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それをやったらおしまい、赤福餅。 [日々のデザイン]

赤福の不祥事が連日、報道されている。
今日は成分表示の順番を偽っていたことが報じられていた。
本来、重い順に並べるはずのところを、
たとえば、
 「赤福餅」の原材料表示についても「砂糖、餅米、小豆」の
 順に表示しなければいけないところを「小豆、餅米、砂糖」と
 表示・・・
これは、いけない。
マスコミは騒ぎすぎといったいつもの声もあるけれど、
やはり、これはいけない。

気がついてみると、もう30年近くも食品メーカーの
広告やパッケージを手がけてきた。
意図したわけではないけれど、結果としてそうなっている。
携わったパッケージデザインの数も相当になる。
短い商品サイクルのなかで、
ずっと変わらずに店頭に並んでいるものもある。

箱、袋、瓶、缶、、、パッケージの主役は、
どの場合も売場で見える「正面の顔」である。
製品の意図をしっかりと伝え、しかもチャーミングに。
そのメーカーの想いや、意気込みがいちばん現れる。
小さな面、ときにはマッチ箱ほどのスペースしかないこともある。
ハガキ大もあると、大きいナァと思ってしまう。
とにかく箱庭のような世界に、
買い手のニーズや心理、
それを反映した製品開発の意図、
メーカーとしての意気込み、
営業戦略のポイント、ライバル社との差別化、、、
といった様々な要件をぜんぶミキシングして、濾して、
そして最後に残る存在理由を形にする。
何度やっても難しく、面白い。
もちろんデザインをする立場を、
ユーザーの目線に置くのは当然ではあるけれど。

大方の場合、デザインの方向が決まると裏面の作成にかかる。
これも作業としてはなかなか厄介。
製品の特長、使用方法、作り方、注意事項、
リサイクルマーク、バーコード、、、
イヤと言うほどの要素がある。
しかも入っていれば良いというものでもない。
「決まり」の大きさがある。
面積が限られている場合、なまじなパズルより難しい。

なかでも、原材料表示などを含んだいわゆる一括表示。
これはパッケージの裏面の、
いやパッケージ全体としても製品の命である。
これなくして食品のパッケージは成立しない。

店頭で、小さな箱を手にとって裏側をじっくりと見ている客がいる。
私も未体験のモノ(食品に限らず)を手にするときは、
けっこう慎重に「裏面」も読む。
表の顔に一目惚れということもあるけれど、
これは、まぁ、普通の感覚と思う。

 小さな子どもに食べさせても大丈夫?
 アレルギー源は入っていない?
 日持ちはする?
 夫の体脂肪率も気になる、、、
 これ、美味しそうだけどどうやって作るのかしら?

そんな様々、生活の数だけある様々を消費者はしっかり見ている。
そうやって選択する際の、最低限の手がかりが裏面の表示である。

表の顔をどんなに着飾っても、
仮に、何かのデザイン賞をとったとしても、
この裏面にウソがあったら、なんの意味もない。

今回のような事件が起きると、
どうせ他のメーカーだってやっているだろう、、、
と思う人がいても、これは仕方ない。
現実に、今年になって次々に出てきた事件を見ていると、
そう思えてしまう。

ただ、ほんの少しだけ、その現場に近いところで
仕事をしている立場としては、
そんなことはない、とも言いたい。
大半、いや99パーセントの企業はきちんと作っている。
おめでたいと言われるかもしれないが、
その最低限の約束事を守るために、やはり企業は努力をしている。

あるメーカーの場合は、
原材料表示の分析結果、もちろん重量の数字も入ったデータを
きちんと知らせてくれる。
実際には数字は表示しないから、順番だけでもかまわないけれど、
やはり安心感はある。
いちばん最初のオリエンテーションのときに示されることもある。
これは、なにより製品の理解につながる。
いっぽうで、印刷の直前になるまで、
この成分表示が確定しないこともある。
順番が入れ替わることもある。
こういったことは、新製品開発には付き物である。

いずれにしても、食品メーカーにとって
この成分表示は製品の生命線であり、
法令や条例で決められているから入れる、
というだけのものではない。
様々な試行や研究、また開発メーカーとしての
プライドもなにもかもがそこに表れているのである。

しつこいようだけど、それを蔑ろにしているようなメーカーは、
ごく一部である、と思いたい。

赤福餅は美味しい。
新幹線のホームで何度も買った。
そのたびに、こんな生菓子をよくこれほど多くの店舗に
配荷できるもの、と関心もした。
考えてみれば、無理な話だったのだ。
 この美味しさを味わうためには
 冷凍保存、そして材料にもたっぷりと砂糖を使っています。
と正直に、なぜ言えなかったのか。。。
 


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東雲

e-g-gさん こんばんは。
一消費者として 何気なく見ているパッケージに
それに携わっておられる方々の熱い想い、ご苦労 等々、が
e-g-gさんの記事を通して しっかり伝わって来ました。
確かに 商品の“顔”ですもんね、パッケージは。
・・・なのに・・・。
この赤福は 昔から 本当によく食べていましたので、
この件を知った時は 家族皆 唖然としてしまいました。
ミートホープの幹部が昨日逮捕されましたが その事件が発覚した後も
同じ様な事が次ぎから次ぎと出て来て、もう 開いた口が塞がらない状態です。

最近は「ごく一部であって欲しい」と 微かな願いを持ちつつも
「どうせ どこも同じ様なことをしているに違いない」
「成分表なんかあてにならない!」と
端から疑ってかかるようになってしまっています。
“食品メーカーにとって 成分表示は製品の生命線である” のに
それを偽ると言う事は “何か”が欠けて来ているという事なのでしょうね。
by 東雲 (2007-10-25 18:43) 

mamire

赤福餅は美味しいです。
今日、お友達との会話の中で話題になったけれど、赤福はだれもが「美味しい、大好きだったのに」といいました。
もしかしたら、それは信用という言葉の味だったのかもしれません。

ちょっと前まで、食品には、製造年月日は記載されていたけれど、賞味期限などなかったそうですね。
頼りになるのは自分の舌だけでした。
母なんて、「カビを落とせば大丈夫。」なんていって、古いものも匂いをかいだり、舌に乗せて試していました。
今は自分の舌も狂い始めているのかもしれません。

裏の成分表も見るけれど、そればかり考えていたら、つまるところは自給自足の道しかないですね。
疑う気持ちでものを食べても、きっと美味しくないと思うな。
自分の味覚を信じて、美味しいものを見つけて行きたいものです。

e-g-g さんは、直接お仕事にかかわることだから、嘘をつかれるのは一番困りますね。
仕事だから仕方ないでは、きっとお気持ちが許せないでしょうね。
by mamire (2007-10-25 21:12) 

赤福、僕も大好きでした・・・過去形になってしまいましたが。
実家が東海地方なので、伊勢のおかげ横丁にいったり、お土産で
貰ったりしていたので、いままで赤福を300個以上は食べた気がします。
なんだかだまされたようで、ガッカリです。

はじめたきっかけは、もったいないの精神だったんでしょうか。それが
いつのまにか当たり前になり、利益優先に変わってしまったんでしょうね。
せめて記者会見で正直に言えばよかったものを・・・もう手遅れでしょう。

食品業界全体の信用を下げる事件が続いていますが、まじめに
やっている人も多いはずなので、今後の信用回復を期待したいです。
by (2007-10-25 22:41) 

tak

私も仕事の関係で、こういった表示の
重要性については、よく知っています。
それだけに、今回の件はがっかり
させられています。

赤福は、江戸時代から続いてきた老舗です。
もし、いいかげんな悪徳商法をやっていたら、
こんなに長く続いてはいませんよね。
ある意味では、良質な小豆を煮て、
お餅にまぶして、おいしいものをつくるということを、
愚直なほど、ずっとやってきたのだと思います。

それが、この代の経営者は、どうして
守れなかったのでしょう。
やはり、世の中に、急速に余裕がなくなってきた
のでしょうね。そんなことをやっていたら、
経営が成り立たないようになったのでしょうね。
だとしたら、気の毒な面もあると思います。
by tak (2007-10-25 22:50) 

白い恋人もショックでしたが、焼き菓子でしたし・・・。
赤福はいわば、生物。
騙されてた感がかなり違いますね。
あの時食べた、あれもだったのか・・・と。
比内鶏といい・・・こんなニュースを見る度に、
いま、どこかで誰かが、青くなっているんだろうなと思ってしまいます。
それだけ、疑心暗鬼になります。
そして、異常に日持ちするのも・・・何が入っているんだろう?と思います。

食品の表示もいろいろと変化し、お仕事となると、大変ですね。
表示義務とデザイン性では、相反するものもありましょうし・・・。
でも、いい仕事したいですよね。
胸を張って仕事したい! そんな国であってほしいのですけど。。。
by (2007-10-25 23:18) 

e-g-g

◎東雲さん こんにちは
こういう記事は、つい正論イメージが出てしまいます。
ただ、やはり気持ちの良くない仕事はしたくないですね。
これは、食品メーカーとか、私のような仕事でなくとも、
といいますかすべての仕事について、
みんながごく普通に持っている気持ちと思います。
そのあたりが揺らぐということは、
たぶん社会そのものが変わってきているのでしょうね。

◎mamireさん こんちは
これだけ加工食品に囲まれていると、
味覚のセンサーも錆び付きますね。
でも、やっぱり最低限の見分けはできないと、、、
賞味期限、消費期限がすべてというのは悲しい。

モノは人を幸せにしますけど、
そこには「騙し」や「思い込み」といった
けっこう微妙なことも含まれますよね。
蝦蟇の油のようなことも多々。
ですから、買った人の満足を計ることも
そうそう簡単なことではありませんね。
それだからこそ、その一線には
敏感に慎重に向き合って欲しいのですね。

◎akiponさん こんにちは
ヘビーユーザーですね。
これだけ、ファンがいるのですからね、大変です。
昔、本店?だけで売っていた頃は
お客の顔も良く見えたでしょうね、
たとえ規模は小さくとも、真っ当な商売が
前提だったはずです。
人気が出た→販路を広げよう→増産しよう→
だけど増産にも限界がある→あちこちのデパートから
新規の商談も増えている→・・・
手作りから工業生産品への変化ですね。

◎takさん お久しぶりです
ひとことで言えば「市場の論理」に巻き込まれたということでしょうね。
私も正直言って、気の毒と思います。
(許されないことですけどね)
その「転換点」のときにウソ偽りのない商売をきちっと示すこと、
これをきちんとやっていればなぁ、とも思います。
ただ、いざその場面ではきわめて難しいことでしょうね。
自分がそんな場面に直面したら、お得意さんを目の前にして、
「実は、このお餅は、、、」と真っ正直に言う勇気があるかどうか、、、
たぶん、そんなことも含めてほんとうの老舗が育つのでしょう。

◎こぎんさん
ものづくりの根っ子にある「正直に作る」ということが
なんとなく希薄になっているような気がします。
価値観の変化とか、いろいろあると思いますけれど。

しみじみと、きちんとした良い仕事を続けたいと思います。
それが、たんにラッキーの積み重ねではなくて、
ごく普通のことであって欲しいですね。

縁あって面倒を見ている地域ネコ用に買った
ロールパンが一週間経ってもカビも生えない、、、
ちょっと、いや、かなり不気味です。
by e-g-g (2007-10-26 14:54) 

e-g-g

◎カフェオランジュさん
◎三浦半島の住人さん
いつも、ありがとうございます。
by e-g-g (2007-10-26 15:00) 

anan

赤福、ずっと前から美味しくないと思って食べていません。それは内容が変わったからでなく、珍しくなくなり、美味しく感じなくなったのだと、思っていました。やっぱり、中身が違ってたのね!同じように感じる商品が、他にもあります。それもみな、内容が変わったのでしょうか?それとも慣れて、自分がおいしく感じなくなったのでしょうか?

商家には、「商人心得」があります。商家の生まれの私は、子供のころ、親に噛んで含めるように言われました。その第1条は、「嘘をついてはいけない。」「いつか必ずばれる」と。今まで、馬鹿正直を人に揶揄されること、多々あり。面と向かって「馬鹿じゃない?」と言われたことも。実際に損したことも。でも守ってきてよかった。心が弱くなるときもありますが、母方の言い伝えは、「騙すより騙されろ。」なので、一生「馬鹿正直」で頑張りたいです。
by anan (2007-10-26 20:13) 

いろは

こんばんは^^
食べ物の不祥事が続きますね。
何を信用して良いのか・・・(>_<)
でも何処かでそんな悪い会社ばかりでは無いと思っています。
パッケージって大事ですよね。
魅力ある表装はやはり売れると思います♪
これからも素敵なお仕事を期待していますね。
by いろは (2007-10-26 21:28) 

e-g-g

◎ananさん こんばんは
気を悪くしないでくださいね。
「嘘をついてはいけない」、これに類する一文を
第一条かどうかは別にして、
家訓や企業訓に乗せているところ、
たくさんあると思うんですよ。
社長室や、ときには応接室などでよく見かけますし。

その大事な教えは放っておくと色褪せてゆく、
ある日気がつくと正反対の状態になったりもするのでしょう。
その原因のすべてとは言いませんが、
組織、それも遠心力のついてしまった組織の怖さとも思います。
ただ、遠心力が働かなければ組織の活性化も生まれず、
そのバランスをとるのは、ほんとうに難しいんでしょうね。
簡単なことほど、難しい、、、

◎いろはさん こんばんは
パッケージのデザインをするときによく思うのは、
“馬子にも衣装”は通用しないということです。
(いや正確には“一回は通用する”でしょうか)
どんなに体裁の良いパッケージができても、
中味の製品に魅力がなければ、意味無しです。
ともかく、しっかりした中味が
良いデザインを産む条件と思います。

「良いこと」はなかなかニュースになりませんけれど、
真っ当にちゃんとしたものを送りだしているメーカーは
やはり評価したいですね。
地味でも小さくても、そういったモノや企業に
注意を払いたいと思います。
 
by e-g-g (2007-10-27 01:28) 

ハイマン

赤福 とっても残念です
三重に出張に行く人が結構いる会社なので
土産を楽しみにしていたのになぁ
by ハイマン (2007-10-27 08:01) 

anan

e-g-gさん、こんばんわ。

もちろん、気を悪くなんてしておりません。おっしゃりたいこと良く分かります。

このほどの騒ぎのほとんどは、日本的同族企業形態にも、一因があるように思います。

学校を卒業してすぐ外資に入社したので、外資会社の考え方、経営者側と雇用者側の仕組みが刷り込まれ、会社とはそういうものだと思っていました。そのあと、日本の中小企業に勤めたときは、本当に驚きました。

封建制がそのまま生きていたのです。家老や小姓の役をする人がいて、自分の保身だけを図っています。下の考えが上にあがることはありません。また社長ファミリーの公私混同は当然と言わんばかり。

「会社は社長の器以上にならない。」という言葉があります。起業者の器に合った会社を、そこまでの器のない2世、3世が継いだとき、問題が起こるのではないでしょうか?

堅苦しくてごめんなさいね。
by anan (2007-10-27 19:52) 

のすけの母

三重で生まれ三重で育った私にとって、「三重といえば赤福」と言えるほどだったものが、こんな有様となって落胆しています。

今回の件について、皆さんが言われていることと同じですので、もう繰り返しません。

ただ、本当に残念で、残念で……。
by のすけの母 (2007-10-27 22:21) 

mio

相次ぐ食品業界の不祥事、恐ろしいです
体に良くないと思って食べていたインスタント食品、無果汁の炭酸飲料の方が潔く、安全なのではと思える程
私は作り手を知らない食品を購入する際は成分表示を殆ど見ません。諦めています
これは最近に始まったことではなく、もうかなり前からです
食品製造のアルバイトの経験もありますし、日持ちさせるため、見栄えを良くするためには何らかの添加物を使わなければならないことを知った時からです
だからこそ購入の際、パッケージのデザインにはこだわります
少しでも気分良く食べるために
by mio (2007-10-28 22:38) 

e-g-g

◎ハイマンさん
関西方面への出張の帰りには、
お土産として良く買いました。
誰かが行くと、やはりお土産は、、、
ですから、会社でパクッと食べたのがほとんどなんですね。
家で、ちゃんと食べたことがなない、、、
(会社でいただくお土産は、ほとんど美味しい)

◎ananさん
人様々、会社も様々ですね。

◎のすけの母さん
詰まるところは商品のクォリティ。
そこをきちっとして再チャレンジして欲しいです。
並大抵のやり方では、難しいとは思いますけれど、
真価はそこで問われるでしょうね。

◎mioさん
真っ当にきちんと作っているメーカーも多いはずです。
表示は、そういったものづくりの手がかりであって欲しいものです。
by e-g-g (2007-10-29 08:16) 

風

赤福といえば「お伊勢さん」。
社会に対しての不正直はともかくとして、神信心が関係する神聖な場所で
「神様」に対する不正直は・・・もっと罪が大きいでしょう!
「貪欲さ」が神聖な事よりも勝ってしまったのですね。
神様をただ・・利用していただけなのだ。・・・そういわれる事に恥ずかしさを感じて欲しい私です。
by 風 (2007-10-30 23:38) 

e-g-g

◎風さん
よく思うのですが、現場で作っている人々は、
大方は良い人だと思うのですね。
ま、中には悪巧みをする輩もいますけど、
だいたいは善良な市民だと思うんです。
それが組織になって、ブランドとして一人歩きを始めると、もう個人の力の及ばない世界ができてしまう。
そこで、問われるのが経営の力と思うんですね。
もちろん作り手ひとりごとの倫理観も大事ですけれど。
老舗には、そういったことのより所もあったと思うのですが、、、
by e-g-g (2007-10-31 15:46) 

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