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ティファニーで 昼食 を [見る・観る]

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 展示室に入るとすぐに作品番号1番、128.54 カラットの
イエローダイヤモンドが輝くバード・オン・ア・ロックが目
に飛び込んでくる。本物のはずなのに、本物を観ている実感
が湧かない、不思議な感覚。
 この最初の一撃から始まって、1830 年代から今日までの
ティファニーの代表的なジュエリーが約200点展示されてい
る。日曜日、『世界を魅了したティファニー 1837-2007』
の最終日、場所は東京都庭園美術館。

 さすがに最終日、館内は混んでいた。そもそもが小さいも
のだから、ディスプレイのケースに顔を近づけないと良く見
えない。ひとつの展示物をきちんと見られるのは同時に三人
くらいが限度と思う。
 私が館内に入ったお昼頃、チケット売場はまだ数人待ちだ
ったのに、見終わって美術館を出るころには、長い列ができ
ていた。優に百人は越えていただろう。あの人達は、はたし
てちゃんと見ることができたのだろうか?ともかく、最終日
の展覧会に行くものではない。

 見る人の9割は女性。1800年代後半から現代にかけての
装飾美術の変遷は、、、アールデコの影響というのは、やっ
ぱり大きかったのだ、、、などときわめて理性的かつ現象確
認的に考えるワタシの横で、“あのムーンストーンのブロー
チってワタシ向きよね?でも、ちょっと高そうね”などと、
きわめて正直克つストレートな声が聞こえる。

 どれもこれも、まぁ素晴らしい。一級品の宝石、純度の高
い金属、きわめて高い工作精度、ジャポニズムの影響を色濃
く映し出したものには、その造形化にちょっと首を傾げるも
のもあるけれど、でも、どれもこれもみんな素晴らしい。
 そういった一級の素材と一級の技をコントロールして装飾
品に仕上げるセンスと造形力、それがティファニーが作り上
げてきた伝統なのだと思う。
 1960年代以降は、ポップカジュアル志向や、建築的な造
形のものも多くなる。伝統に胡座をかくのではなく、常に新
しい視点を提案し続ける。そのエネルギーが特級ブランドを
支える。これは、たとえばファッションブランドでも同じで
ある。ディオールやシャネルが生き続けているのと同じよう
に。

 贅を尽くし意匠を凝らしたジュエリーの数々を見ていると
この世の富や栄華の象徴を見事なまでに造形化した証を見る
気がする。これは成功のためのひとつの宗教なのかもしれな
い。

 しかし実にいろいろなモノをつくっている。第二次大戦中
には、軍用機をあしらったたイヤリング、戦車の轍の跡をモ
チーフにしたブレスレット。美を形づくる要素は何処にでも
ある!と云わんばかりだ。
 もちろん今回はジュエリーに的を絞った展示である。食器
などの銀製品や陶器、ガラス器などは無い。そういったモノ
も交えれば、また違った印象を持つかもしれないが、それで
も、そこに流れる基調音は“極めつけの装飾”だろう。

 一方で、アメリカ合衆国の公印から、サッカーのナビスコ
カップの優勝トロフィーまで。実に幅広い領域をカヴァーす
るブランドでもある。そのアイデアを開花させるフィールド
を探す目には感心せざるを得ない。

 出かける間際に「ティファニーのおみやげね!」といわれ
た。
 しかし、「ニューヨークのティファニーで、あれやこれや
物を買う人ではちょっと困ります」、これは我が家の家訓で
もあるのですよ、、、


バード・オン・ア・ロック:この記事の一枚目の写真にある
カタログ表紙のジュエリー。
 The Tiffany Diamond " Bird on a Rock "
 ジーン・シュランバーゼーのデザイン画をもとに1995年
 制作
 5.5×4.2×1.6cm


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mamire

e-g-g さん、こんばんは。
東京都庭園美術館は、ひっそりとした佇まいだけでも見る価値がありますね。
特に、今頃は紅葉も黄葉もきれいで、庭園を散策するだけでも気持ちがいいでしょう。
我が家は
「ニューヨークのティファニーで、あれやこれや
物を買う人ではちょっと困ります」どころか、それらの類は皆無ですね。
ティファニーといったら、オードリーしか思い浮かびません。
ティファニーは、芸術?
あるいは、成功者のステータス?
望むものがあるから続いたのか、望むがために努力するのか。
ブランドにはまったく縁がないので、出る所に出るとちょっと恥ずかしい思いもします。
by mamire (2007-12-17 18:34) 

e-g-g

◎mamireさん こんにちは
>望むものがあるから続いたのか、
>望むがために努力するのか。

その両方でしょうね〜
壮大な無駄?の上に文化は生まれる。
この一面の真理を表していると思います。
ただ、それが社会のすべてというワケでも無し。

展示品を見ながら、
アメリカというのは200年以上ずっとバブルなのだなぁ、
と、そんな思いにもとらわれました。

紅葉は、ちょっと過ぎていました。
一週間早く行くべきでした。
by e-g-g (2007-12-18 19:11) 

e-g-g

◎takagakiさん

◎ハイマンさん

◎きぃ*さん

お立ち寄り、ありがとうございます。
 
by e-g-g (2007-12-18 19:13) 

tak

バード・オン・ア・ロック。
128.54 カラットのイエローダイヤモンド。

それってナンボ?

どうも金額に換算されないと、価値がよくわからん
無粋なワタシです。
(^^;A
by tak (2007-12-18 23:00) 

HEIJI

イエローダイヤモンドっていいですね。全く知りませんでした。
こっち方面はかなり暗いです。
でも「オープンハート」とか知ってるなあ。
ジュエリーとしてでなくて工芸品として見たら見方も変ってくるかもしれませんね。

自分も混んでる展覧会は苦手です。
並んで順番に見ることができなくて、列の後ろからのそきみて、結局何を見たのかわからんことが何度か・・・。
by HEIJI (2007-12-18 23:05) 

ティファニーのステーショナリー、あとラッピングしてくれるときの
箱やりぼんが好きです。 とはいえボールペンを持っているだけですけど^^
by (2007-12-18 23:30) 

e-g-g

◎takさん
ワタシもですね〜、無粋なのは承知で
一点ごとにプライスが付いていたら、とつい思いましたよ。
それにしても庭園美術館は旧朝香宮邸とはいえ
ちょっとしっかり出来た普通の建物。
他の美術館に比べればかなりヤワです。
そこに200点もの貴重品を集めてるんですよね、、、
警備のことを考えるとよくあそこでやったな、
警備担当者の苦労は?
と変なところに感心しました。

◎HEIJI☆さん
ダイヤモンドもいろんなカラーがありますね。
今回の、このファンシー・イエロー・ダイヤモンド、
こんなに大きいのを見たのはもちろん初めて、
で、たぶん最後でしょう。
オープンハートは、馴染みがあるということを
除いても、やっぱり美しいものでしたね。

混んだ展覧会、
それを想像するだけで腰が重くなります。
 
by e-g-g (2007-12-18 23:40) 

ティファニーは、見るところ。
ええ、決してほしがったりはしませんとも。
手が届くシルバーは、あまり好きではないし。。。
輝きはそれはそれは素晴らしい! と思ったら・・・
ライティングがこれまた素晴らしいんです。(NYじゃないけど)
ここの展示ではいかがでしたか?

イエローダイアモンドより、こちらの東京都庭園美術館。。。
素晴らしいですね。
皇室縁の館や庭園もこうして公開されていると・・・ちょっと行きたくなります。
by (2007-12-19 10:55) 

e-g-g

◎haruさん
あのティファニーブルーですね。
この展覧会のカタログの見返しもこの色でした。
そもそもは、
創立当初から信頼のシンボルとして使われているそうです。
たしか、リボンの結び方も決め事があるんですよね。

“このティファニーブルーの印刷には、ほんとに泣かされる”と
あるとき印刷会社の人が嘆いていました。
とにかくブランドを守るのはタイヘンです。

◎こぎんさん
当然ですが、
ライティングにはそうとうな気遣いが見られました。
基本的に正面からのライティングなので、
透過光の宝石の美しさは、ちょっと難しそうでしたが、
考えてみれば身につけたときも透過光は無理。
 そんなところから、
 6本の爪でダイヤを浮かせるティファニー・セッティングも
 生まれたのですよね。

ところで、いったいどんな光源なのか?と
展示ケースの斜め後ろからしげしげと見ていましたら、
周りの観客に不審な目で見られました。

庭園の方は紅葉の終わったあとという季節柄も
あるとは思いますが、ちょっと寂しかったですね。
とくに西洋庭園の方は、もう少し手を入れたら?
と思いました。
日本庭園と合わせて、
あそこは“手を入れる庭園”の典型ですから。
ふと、となりの自然教育園の野趣溢れる趣に
気が惹かれました。
 
by e-g-g (2007-12-19 13:51) 

いろは

こんばんは^^
ティファニーは私もオードリーの朝食しか知りませんので・・・(^_^;)
ダイアモンドは綺麗で好きですが、こちらのお店には入ったこともありません。
でもこうした展覧会は目の保養にもなりますね♪
混んでる所は苦手ですが・・・(-_-;)
by いろは (2007-12-20 17:27) 

e-g-g

◎いろはさん こんばんは
目の保養にはなりました(と思いましょう)
でも、小さなジュエリーに強いライトが当たって、
目はけっこうしばしば、ちょっと疲れました。

実は、お洒落に美術館のカフェでお昼でも、
と思っていたのですが、やはり混雑。
少し歩いて、うどん屋さんで昼食、でした。
 
by e-g-g (2007-12-20 19:43) 

東雲

e-g-gさん こんにちは。

>「ニューヨークのティファニーで、あれやこれや
物を買う人ではちょっと困ります」

昔 皇太子殿下が 理想の結婚相手について記者から尋ねられた時に
同じ様な事を言っていた記憶があります。

私はこれまで ジュエリーには 殆どと言っていいほど興味がありませんでした、が 年を重ねたこの頃は 「多くは要らないけれど 良いもの、気に入ったもの一つくらいは あってもいいかなぁ・・・」なんて思う様になりました。

美術館のお洒落なカフェよりも 私もうどん屋さんの方がいいなっ!^^
by 東雲 (2007-12-21 16:49) 

e-g-g

◎東雲さん
ハイ、ご指摘の通り、
さるお方の言葉をそのまま頂戴したものです。
1985年、そろそろバブル景気が始まるころですね。

石の大きさとか豪華さではなくて、
つける人を素直に美しく高めるジュエリーであれば、
それはやはり良いジュエリーと思います。
気に入ったジュエリーを身につけて、
晴れやかな気分になる、
これは女性の特権でもありますから、是非。
by e-g-g (2007-12-23 17:31) 

e-g-g

◎デザイン屋さん

◎barbieさん

nice ! 、ありがとうございます。
by e-g-g (2007-12-23 17:33) 

e-g-g

◎井上酒店さん

nice ! ありがとうございます。
 
by e-g-g (2007-12-28 19:02) 

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