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ウラッハのブラームス/クラリネット五重奏曲-1 [聴く・クラシック音楽]

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悩んだ末にこのCDを買った。
モーツァルトとブラームスのクラリネット五重奏曲。
演奏はレオポルト・ウラッハと
ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団。

すでにLPを持っていること、
それと、買ってから27年も経つというのに、
とくにブラームスの方はその印象の深さから、
この間ほとんど聴かず記憶の中で鳴り続けていたこと。
その記憶とCDとのギャップを危惧したから。

このレコードを買ったのは1980年の春。
この前後にはブラームスの室内楽を集中的に買っている。
ときおり、フルトヴェングラーの英雄なども買っているが、
とにかくこの年は、シンフォニーから室内楽まで
相当な数のブラームスを集めた。

買った当初は、レコードの溝がすり減るほど、
とまではいかないけれどかなり集中して聴いた。

ある日、家人からこのレコードの演奏中止要請がでた。
“この曲を聴いていると、ものすごく暗くなる
 気が滅入ってしまうから、少しやめてほしい”
というのがその理由。

この感覚は良く分かる。
入れ込んで聴いている本人でさえ、
なんでこんなに深く暗いんだ!と思うほどだから、
端で聴かされている身になれば、もっともな話し。
このことを境にぱったりと聴かなくなったわけでもないが、
やはり、その機会は減る。

実は、この前に同曲の何枚かのレコードを買っている。
レコードケースを見ると、
ストルツマンとクリーブランド弦楽四重奏団、
オッペンハイム、ブダペスト弦楽四重奏団、
ライスターとアマデウス弦楽四重奏団
ここまでは、ウラッハ盤よりも前に求めている。
CDになってからは
ボスコフスキーとウィーン八重奏団員
などなど。
ちなみに、これらの盤の「暗さ加減」はほどほど、と思う。

1951年にモノラル録音されたこの演奏が、
いつLPで、それも日本で発売されたのかは知らない。
私が、買った1980年版は
「レオポルト・ウラッハの芸術」として
5枚組のボックスセットで発売されたものである。
(Westminsterレーベル、発売元は日本ビクター)

ウラッハのこのLPから遠ざかっても、
他の演奏者のものはときおり聴いていた。
ボスコフスキー盤を除いては、みな良い演奏と思う。
でも、ウラッハの深みのある演奏とはまるで違う。
本来なら、違う点を見つめ(いや聴いて)、
いろいろと比較もしたくなるところだけれど、
このウラッハ盤は、そんな気を起こさせない。
ま、私にとって別格扱いのレコードになったのである。

家人の指摘は、私のこの曲との距離を見つめる上で、
良いアドバイスになったのかもしれない。
あのとき、とどまることを知らずに聴き続けていたら、
どうだったか?と思うこともある。

ウラッハ盤を聴かなくなってからも、
この五重奏曲のメロディーは、ときどき思い出したように
頭の中で鳴っていた。
絵に描いたようなたとえだが、ちょうどいま時分、
それも冷たい雨の降る夕暮れ時など、第二楽章が響いたりする。
前記事の『山中湖』の光景も似合う。
これらは、ちょっと出来過ぎのイメージだが、
とにもかくにも、さまざまな景色や人との繋がり、
そういものに影のように寄り添いながら、
記憶の中で鳴り続けていた。
そうやって25年以上が過ぎた。

先々週、タワーレコードで、
このLPがCD化されているのを見つけた。
やっぱり出ているか、と思いつつ素直には買わなかった。
帯に「音楽史上に燦然と輝く金字塔、比類無き美しさ」とある。
また、ニューリマスタリングでもある。
LPよりはきっと良い音だろう。
ステレオで聴く時間が無くても Mac でも聴ける、
それに i Pod にも入れられる。
でも、そんなことはどうでも良い。

一週間後、やっと買った。

記憶の中で鳴り続けていたウラッハのクラリネット五重奏曲、
たぶん、その増幅されたイメージがCDを聴いた途端に
矯正されるのを覚悟して買った。
これは、たとえばリマスタリングされた最新のCDよりも、
ノイズの多いLPの方が、なにやら雰囲気の良い音に聞こえる
というのとは、ちょっと違う。
その差は、ある程度慣れが解消してくれる。

私のこの曲への変則的な思い入れ、いや愛し方は、
そもそも本来の音楽のカタチを、たぶん変えてしまっている。
その点の躊躇、それがなかなか厄介な問題なのだ。

そして聴いた。i Pod にも入れた。

と、今回はここまで。
聴いてはみたものの、まだしっかりと気持ちに届いてこない。
この届かなさそのものが、すでに感想とも言えるけれど、
それともちょっと違う。
届いてはいるのだけれど(矛盾)
それが言葉に置き換わるところまで発酵していない。
いろんな想いが錯綜して、まとまり無く渦巻いているといったところ。
とにかく、もう少しじっくりと聴いてからまとめたい。

こんな風に書くと、自分で自分の首を絞めているようだ。
なにやらきちんとした評価を書かなければ、と。
ま、そう構えずに、この曲やウラッハのこと、
それとブラームスのことなどを
つらつらと書いてみたいと思う。

→その-2へ続く(いつのことになるやら)


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ポッチ

e-g-g さん、こんばんは♪
「ビンゴ!」クリックした瞬間、叫んじゃいました(笑)。私の唯一持っている op.115 がこのCDなんです。10年近く前、ジャケットに惹かれて買いました(名盤とも聞いていましたが)。20bitK2スーパー・コーディングって、その頃は流行ったのかな、ちょうど同じ頃買ったビル・エヴァンスの『サンデイ~』の帯にも同じ文句が書いてあります。

内容については、私も“その-2”へ譲りたいと思います。ただ、このCD私好きですよ。モーツァルトは何度も繰り返し聴いています。ブラームスは・・・繰り返し聴くには私はまだまだ未熟のようです。。。だから、「演奏中止要請」には納得してしまいました(笑)。
by ポッチ (2007-11-11 04:15) 

kita

e-g-gさん おはようございます。
昨夜10時前に拝読したのですが、10時からプロムスのラスト・ナイトを見たも
のでコメントが遅くなりました(それにしても、アンナ・ネトレプコは評判通りの大器ですね)。

思いがけず早くop.115につき力作をありがとうございました。熱い、熱い思い
が十二分に伝わってきます。

この曲は、1人で聴く曲なのでしょう。演奏会でもたとえ理解しあっているパート
ナでも離れた席で聴くとか。その意味では、奥様の要請はよく判ります。

どうか構えずに気楽に「その2」を書いてくださるよう希望いたします。待っています!
by kita (2007-11-11 09:34) 

ポッチ

e-g-g さん、こんばんは。
ひと言だけ。20bitK2スーパー・コーディング、両方とも販売元がビクターなんですね。よく見れば、気づきそうなものを。。。
by ポッチ (2007-11-12 01:53) 

e-g-g

◎HEIJI☆さん いつもアリガトウ、です。
 
by e-g-g (2007-11-12 12:32) 

e-g-g

◎ポッチさん
やっぱりビンゴ〜!でしたか。
なんとなくそんな気がしてました。

モーツァルトの方も、もちろんいいですよね。
LPでは、このモーツァルトとブラームスは、
それぞれ一枚物だったようです。
私の持っているLPはウラッハの総集盤なので
オリジナルとはちょっと違うとは思いますが、
やはりモーツァルトで一枚、ブラームスも一枚、です。

“その-2”は、まぁ、いつになるでしょうね〜
また、いつ演奏中止要請が出るか分かりませんし。。。

◎kitaさん
プロムスは、少しだけ見ました。
たまたま威風堂々がほんとうに堂々と流れているところで、
すごいナァと思いつつ、眠ってしまいました。

>この曲は、1人で聴く曲なのでしょう。
まったく、そのとおりですね。
それも、かなりしっかりと気持ちを落ち着かせてから。
他にも「ひとり」が向く音楽はいろいろとあると思いますけれど、
この曲はその最右翼でしょうね。

全体の見通しもない「その1」「その2」です。
このあたりの気分は、ブログの特質に寄りかかってます。
そうとうに成り行きになると思いますが、
また読んでいただけましたら幸いです。
 
by e-g-g (2007-11-12 12:52) 

e-g-g

◎ポッチさん
“20bitK2スーパー・コーディング”って、
きっとそれなりにすごい技術なんでしょうね〜
ワタシは、そのあたり弱くて。

ところで、ポッチさんの持っているCDのジャケットは、
今回私が買ったのと同じなんですよね?
いや、些細なこと、、、
 
by e-g-g (2007-11-12 12:56) 

e-g-g

◎xml_xslさん nice!をありがとうございます
 
by e-g-g (2007-11-12 12:57) 

ポッチ

e-g-g さん、こんにちは。
そうです、同じジャケットです。一筆書きのクラリネットと色使いが目に飛び込んできました。でも、これ本来はモーツァルトのレコードのジャケットなんですよね。ブラームスは手元アップの青いやつで、Op.115とはそちらの方が合ってるかな・・・って当然ですね。

今日はとても天気が良いので、このCDはお休みさせます。
by ポッチ (2007-11-12 13:58) 

e-g-g

◎ポッチさん
実は27年前に買ったボックスセットは、
白地にタイポグラフィだけという、
ストイックというか力が入っていないというか、
ともかく素っ気ないデザインなのです。
ですから、オリジナルのジャケットを見たのは今回が初めて。

そもそもが別々のLPだったのを一枚のCDにまとめたわけですから、
ジャケットも、どちらかになるのですね。
私としては「青いブラームス」を採用してほしかった、です。

このCD、私も今日はオヤスミです。
やっぱり陰々滅々と冷たい雨が降らないと、、、
あぁ、なんと情緒的かつ不健康な聴き方、、、なのだ!
 
by e-g-g (2007-11-12 20:27) 

berry

「演奏中止要請」ですか . . . (笑)
確かに聴かされている立場では、すんなり音楽に入っていくときと、まったく受け付けないことがありますね。
最初はね、ふ〜〜んと聴いているんですけどね。
そのうち、じわじわと不機嫌になるのね。またはハッと気に入ったりする。
今ハマっているラテン音楽は、聴かされて気に入ったワケなんです。
車の中で iPod から鳴り響いていました。(笑)
<『山中湖』の光景も似合う。>なんかわかるような気がします。
音楽は真っ白ではなく自分の映像というモノを頭の中に描いています。
by berry (2007-11-13 07:28) 

e-g-g

◎berryさん こんばんは

“音が鳴った瞬間に、ひとは感情的になる”
昔、ある指揮者がこんなことを述べていました。
(あまり正確な引用ではありません、ゴメンナサイです)
ともかく、音も音楽も人に訴えかける力が強いものですね。

そこにいろんなイメージが生まれて、
それがまた新しいモノをつくったり、、、
表現の面白さですね。
 
by e-g-g (2007-11-13 21:02) 

e-g-g

◎cfpさん お立ち寄り、ありがとうございます。
 
by e-g-g (2007-11-13 21:06) 

mozart1889

こんばんは。
ウラッハ盤への思い、伝わってきますね。
僕も是非聴いてみようと思います。ウィーン・コンツェルトハウスSQも同じく聴いたことがないんです。
探してみます。有り難うございました。
by mozart1889 (2008-10-07 03:20) 

e-g-g

◎mozart1889さん
コメント、ありがとうございます。
モノラル盤は私も、ちょっと敬遠しがちですけれど、
このウラッハ盤はそれもあまり気になりません。
機会がありましたら、是非、
一緒に入っているモーツァルトも良いですよ。

by e-g-g (2008-10-08 12:10) 

masa

いいCDの紹介ありがとうございます〜♪
これ流しながら作陶すると
とっても捗りますよ〜
ヘビロテ中です^^♪
まさに中毒化してます〜(笑)
モーツァルトもいいですね
ブラームスと全然違う音色!
by masa (2009-08-24 22:03) 

e-g-g

◎masaさん
おっ!早速ですか~
ブラームス、良い曲でしょ!
なかなか忘れられない旋律ですよね、
暗いのは第2楽章で、両端も合わせて聴けば
暗いだけの音楽ではなく、、、
ワタシも久しぶりにじっくり聴きました。
でもヘビロテまでは、、、

それとモーツァルトも、もちろん絶品!
どちらも惚れ惚れ、です。

by e-g-g (2009-08-29 18:42) 

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