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ぞうのババールを聴く [聴く・クラシック音楽]

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 絵本の『ぞうのババール』はご存知の方も多いと思う。あ
のほんわかとした絵は気持ちを和ませてくれます。ワタシ自
身はというと、なにかしらヨーロッパ的なるモノの拡張とい
った気配を感じてしまい、100パーセント素直に受け入れら
れないところもありまして、ま、これはワタシが天の邪鬼と
いうことですね。
 それはさておき、そのお話をピアノと語りで綴るプーラン
クの“ぞうのババール”を聴きました。

 dalandさんのブログ「さまよえるオランダ人・・・私」は
ワタシにとっては、ありがたい音楽情報アラーム。そのおか
げでタワーレコードのVintege Collection も見逃さずに済む
のです。ま、あまり頻繁に鳴らされると財布も軽くなります
けどね。
 今回見つけたのは、ジャン・マルク・ルイサダのピアノと
ジャンヌ・モローの共演盤。内容はサティの作品のいくつか
と、プーランクの「ぞうのババール」。

 「ぞうのババール」は原作に沿ってプーランクが曲を付け
たもの。プーランクが自身の子どものために作ったといわれ
る作品です。
 ところで、たまに聞き慣れた単語はあるものの、私にとっ
てフランス語を聞くのは音楽を聴くのと同義、要するに意味
不明ということですね。それが、プーランクのこの作品を聴
いたからといって、ババールのお話の意味がすぐに分かるわ
けではありません。世の中そんなに甘くない。それでも、お
およその筋は知っているし、それにジャケットに載っている
全文対訳を頼りにすれば、ついていけます。これぞ、マルチ
メディアの勝利?(古いなぁ)

 音楽としても、情景描写の巧みさもあって分かりやすく、
親しみの持てるものです。全部で20曲の構成、30分弱の演
奏。実際の絵本やテキストを見ながら聴くも良し、フランス
語が音楽に聞こえてしまう人にはちょっとお洒落なBGMにす
るも良し。

 ジャンヌ・モローの話し方が典型的なフランス人のものか
どうかは分かりません。ここでは、絵本のテキストですから、
少しゆっくり目に言葉のひとつずつをはっきりと語っていま
す。これがたとえば恋愛ものなどだったら、もっと違うニュ
アンスなんだろうな、と思います。
 それと、なにしろ貫禄充分な女優さんですからね、威厳が
あるというか、ちょっと怖いようなところもあったりします
ね。これを実際の幼児が聴いたらどんな風に感じるのか?ふ
と疑問。

 C D の前半はサティの作品集。お馴染みのジムノペティな
ど、ルイサダのテンポは少しゆっくり目です。あのサティ独
特の諧謔的なトーンはあまり感じられず、どちらかといえば
深く沈静するサティです。
 この落ち着いたジムノペティは良いですね。この曲、根強
い人気があるのか、けっこうあちらこちらで耳に入ります。
そんなあれやこれやのジムノペティの中でも、芯のしっかり
通った演奏。私は気に入りました。

 『ぞうのババール』以外の曲にも、ジャンヌ・モローのナ
レーションが入ります。もともとの声が低めということも手
伝って、ある種の決意を感じさせるようなしっかりとした口
調。
 そして、このナレーションが面白い。作曲者自身が楽譜に
書き込んだものですが、いわゆる音楽の表情を指示するもの
ではありません。
たとえば5曲目の「グノシエンヌ第1番」には
  ・・・たいへん つややかに・・・問いかけて・・・
  思考の尖端から・・・自分自身を頼みにして・・・
  一歩一歩・・・舌の上にのせて・・・
といったように。
 これで、どんな音楽が響くと思いますか?いったいサティ
という人は、つくった音楽も文字通りユニークですけどね、
その脳内構造を覗いてみたくなります。

 ジャンヌ・モローのファンにはその声、もちろんルイサダ
のピアニズム、そしてひとつの劇音楽として、いろんな聴き
方が出来るCD、これは大人が耳で読む絵本でしょう。


 Vintage Collection といっても録音は1994 年。なんで、
これがヴィンテージなのか?不思議ですけどね。ともかく、
こんな素敵な録音がたったの1,000円で買えるなんて素晴ら
しい。解説と「ぞうのババール」の対訳だけでもそれ以上の
価値がある、と思います。
*ちなみに「ぞうのババール」は評論社刊、矢川澄子の訳の
 転載です。

■プーランク:ぞうのババール
 サティ:ジムノペティ/グノシエンヌ他
 ジャンヌ・モロー(語り)
 ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ)
 TOWER RECORD Vintage Collection Vol.5 PROA-174
 * 原盤はドイツグラモフォン


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コメント 9

barbie

サティもプーランクも難しいです。
でも象のババールは大好きです。
ぬいぐるみ持ってますよ(笑)
by barbie (2007-12-21 22:53) 

e-g-g

◎barbieさん
サティ、プーランクは難しいというよりも、
それまでの作曲家とは話法の違いがあって、
ちょっと変わった音楽になっている。
それが耳に馴染みにくい要因かもしれません。
でも、心に入ってくるときはス〜ッと来ますよ
by e-g-g (2007-12-23 17:41) 

e-g-g

◎xml_xslさん
nice !、ありがとうございます
by e-g-g (2007-12-23 17:42) 

daland

こんばんは。
ご紹介頂きありがとうございます。
いえいえ私の方がいつも e-g-g さんに啓発されています。
私の場合、こんなCD買っちゃいましたという自慢話だけです。

プーランク聴いたことありません。ちょっと腰が引けてしまいます。
でも e-g-g さんのエントリー拝見しているといつも何故か聴いてみたくなってしまいます。
by daland (2007-12-23 22:11) 

tak

ははあ、プーランク。
しかも、ピアノと語りですか。
............。
ご、ごめんなさい。気の利いたコメント、
出てきません。

レコードのビンテージコレクションって、
お金がかかりそうですね。
自転車と、どっちがかかるのかなあ...。
by tak (2007-12-23 22:43) 

e-g-g

◎HEIJI☆さん

nice をありがとうございます
 
by e-g-g (2007-12-24 19:08) 

e-g-g

◎dalandさん こんばんは
いやいや、詰まるところブログは自慢話です。

プーランクは私も縁遠いですね〜
他に、ほとんど聴いてません。
ただ、このCDはサティもいいですから、
お買い得と思いますよ。

実はマイナルディのバッハを買うつもりだったんですよね、
で、そっちはまだ買ってません。
なんだか気合いがのらなくて、、、次、ですね。

◎takさん
コメント、ありがとうございます

ほほう プーランク(知らないナァ)
で、あの怖〜いジャンヌ・モローの語り???
突然!
旨くもないチャーシューメンでも
800円も900円もする時代!
だったら安いものではないか!
てな具合です。

ビンテージ趣味って無いですから、
その世界の事情はつまびらかではありませんが、
きっと奥の深い、それも底なしの世界が
広がっているんでしょうね〜
 
by e-g-g (2007-12-24 19:18) 

e-g-g

◎お茶屋さん

◎井上酒店さん

お立ち寄り、ありがとうございます。
 
by e-g-g (2007-12-28 19:01) 

e-g-g

◎ハイマンさん
いつもありがとうございます。
by e-g-g (2008-01-06 19:52) 

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