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9月、ブラームス解禁。 [聴く・クラシック音楽]

真夏にブラームスを聴いてはいけない!
なんていうことはないけれど、
ジージーと鳴く蝉の声をバックに聴く気には、
ブラームス好きの私でもさすがになれない。
でも、東京は今日もグッと涼しい。
この陽気ならブラームスも気持ちよく聴ける。
で、昨日タワーレコードで買ったばかりのCDを聴く。
ベンヤミン・シュミットのブラームス、曲はヴァイオリン協奏曲。
ジャケットの写真も、早くも晩秋のトーン。



もう、何度も何度も聴いているはずなのに
手持ちのLP、CDを調べると、なんと3枚しかない。
それも古い録音ばかり。
・ヌヴー/イッセルシュテット/北ドイツ放送交響楽団(1948年録音)
・ハイフェッツ/ライナー/シカゴ交響楽団(1955年録音)
・オイストラフ/セル/クリーブランド管弦楽団(1969年録音)
とまぁ、なんと昔のものばかり聴いてきたのだろう。

ベンヤミン・シュミットのも1996年の録音だから、
すでに10年以上も経っている。でも上の三枚に比べれば、
まだ湯気の立っているようなもの。
ちなみにベンヤミン・シュミットは1968年生まれ、
オイストラフとセルが録音したのと同じ頃である。
さすがに時代を感じる。

オーケストラの響きがちょっと薄い気がするが、
これは、いままでに聴いてきた重厚長大型スタイルと比べての話し。
(もっともヌヴーの演奏は、またひと味違うけれど)
シュミットのヴァイオリンは、比較的にオンで録られている。
それに比べると、オーケストラはちょっと控えめ。

三つの楽章では、第三楽章がソロとオーケストラのバランスも良く、
なによりブラームス的な揺れる唄の特長が良く出ている。
聴いていると自然とカラダが動いてしまう。
この揺れる唄は、シンコペーション作家のブラームスの
特質のひとつと思うけれど、とにかくこのリズムの扱いが、
ギクシャクしていては様にならない。

シュミットは、重苦しさや小難しい顔付きを見せず、
ブラームスの唄を聴かせてくれる。
これは、ブラームスでは厄介なところで、
往々にして、重く渋く劇的な様相になりがちなのだ。
というか、そういった重厚長大がブラームスなのだ!
そんな弾き方、聴き方もたしかにあり、
それが、良く言われる「ブラームスって重くて、暗くて、、、」
という見方にもつながっている。

シュミットのブラームスは、
骨格はしっかりしてるけれど、
分厚い鉄筋コンクリートの建築ではない。
もっと軽快な鉄骨とガラスでできたビルである。

まぁ、オーケストラを含めて、
この曲のがっしりとした構造をきちっと味わいたい、
そんなときはやっぱりオイストラフとセルの盤を
引っぱり出すと思うけれど。


このベンヤミン・シュミット、顔付きがなかなか良い。
(ジャケットのデザインは覇気がないけれど)
音楽は顔ばかりでは、もちろんない。
しかし、その意志の強さを秘めた鋭い眼光は、
ある程度は音楽にも反映していると思う。
はじめて買ったシュミットのCDは
バッハの無伴奏ソナタとパルティータの全集だった。
そのときから、実はシュミットはジャケット買いなのだ。

CDの内容は:
1・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.77
  ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)
  クリスティアン・マンデール(指揮)
  ブカレスト・フィルハーモニー管弦楽団

2・ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番ハ短調 Op.60
  プロ・アルテ四重奏団

OEHMS CLASSICS OC 262(輸入盤)


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kita

eguchiさん  すっかり涼しくなり、ブラームスの季節ですね。私もよく聴きます
が、若い頃とは好みが若干変わり、交響曲では2番→3番、ピアノ協奏曲では
2番→1番と変わってきております。明るい曲より暗めの曲へです。
ヴァイオリン協奏曲も若い頃はよく聴いたものですが、最近はご無沙汰です。ジネット・ヌヴーは聴いたことはありませんが、ハイフェッツ、オイストラッフそれにレオニード・コーガンをよく聴きました。なかでもコーガン(コンドラシン/モス
クワ・フィル)が好みでした。セルとはコーガンのほうがあっている気がします。
オイストラッフはクレンペラー盤のほうがよいのでは。

シュミットは聞いたことはありませんが、バッハはいかがでしょうか?

また、ブラームスではピアノ曲に好きなものが多く晩年の小品などルプーの実
演が印象に残っています。また、いずれポリーニが録音するのではと期待して
います。初期の曲では、「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」が好きなので
すが、最近誰も録音しません。一時ピ-ター・ゼルキンが入れるとの報があった
(RCA)のですが沙汰やみです。メジャー・レーベルで地味な曲を入れるのは
難しい時代なのでしょう。

いずれにせよ、季節にふさわしい音楽のご紹介を今後もよろしくお願いします。
by kita (2007-09-01 22:10) 

ポッチ

eguchi さん、こんにちは。
フフフ・・・“ブラームス解禁”、まさにその通り!ですね。その解禁、私も乗った!
解禁一発目、ヴァイオリン協奏曲できましたか。たしかに、交響曲顔負けの第1楽章は暑い夏にはちょっと遠慮したい。ブラームスらしさを味わうという点ではぴったりなんですけど。
ベンヤミン・シュミット、聴いたことはないんですが、おっしゃる通りなかなかイイ顔していますね。バッハも聴いてみたいです。
by ポッチ (2007-09-02 15:19) 

daland

こんばんは。
ベンヤミン・シュミットは、急成長していますね。
昔(といってもちょっと前ですが)のバッハの頃から比べても、最近のジャンゴのCD、そして最新のクライスラーの小品集(これとっても面白いです)音楽が豊かになってます。ヴァイオリンの音からして張りのあるいい音してます。

ブラームス聴いてみたいですね。そそられます。
またタワーレコードに寄ってしまいそうです。(笑)
by daland (2007-09-02 18:03) 

e-g-g

◎kitaさん
たとえば交響曲は2、3、4番、どれも好きですが、
一時、2番ばかり聴いていたことがありました。
年齢の変化などによっていろいろと変わりますね。
コーガンとコンドラシンの協奏曲は、是非聴いてみたいですね。
まだ、カタログにあるかな?

そういえばポリーニのブラームスの小品というのは
ありませんでしたっけ?
そろそろ聴かせてくれてもよいですね。

シュミットのバッハは、ピリオド奏法寄りの
すっきり系の音楽です。
イザイの無伴奏も良いですよ。

◎ポッチさん
まさかこんなに早く解禁日が来るとは予想外でした。
だって、一週間前までは、、、

ベンヤミン・シュミットは、なぜかARTE NOVA の
看板スターなんですよね。
今はエームズ・クラシックスに変わってますけど。
エームズ氏(この人、ARTE NOVAの中心メンバー
なのですが、独立して?自分のレーベルを作ったそうな、
ややこしいですね)と、たぶんウマがあうのでしょう。

でも、ほんといい顔してるんですよ。
どのジャケットも、なかなか。。。

◎dalandさん
ウィーン出身で、ヨーロッパではなかなかの活躍だそうですね。
小沢征爾の棒でウィーンフィルとも共演していますね。
ヴァイオリンは相当な名器のようですよ。
さらにジャズトリオも結成していますね。
こちらの方は、来年に日本公演がありそうです。

ワタシ、実はdalandさんに教えてもらうまで、
以前に買ったバッハやイザイ以来、
シュミットから、ちょっと遠ざかっていたんですよ。
最近のクロスオーバーものを聴いてから、
また火が点いたという次第です。

今回は、このブラームスの他に
・ゴルトマルクの協奏曲+ブラームスのダブルコンチェルト
・モーツァルトのピアノソナタ(K526、K301、K9、K378)
・ヴィヴァルディの四季
・Pieces de Concert
といったものを買いました。(まだ聴いてません)


◎kitaさん ◎ポッチさん ◎dalandさん

シュミットのバッハの無伴奏のCD、
その解説にあるシュミットのコメントを一部載せてみます。

 “アーノンクールやハインリヒ・シフなどのバッハ
  解釈の先人達の、その優れた演奏からバッハの音
  楽を受け継ぐ実践である。”

 “私にとって、音楽のfirst guidingは4つの弦におけ
  るバッハの倍音を発見する船旅”

  パルティータ第2番と第3番のプレリュードにつ
  いては、たとえば
 “ジーグの泡立つような喜び”
  といったように、その音楽の舞踊的な性格に触れ、
  そのうえで
 “第3番のプレリュードのような、素敵で熱狂的で
  明るい永続的なムーブメントは280年以上の音楽
  (バイオリン)の歴史のなかで書かれていない。”
  とも述べています。

ともかく、バッハに向かう喜びが伝わってくるコメント、
それと演奏と思います。
時代はしっかり動いていますね。
by e-g-g (2007-09-02 21:08) 

kita

eguchiさん  ご丁寧なリプライ誠にありがとうございました。

シュミットにつき、ご教示をいただいたため、若手のイザベル・ファウストのことを
思い出し、11/12のリサイタルの切符を先程申し込みました。お聴きになっ
たことはありますか? 別の友人の推薦ヴァイオリニストです。

過去の大家の演奏も大事にしたいですが、シュミットのようなこれからの演奏
家にも注目しなければいけませんね。あと、日本人でブラームスといえば庄司
紗矢香さんでしょうか。チョン・ミョン・フン/東京フィルとやったブラームスの二
重協奏曲は素晴らしかった。外見からは想像できない非常に厳しい音楽を奏でます。
by kita (2007-09-02 22:09) 

e-g-g

◎kitaさん
いえいえ、こちらこそでございます。

イザベル・ファウスト、はじめて目にする名前です。
庄司紗矢香さんも、一般的ニュースレベルしか分からず、、、

クラシック音楽に熱中していた20〜40代の頃に比べると、
この十年ほどは、何となく距離ができてしまっていました。
もちろん、何人かの演奏家はCDを聴いたり、
コンサートにも通ってはいましたが、、、

この一、二年、やっと冬眠状態から目覚めた感じですが、
様々な方々のブログ情報もおおいに刺激になっています。
なにしろ、アーノンクールってあの古楽器の?
ラトルって、いったいどこの誰?
そんな具合でしたから。

このベンヤミン・シュミットにしても、
バッハやイザイは、偶然CDを持っていたものの、
dalandさんの記事を読まなければ、
何となく気に入っているヴァイオリニストのひとり、
と、そこで止まっていたでしょう。
事実、バッハについてのシュミットのコメントも、
今回初めて真面目に読んだくらいですから。

>過去の大家の演奏も大事にしたいですが、
シュミットのようなこれからの演奏家にも注目しなければいけませんね。

同感です。
なにより今の動きの真っ只中にいるプレーヤーが
何を考えどう表現しようとしているのか?
これは、やはりスリリングで面白いですね。
様々なメディアでそういった新旧様々の芸に出会える、
この点については、やはり幸せな時代なのだなぁ、と思います。
それと、やはり生に接する機会を増やしたいですね。

>外見からは想像できない非常に厳しい音楽

こういうコメントには、いたく刺激されます。。。
by e-g-g (2007-09-03 16:27) 

daland

eguchiさん
シュミットのコメントを紹介して頂き、ありがとうございました。
シュミットは、最近著しい成長を見せてます。
でも、いけ面で、テクニック抜群で、美音でと外面ばかり見ています。
コメントを読むとしっかりとした音楽に対する考えを持っているんですね。
なんか安心します。
将来もこういう若い人達がいい音楽を聞かせてくれるんだと。
まだまだクラシック音楽も捨てたもんじゃないですね。

ところでeguchiさん、ニックネームを「e-g-g」に変えられたんですね?
by daland (2007-09-03 22:23) 

e-g-g

◎dalandさん
私がクラシックを聴き始めたころ、新進気鋭のヴァイオリニストといえば、クレーメルやパールマンだったと思います。
そのクレーメルが1947年生まれ、シュミットと約20歳違うんですね。で、この20年の違いは、ほんとうに大きいのだなぁ、と思います。
ともかく、私たちが未だ知らないでいる音楽の新しいカタチを見せて欲しいものです。
*
ブログ開始当時は「egg」、その後「eguchi」、そして今回のe-g-g、改名ばかりしてます。
紛らわしくて恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
by e-g-g (2007-09-04 00:14) 

HEIJI

「解禁」というのが面白いですね。
音楽には旬というか、聴きたい場面というのがありますね。
台風が過ぎたら秋空が見られるでしょうか・・。

ストルツマンのCD、母から借りて聴いてます〜。
by HEIJI (2007-09-04 23:43) 

e-g-g

◎HEIJI☆さん
音楽には、いろんな感情の様を、
スッと引きだす力がありますね。

もちろん、聴きたいときが聴き時とは思いますが、
分厚い響きのシンフォニーなどは、
真夏はちょっと遠慮です。
台風一過の秋晴れの空に響く音楽、いっぱいありますね。

ストルツマンは如何ですか?
ススキの穂が揺れるのをみながら、
そんな光景にも合いそう、と思いますけれど。
by e-g-g (2007-09-05 12:39) 

kita

eguchiさん

ベンジャミン・シュミットのことが気になったもので、知人に聞いてみたら、シュミットは
古楽器系の技術は使ってないが、湾曲した弓を使っているので独特の音色、と
のこと
でした。

eguchiさんのコメント:
 シュミットのバッハは、ピリオド奏法寄りの
 すっきり系の音楽です。

納得です。

バッハの無伴奏ソナタ&パルティータは古楽器系ではレイチェル・ポッジャー、
モダン系
では、シェリング(旧盤ーEMI)、シゲティ、クレーメルを主に聴いてきました。
(また、別格としてはエネスコがあります)
この際、シュミットも探してみます。

ありがとうございました。
by kita (2007-09-05 22:25) 

e-g-g

◎kitaさん
いや、ずいぶんと専門的な詳しいお話を
ありがとうございます。
そのヴァイオリンの音色ですが、
当方のオーディオではなかなか違いまで分かりません。
きっと生で聴けば、いろいろと分かることもあるのでしょうね。

バッハの無伴奏は、
DGG盤のシェリングとクレーメルしか持っていません。
クレーメル盤を初めて聴いたときは、
これが究極か!と、思いましたけれど、
まだまだ、アプローチの方法はあるのでしょうね。

以外では、シゲティを聴いてみたいものです。
エネスコは、書物で知るのみ、、、
いずれにしても、まずカタログを調べてみないといけませんね。
by e-g-g (2007-09-06 17:03) 

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