の交通信号ですが
地域によってはこれが縦に並ぶんですよね。
それはともかく「STOP」と言葉の表示も良いかもしれませんね。
STOPだけを信号機の左右いっぱいくらいに大きく表示するとか、
そんなことも考えられますね。
by e-g-g (2008-05-08 14:24)
◎Takemovieさん
◎きぃ*さん
◎ラナさん
nice、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-05-08 14:28)
勉強になります!
by sanjinsai (2008-06-24 20:43)
◎sanjinsaiさん
ワタシもまだまだ勉強中ですよ、、、
でも、色は楽しくも面白い世界です。
by e-g-g (2008-06-27 23:28)