SSブログ

当然だけど、時代は動いている。ヤルヴィのベートーヴェン [聴く・クラシック音楽]

たんなる耳への心地よさとか、いわゆるベートーヴェンらしさを求めるなら、この演奏は聴かなくても良い。
土曜日、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団の一年前の演奏会をNHK BS-hivisionで見る。ベートーヴェンのテクストは古くても、演奏はやはり時代の証。

プログラムは、ベートーヴェンの交響曲1番、2番、3番「英雄」、それとアンコールにシベリウスの「悲しいワルツ」。
(2006年5月26日、横浜みなとみらいホール)

どんな表現の世界でも、時代の変化は確実にその質を変えてゆく。
そのことを実にストレートに教えてくれる演奏だった。
以前に記事にしたノリントンなどもそうだが、
この十年間ほどの間に現れてきた指揮者が表現するベートーヴェンは、
とにかくこれまでに聴いてきたベートーヴェンの響きとはずいぶんと違う。
ピリオド奏法への傾斜など、比較的に分かりやすい理由もあるとは思うが、やはり若い世代の指揮者の育った時代の影を感じる。

パーヴォ・ヤルヴィ。
Wikipediaによると、出身はエストニア、指揮はおもにアメリカで学んだらしい。
バーンスタイン、オーマンディ、ドラティ、ショルティ、と師事した指揮者の名前を見ると、まぁなんと懐かしい面々。
その巨匠達の元で学んでいたヤルヴィは1962年の生まれ。
ビートルズがデビューした年であり、翌年にはローリングストーンズもレコードデビューしている。
時代の子という言葉をつい思い浮かべてしまうベートーヴェンだった。

この中継で聴いたベートーヴェンは、
私の耳には新鮮というより、どちらかといえば風変わりに聞こえた。
「安心して聴けるベートーヴェン」を求めるなら、聴かなくても済む演奏だ。
ただ、クラシック音楽の表現は、そこだけに止まっているわけではない。
新しい世代の演奏家の新しい解釈。
それがたんに奇をてらったものでなく、いままで気づかなかった何かを提示するものならば、その活動から目を、いや耳を逸らしてしまうのはもったいない。それはクラシック音楽を聴く楽しみのひとつでもあるのだから。


テレビ中継の音。
同じ中継でも、たとえばサントリーホールやNHKホールの響きと、この「みなとみらいホール」とは、ずいぶんと違った印象がある。
個々の楽器の音色は良く分かるが、オーケストラ全体のまとまり感は、ちゃんと捉えられていたのだろうか?と思うところもある。
きちんとミキシングされないまま、オンエアされてしまったような、そんな響きだった。
これが、ヤルヴィの意図したものかどうかは、やはり生を聴かないと分からない。テレビやCDだけで判断するのは難しい。

ヤルヴィとドイツ・カンマー・フィルハーモニーは、この夏も来日してやはりベートーヴェンをとりあげている。
CDを漁るのも楽しいけれど、やっぱり生を聴かないと、、、

それと、この一文は一年前の録画中継を見ての感想。
きちんとオンタイムで聴いている人からすれば“何を今さら”と思うことだろう。
 


nice!(5)  コメント(8) 
共通テーマ:音楽

nice! 5

コメント 8

としゆき

この演奏会の番組、私も録画して視聴しました。現代のベートーヴェンを演奏するために果敢に挑戦をしている印象を強く受けました。
私のページにもお越しいただいてありがとうございます。せっかくのご縁ですから、「読んでいるブログ」に追加させていただきました。
by としゆき (2007-08-20 20:18) 

coco

こんばんは♪

ベートーヴェン。好きです。そして本当に偉大な人だなぁといろんな指揮者の演奏を聴くたび思います。
パーヴォ・ヤルヴィ…初めて聞いた名前です。eguchiさんの記事を拝見してとても興味がわきました。一度聴いてみたい…

今年の2月にパーヴォ・ヤルヴィと同い年くらいのサカリ・オラモ&フィンランド放送響の『運命』を聴きましたが、爽やかで若々しく、心から感動したベートーヴェンでした。そして私の好きな指揮者の一人となりました。
バーンスタイン、オーマンディ、ドラティ、ショルティなど偉大な指揮者に師事した今、どう表現するのだろうか…なんて生意気に思ってしまいます。私なんかにわかるわけないんですけど…(^_^;)

特にバーンスタイン・・・
同世代の日本のお弟子さんには大植英次さん、佐渡裕さんなどがいますが、どちらも熱い演奏ですね♪
私は恐れ多くもバーンスタインと同じお誕生日なので、そういう意味でもおひいきなんですが…(*^_^*) 
by coco (2007-08-20 20:34) 

e-g-g

◎としゆきさん
「読んでいる・・」への登録、ありがとうございます。
この演奏、やっぱりちょっと気になる演奏です。
今朝も「英雄」の第4楽章だけつまみ聴きしました。
ともかくもういちど、じっくりと聴いてみようと思ってます。

◎cocoさん
オラモはヤルヴィより少し若いですね。
私は、かつての巨匠達が世を去ってから、
新しい芽に無頓着な時を過ごしすぎました。
これから、少し気合いを入れて聴こうかな、と。
そんななかでダニエル・ハーディングだけは
肌が合いまして、気に入ってます。
一昨年のコンサートも良かったです。

バーンスタインと同じ誕生日、
ということは、cocoさんも熱い?
by e-g-g (2007-08-21 16:33) 

ポッチ

eguchi さん、こんにちは。
パーヴォ・ヤルヴィ。最近、レコード屋でもよくお目にかかりますね。
以前、NHK-FMでちょこっと聴いた(というより、聞き流した)記憶があります。もっと、真面目に聴いておけば良かったなぁ。
新しいベートーヴェンにも会いたいし、でも、どこかでベートーヴェンはらしくあって欲しいし・・・いずれにせよ、新しい世代がどんなベートーヴェン像を描くのかは興味ありますね。coco さんの感動したサカリ・オラモ&フィンランド放送響のベートーヴェンも聴いてみたいなあ。
by ポッチ (2007-08-21 16:54) 

e-g-g

◎ポッチさん
新しいベートーヴェンと、らしいベートーヴェン、
同感です。
新しい方は、人の耳って(目も)、こうやって保守化傾向を辿るのかな?と思わせてくれる、リトマス試験紙のような感じです。
でも、その試験紙にピ〜ンと反応することもあるわけで、
その楽しみは、また格別ですね。
でも、往年の名演奏も捨てがたい、、、
嗚呼 ユウジュウフダン、、、
by e-g-g (2007-08-22 01:08) 

mamire

そんなにたくさんの演奏を聴いているわけではないのですが、会場によって聞こえる音は違うと思います。
テレビでは、ハイビジョンだとしても、何をかいわんやですかしら。
ピアノや室内楽は、カザルスホール(今は、日本大学カザルスホール?)
が好きです。
安心して聞くことが出来るっていう言葉に、納得。
私は、大抵こちら側。かなり保守的なんだなぁと思ってしまいました。
by mamire (2007-08-23 12:27) 

e-g-g

◎mamireさん
コンサートホールは、席によっても音が違いますよね。
カザルスホール、いまは日本大学の施設なのですか、
知りませんでした。

テレビの音ですけど、もちろんテレビそのものからの音声ではありません。
たいしたレベルではありませんけれど、いちおうオーディオと呼べる装置で聴いております。
BS-hi のBモードステレオは、なかなか良い音で鳴りますよ。大昔のFM放送の生中継の音に驚いた頃に比べたら、隔世の感がありますデス。
by e-g-g (2007-08-23 19:05) 

e-g-g

◎小父蔵さん ご訪問、ありがとうございます。
by e-g-g (2007-08-25 11:37) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

キミタチ ノ ナツVISIONS is our favor.. ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。