SSブログ

ラムゼイ・ルイス三重奏団。 [あの時代の話し]

.

「ジ・イン・クラウド」、演奏はラムゼイ・ルイス三重奏団。
高校3年だったか予備校生のころ、
西暦でいえば1966年か67年頃に買ったレコードです。
それにしても「三重奏団」とは、、、
たとえば、ビル・エヴァンス三重奏団とか
オスカー・ピーターソン三重奏団とか、
そんなふうに呼ばれていたのだろうか、記憶にない。

この曲を始めて聴いたのは、
ラジオ関東*で毎晩(だったと思う)11時頃から
“こんばんは こんばんは こんばんは”という
アナウンスで始まる番組。(だったと思う)

だったと思う、と繰り返すのは、
要するにこの前後の数年間の記憶は
ありとあらゆるものが放り込まれて、
プロセッサーにかけられたようなもの。
だから、ま、前後の入れ替わりや取り違いは、
ままある!ということ。

ちなみにこの番組のDJは、たしか「おおむらまりこ」さん。
落ち着いているのに艶のある声の、ずいぶんと大人っぽい女性でした。
* ラジオ関東は現在のアール・エフ・ラジオ日本

勉強机の上のAMラジオから流れてくるラムゼイ・ルイス・トリオも
「ジ・イン・クラウド」(The "In" Crowd)も、
とにかく格好良かった。

古いダンスホールの延長のようなところを除けば、
ジャズクラブなんていう洒落たものはまったく無い時代。
いちおうナベサダとか若き日の日野皓正あたりが
新宿のピットインでライブをやっていましたけどね、
それは、きちんと座ってきちんとジャズを聴くコース。
大人っぽいクラブでお酒を飲みながら、
じわっと盛り上がっていく、こんな「ジ・イン・クラウド」の
雰囲気は、どこを見ても無い!

自由が丘の駅前にあった「ファイブスポット」には、
少しはそんな雰囲気もあったけれど。
もっとも、高校生や予備校生は、そんなところがあっても
そうそう簡単に行けるわけじゃない。

ともかく、アフタービートの利いたノリの良い曲と
大人の世界の相乗効果。
出だしの拍手からして、
スコッチ・アンド・ウォーターと紫煙、
それとジャズトリオの才気と洒落っ気が醸しだす、
それは海の向こうの華やいだ世界なのです。

もちろん、世はビートルズとヴェンチャーズの時代。
ジャズはちょっとばかり脇の方で、少し気張って、
通っぽい雰囲気を醸しだしていた時代でございます。
ませた高校生(ワタシ)は、
ビートルズ?なんか騒々しいだけじゃないか!
ま、けっこう聴けるメロディーもあるし、気の利いた詩もあるけどね!
などと宣い、
耳が肥えてくれば、ジャズの良さも分かるというものだ!
などと、うそぶいていたのでございますよ。
(実は、よ〜くみるとこのレコードにも
 早々と「ア・ハード・デイズ・ナイト」が入っているのですけどね)
ま、長い音楽人生には、結果としてこういう回り道もあった、
ということです。

  ちょっとゴチャゴチャしますけどね、
  ヴェンチャーズは好きでしたよ、というよりかぶれましたね。
  高校一年のときに、あの伝説的な厚生年金ライブの
  翌日(だったか)のライブも聴きに行きましたよ。
  場所は横浜体育館!そう体育館でライブ!。
  どういうわけか父が興行主とちょっとした面識があったようで、
  そのつてでサインも貰いました。(どこへいったか不明)

  ワタシはきわめて素直な“時代の子”です。
  ですから流行りものにはちゃんとかぶれます。
  とーぜん、グヤトーンの真っ赤なエレキギターを抱えて、
  不良仲間、もといクラスの仲間とバンド結成。
  そして、ヒット曲を片っ端からコピー。
  いやコピーといったってスコアを見るわけではなく、
  ぜんぶ耳から入ってくる音をなぞる!
  しかし、このバンドは長続きしませんでしたね。
  なぜって、みんなリードギターをやりたがるから、
  バンドの体を成さない。
  こういう、良くあるパターンを歩んでくると
  たとえば加山雄三は好き嫌いはともかくとして、
  素朴にエライナァ、と思うのです。

そんな寄り道をしつつ、その後数年間のジャズへの情熱は
少しずつしかし確実に育まれていくのです。
その、ひとつのターニングポイントが、この「ジ・イン・クラウド」。

ジャズのようでもあり、ロックのようでもあり、
いまならフュージョンとかクロスオーバーとか、
いずれにしても立派な席を用意されると思うけれど、
当時はね、なんとも中途半端な音楽ということで、
純粋なジャズファンからは蔑みの目で見られたものなのです。

でも、全米ビルボードのホット10には入るし、
グラミー賞だって貰っている(と思う)。
とにかく、スーパーヒット曲なのです。

この曲、ジャズ喫茶ではリクエストしにくかったですね。
なにしろ、マイルズ・デイヴィス、チャーリー・パーカー、
ジョン・コルトレーン、オーネット・コールマン等々、
ジャズ界の王道を歩む大御所達の極めつけを聴くのが、
ジャズ喫茶に来る者の作法、という時代。
そんなところに「ジ・イン・クラウド」などと言おうものなら、
“あ〜ぁ、これだから素人は困るんだよ!”と、
あからさまなる非難中傷の目、吐息があちらからもこちらからも。
でもね、みんな実はそれまでの曲で凝りに凝った肩から
力をふっと抜いて、喜んでいたんじゃないか?とも思うのですけどね。

だから、ジャズ喫茶では聴きたくてもグッと我慢をして、
家に帰ってからレコードを聴く、とこうなるわけです。
だいたい、レコードを買うお金があったらジャズ喫茶の方が
断然マシ、と思い込んでいた時代。
そんな時代に買ったレコードには、それなりの必然があるのです。

このレコードは33回転の17センチ盤。
要するに小さなLPです。
欲しいけれど、大きなLPは高い、
いや、全曲は遠慮したいけど、あの曲だけ聴いてみたい!
そんなニーズを満たすための企画です。
お金のない高校生には、もちろんありがたい代物。

ちなみに、このレコードの他には
「ラムゼイ・ルイス・トリオ・ベストヒット」という
30cmLPも持ってます。
この中に入っている「朝日のようにさわやかに」は
いまでもMJQの演奏より良いのではないか、と密かに思っています。

ずっとずっとあと、大人になってからCDを買いました。
もちろん、「ボヘミアン・キャヴァーン」でのライブ盤。
だいたい、昔聴いた音楽のCDを買うと、
当時の青っぽい感傷の記憶が邪魔をして、
妙によそよそしく聞こえたりするものですけどね、これは違う。
ノリの良さも、それと音楽の姿形も、
いまでも充分に楽しく生きている、これは凄いなと思いますね。

ところで[あの時代の話し]は、とりとめもなく長くなります。
書いているうちに、芋づる式にいろいろ思い出すのです。
ある程度のところでENDマークを出さないと、とんでもないことに。
というわけで、今回はこのあたりでオシマイ。


カテゴリーの[あの時代の話し]は、
ポッチさんのブログコメントから頂きました。
ポッチさん、事後承諾ご容赦を。

あ、それからCDの方は"The Ramsey Lewis Trio Live"
という盤ですけど、テネシーワルツも入ってますよ。
いい演奏です。


nice!(3)  コメント(7) 

nice! 3

コメント 7

いろは

こんばんは^^
1966年ですか〜・・・。
私はもう少し古いかも(^_^;)
ジャズは結構聴きましたが、サッチモとかの時代ですね。
アメリカに憧れていた頃を懐かしく思い出されます。
by いろは (2007-11-13 17:14) 

e-g-g

◎いろはさん こんばんは
6才上の兄が洋楽を聴いていました。
カントリーとか、若き日のレイ・チャールスとか。
その影響はけっこう強いもので、
音楽はともかくアメリカへの感化は、相当に受けました。
ジャズもまだ聴きやすく、親しみやすい時代でしたね。
 
by e-g-g (2007-11-13 21:31) 

ポッチ

e-g-g さん、お邪魔します。
[あの時代の話し]待ってました!もうニヤニヤしながら、読ませていただきました。

のっけから、「三重奏団」!ノック・アウトです(笑)。味がありますねー。今や、これは超貴重盤では??

『ジ・イン・クラウド』、今では名盤扱いですが、当時はそんな扱いだったのですね。たしかに、「ジ・イン・クラウド」に合わせて客が手拍子をしているジャズ喫茶・・・あの時代には似合いませんね(笑)。

また、エレキ=不良? みんなリードギターをやりたがる・・・こういうのも好きだなあ。
e-g-g さんの青春時代で青春小説何冊か書けそうですね。

>“あ〜ぁ、これだから素人は困るんだよ!”と、
 あからさまなる非難中傷の目、吐息があちらからもこちらからも。

思わず、声を出して笑ってしまいました。私もその場にいたら、そのリクエストに心の中で「助かった」と叫ぶと思います(笑)。

>そんな時代に買ったレコードには、それなりの必然があるのです。

うーん、納得。重いのはレコードの重みだけじゃないのですね。

なにかと“濃い”時代、やっぱりちょっぴり羨ましいです。
次回はどんな話が聞けるのかな♪
by ポッチ (2007-11-14 03:50) 

e-g-g

◎ポッチさん
実は、こんどはじめて気づいたんですよ!
で、ワタシだって驚きましたよ。
だって、いくら昔といったって1960年代も後半ですよ、
ワタシの脳内メモリーをどうつついてみても、
ラムゼイ・ルイス・サンジュウソウダンと呼んだ覚えはありません。
ま、間違ってはいないんですけどね。

“濃い”時代ですね、たしかに。
それと、ちょっとばかり熱かったですね。
日本中がお祭り騒ぎのような1960年代でした。
 
by e-g-g (2007-11-14 20:25) 

kita

e-g-gさん  こんばんは。
1960年代を思いおこさせていただきました。ただし、私は、叔父の影響でもっ
ぱらクラシック一辺倒でした。JAZZは、せいぜいMJQやキース・ジャレット、デ
ューク・エリントンくらいしか聴いたことはありません。e-g-gさんも、6歳上のお
兄様の影響と書いておられますが、身近にいる人の感化は大きいですね。

ところで音楽とはまったく関係がありませんが、昨日稲尾和久氏が逝去されま
した。1950年代後半を代表する人物の一人だったように思います。1958年私
は小学6年でしたが、当時の興奮を思い出しました。
また、昭和が遠くなりました。
by kita (2007-11-14 22:10) 

e-g-g

◎kitaさん こんにちは
兄の時代の音楽、
その一部がたぶん貧弱なレコードプレーヤーを通して、
私の耳にも届いていたのでしょう。
それらの音楽は、数少ないからこそ
印象深かったのかもしれません。

私のそばにクラシック好きの叔父さんがいたら、
さて、どうだったでしょうね〜
もっと早くにクラシックに親しんだか、
逆に避けて通ったか、、、

稲尾和久氏。
“あの時代の熱が投げさせてくれた”
まったく不正確ですけれど、たしかこんなことを
述べられていたのを覚えています。
やはり熱い時代でしたね。
by e-g-g (2007-11-15 14:33) 

e-g-g

◎Krause さん nice ! をありがとうございます。
 
by e-g-g (2007-11-19 00:48) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。