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ココロニ ヒビク ハルノサイテン ハ? [聴く・クラシック音楽]

 季節の移ろいには、いたって敏感である。春の兆しを察知
すればいち早く反応する。だから杉の花粉とも仲が良い(た
んに単純な体質なだけ、ともいえる)。
 もうすぐ春、そうだストラヴィンスキーの『春の祭典』だ
ということでゴソゴソと探したらCDとLPを合わせて五種
類が出てきた。そのなかで、いちばん最近に買ったハイティ
ンク/ベルリンフィルの盤を聴いてみる。

 良質な録音、ずしっと響く重低音は迫力充分。管楽器も歯
切れ良くリズムを刻んでしかも音色が美しい、これも良い。
第一部最後の「大地の踊り」などV12エンジンのメルセデス
が突進してくるような感じ。(なんだか意味不明の喩えでは
あるけれど、いちおうドイツ製ということで)いつもはテレ
ビの音声ばかり鳴らされているタンノイも、久しぶりに喜ぶ
(と、思いこむ)。
 これで、もう少し胸を躍らせる“何か“があれば申し分な
いのだけれど。

 1975年に初めて買った「春の祭典」はショルティ指揮シ
カゴ交響楽団、もちろんLP。このレコード、なんと 32分
足らずの春の祭典が一曲入っているだけだった。高いレコー
ドなんだから、もう一曲くらい入っていてもよいのに、、、
と正直思ったものだ。
 1975 年といえば、ワタシも若かった。それまでに聴いた
春の祭典は F M放送で流れていた、たぶん二・三回だったと
思う。それに、クラシックのレコードも買い始めて間もない
頃、ようするにクラシック音楽の森の入口をウロウロしてい
る状態だった。そんなときに聴いた野性味溢れるというか、
とにかく凄みのあるショルティ盤には度肝を抜かれた。

 もともと複雑な変拍子と不協和音が満載の曲である。その
地底から沸き上がるような春の力にむんずと抑えられた。と
にかくこのレコードを聴いたために、それまで持っていたワ
タシのオンガクのジョーシキは、みんなどこかへ吹っ飛んで
しまった。クラシックオンガクというのは、想像以上にトン
デモナイ世界だ!と気づいたという次第。
 もちろん、ベートーヴェンもモーツァルトも、中学の音楽
教室にあった肖像画のイメージとはまったく違うのだ!と気
付きはじめた頃。そこに、このショルティの春の祭典はお出
ましになったということ。これは、若き日の衝撃。

 この曲には、そのときの印象が強すぎるのかもしれない。
だから、とくに欠点も傷もないハイティンク盤に文句を付け
ることも無いのである。でも、あのエネルギーが爆発する春
の祭典をもういちど聴いてみたい、とも思うのである。これ
は無理な注文かな?と思いつつ。

 ま、さっさとショルティのLPを引っぱり出せば、それで
済むようなものだけれど、この録音からすでに30年以上の
時が過ぎている。その間には、もっと気持ちを揺さぶられる
春の祭典が、きっとどこかで生まれているにちがいない!と
も思う。
 それに初めのうちは、ロシアの野生の大地のその溢れるリ
ズム(こんな言い方、どこかで読んだ評の受け売りっぽい)、
それだけが耳に付いたけれど、良く聴けば、全曲が美しいメ
ロディに溢れている。その情緒もたっぷりと味わいたい。こ
れは欲深か。

・ショルティ/シカゴ交響楽団
・マゼール/ウィーンフィル(1974年録音)
・コリン・デイヴィス/アムステルダムコンセルトヘボウ管
・ブーレーズ/クリーブランド管(1991年録音)
・ハイティンク/ベルリンフィル(1995年録音)

以上が手元にある「春の祭典」。

筋肉質の野生、春の匂いのなまめかしさ、
バーバリズムと優雅さ、
そんなアンヴィヴァレントな諸々のぶつかり合いを、
たっぷりとスリリングに味合わせてくれる春の祭典、
どこかにあるのだろうか?

ところで、ブーレーズの一回目の録音を持っていない!
実は、これがいちばんのモンダイかもしれない。


ハイティンクのCDは、タワーレコードの限定盤
2枚のCDに春の祭典の他、火の鳥(全曲)、ペトルーシュカ、
プルチネルラ、それとロシア風スケルツォが入っている。


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anan

e-g-gさん、ちょっと華やいでいる文章。いいお酒飲みました?
ストラビンスキーの春の祭典と、全く関係ないコメントで恐縮ですが、桜の木に春を感じています。遠くから見ると、なんとなく蕾が、もう準備できているように思えるのです。それは桜のせいか、桜を取り巻く空気のせいか、分かりません。遠目に、樹木の茶色が、やや桜色のトーンを含んでいるように、私には映ります。ああ、それなのに、まだ宿題が済んでいません。来週からの研修旅行出発前に、少しでも片づけなければ…。こうして3回目の成人式を迎える若者(バカモノ)は、欝病を病むのです。(ウソバッカリ!)
by anan (2008-02-22 22:21) 

HEIJI

「春の祭典」というタイトルがいいですよね。
最初に聴いた時とても印象的でした。子供の時だったので「春」というイメージはわかなかった・・・いや、先生がそう解説してたのかな。
春は意外と騒がしいものだと、後になって思うようになりましたけど。
by HEIJI (2008-02-22 22:22) 

のすけの母

いつもいつも、e-g-gさんのレコード(CD)の多さに感嘆しております。
私は、整理整頓魔のダンナに、「片付けろ」と幾度となく言われ、これ以上CDが増えると、マズイ感じです。
「春の祭典」は……残念ながら持っていません。
by のすけの母 (2008-02-22 23:50) 

kita

たしかに、春のきざしを感じると「ハルサイ」が心に浮かびますね。また、春の
真っ盛り、例えば夜桜を見ていると無性に「ハルサイ」を聴きたくなります。特に
私の家の近くの東宝砧撮影所のライトアップされた桜を見たあとなど。

e-g-gさんのいわれるブーレーズの1回目の録音とは、オルケストル・ナショナ
ルを振ったものですね。残念ながら私も所有しておりません。これは問題ですね。
e-g-gさんに習って、私のライブラリーを見てみると
 ブーレーズ/クリーヴランド管(旧・新盤)
 ムーティ/フィラデルフィア管
 モントゥー/ボストン響
 小澤/ボストン響
 マゼール/ウィーン・フィル
 ティルソン・トーマス/サンフランシスコ響
のようでした。(まだあるかも)
不思議なことにマゼール以外は皆アメリカのオケでした。
どれも面白いですが、おっとりしたモントゥーとマゼールがユニークでした。
「ハルサイ」は変拍子をうまく指揮者がこなせばどれも面白く聴けるように
思います。生だともっと面白い。
これが「ペトルーシュカ」あたりでは指揮者によって出来不出来の差が大きい
と思いますが。
by kita (2008-02-23 09:14) 

木曽のあばら屋

こんにちは。
私はブーレーズの2回目の録音(1969,SONY)が一番好きかなあ。

ベジャールが振付けたバレエ「春の祭典」を、
YouTubeで簡単に見ることができます。
いい時代になったものです。。。
by 木曽のあばら屋 (2008-02-24 10:28) 

e-g-g

◎ananさん
えっ?華やいでますか〜?
桜の蕾もだいぶ膨らんできましたね。
たしかに木そのものの色も、他の樹木とは
ちょっと違うように見えるかもしれません。
ハル デスネ

◎HEIJI☆さん こんにちは
“春は意外と騒がしい”、この感じ、よく分かります。
ワタシは、桜の満開のちょっと前、
花の力が沸点に達した頃ですかね、
この春の祭典のいろんな節が浮かんできます。
ハ〜ルノ〜 ウラ〜ラ〜ノ〜 も良いですけど、
ストラヴィンスキーの春の力感もいいな、と思います。

◎のすけの母さん
いやいや私の集めたものなど大したことありませんよ。
それに、系統立てて集めませんから、かなり偏ったり、
基本アイテムが抜けてることも多々あります。
この春の祭典にブーレーズの一回目と
二回目の盤がないことなど、その最たるものです。

◎kitaさん こんにちは
そうです。オルケストル・ナショナルを振った盤です。
ただ、クリーブランドの旧盤も無いんですよね、
早く買えばよいようなものですけれど、、、

>変拍子をうまく指揮者がこなせばどれも面白く、、、
そうかもしれませんね。
いろんな解釈を呑み込んでしまう強さがこの音楽には
あるのでしょうか?

昨日からの春の嵐、
外出もせずに家に籠もってました。
ならば春の祭典のレコードを聴こう!
ところがプレーヤーが不調、そろそろ寿命のようです。

◎木曽のあばら屋さん こんにちは
1975年に買ったショルティ盤の印象が強すぎました。
それから30年以上、
ずっとその呪縛にとらわれていたようです。
そろそろ縄を解きましょう。

You Tube、凄いものですね〜
Szellのムービーなどをときどき探して見ています。
by e-g-g (2008-02-24 20:10) 

e-g-g

◎一真さん

nice、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-02-24 20:11) 

mamire

こんにちは。
春の祭典と聞くとどうも、バレエのイメージが強いです。
動物も植物も活発に動き出す力強さが欲しいです。
私が持っているのはバーンスタイン指揮のロンドン交響楽団のものです。
聞き比べたことがないので、ショルティを聴いてみたいです。
話はかわりますが、メンテ後e-g-g もレイアウトがこうなってしまいましたか。
直し方が分かったら教えてくださいませ。
by mamire (2008-02-28 16:15) 

e-g-g

◎mamireさん
春の祭典は曲が良くできているんでしょうね、
kitaさんも書かれているように、
あまりハズレは無いかと思います。
バーンスタインのものは聴いたことがありません。
でも、考えて見るとこの曲にぴったりかもしれませんね、
いつものニューヨークフィルじゃないのも、えっ?という感じです。。。

さて、レイアウトのほうですがなんともわけが分かりません。
CSS編集で何とかなれば、ちょっと追求しても、
とも思いますが、とにかく私の場合は
マック+古いOS+古いIEなので、ちょっと望み薄、ですね。
いちおうソネットのほうに質問メールを送ってはありますが、、、
by e-g-g (2008-02-29 19:52) 

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