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ラフマニノフの音 [聴く・クラシック音楽]

一昨日の記事でちょっとラフマニノフに触れたせいか、
久しく聴いていなかった二番のピアノ協奏曲を聴きたくなった。
聴きたいと思った瞬間には、
もうあの冒頭のピアノの連打は鳴っているのだけれど。

ラフマニノフのピアノ協奏曲二番。
クレッシェンドしながら打ち鳴らされる和音、
ほんの数秒でこの曲の世界に引き込まれる。
なんと上手い「開始」だろう。
デザインも、これくらい上手くできたらなぁ、
などと、あらぬ妄想を抱く。

音楽は音があってこそ見えるもの、いや聞こえるもの。
曲の構造がどうだとか、演奏家や指揮者の解釈の違い、
オーケストラの個性・力量云々、
そもそも作曲の意図は?などと言っても、
ともかく音そのものの持っている魅力もある。
そして、この曲はピアノの音そのものを意識させる。
ピアノ協奏曲だから当たり前かもしれないけれど。

この二番は、たぶん六、七種類のLPとCDを持っている。
さほど盛大に増えずに済んだ曲である。
そのなかで、30代半ばの頃に飽きるほど聴いたのも、
その後、折にふれて聴くのも、結局同じもの。
なぜ、この盤を好むのか?
ま、理由はいろいろあるけれど、
そのピアノの音色が大きな理由のひとつであることは間違いない。

とにかく、ピアノが鋼鉄製の楽器なのだということがよく分かる。
といって、硬質で機械っぽいというわけではない。
温かみも深さも充分にある、その上でしなやかで強靱な芯を持っている。この音は実体を感じさせる凄さを持っている(と思う)。

この音の強靱さは、
やはりある程度のボリュームで聴かないと分からない。
大ボリュームで聴くということは、
装置の方もある程度のレベルが必要、ということでもある。

もっとも、私はオーディオマニアではないから、
自宅の装置は、ごく普通のコンポーネントである。
でも、その中心となるスピーカーを決める際には、
ショップに聞き慣れたCDを持参して試聴した。
このラフマニノフの二番も当然入っていた。
なにしろ冒頭の数秒を聴くだけで、
自分の好みに合うかどうか?すぐに分かるので便利なのである。
(一瞬で引き込む力、これがあるからフィギュアスケートでも
 よく使われる。あのダイジェストの仕方は気色悪いけれど)

それでも、自宅で満足のゆく音量でこの曲を聴くことはあまり無い。
仕事が忙しかったり、見たいテレビもあったり、
もちろん他に聴きたい音楽もあるから。

でも、無性に聴きたくなることもあるわけで、
そんなときは、最近では i Pod が活躍する。
この曲のスケールの大きさ、ピアノの重低音、オーケストラの厚み、、、
そういった諸々のミニチュア再生であることは承知の上で、
でも、これがけっこう聴ける。
耳にはよくないナァと思いながら、少しボリュームを上げてみる。
まぁ簡単にラフマニノフの陶酔境に入り込むには便利な道具である。

ラフマニノフに限らず、もちろん生演奏に勝るものは無い。
音だけについて考えてみても、
ピアノの重低音、オーケストラのコントラバスの圧力、
そういったものは、音というよりは空気の震えである。
極めつけの装置ならいざ知らず、
ホームユースのコンポーネントや、
ましてやi Pod から出てくる音は、所詮はイミテーション、
あるいは「なぞり」である。

その、イミテーション・サウンドを通して
それでも音楽の芯を掴めるのは、人の感覚の成せる技。
聴覚だけでなく、すべての感覚を動員して聞き取る能力。
人の能力は凄い!
もちろん、「生」を聴かないと、感覚の尺度も狂ってきそうだけれど。


私が良く聴く「二番」は:
ジーナ・バッカウアー(Pf)
アラン・ロンバール指揮ストラスブール管弦楽団の盤。
(ERATOレーベル)
LPは、もう30年以上も昔に買ったもの。
最近は、もっぱらCDで再発されたものを聴いている。

この春のこと、
かつて、父親のワガママに付き合わされて、
ほんとうに耳にタコができるほどに聴かされた娘が、
“あのラフマニノフ、聴きたいんだけど”と言ってきた。
i Pod Shuffle に入れてプレゼントした。
孫も同じ曲を耳タコになるまで聴かされるのだろうか?
いや、でもイヤフォンだからその心配は無い、、、


しかし、今日のこの記事、
これまでにも同じようなことを何度も書いてきた、ちょっと反省。


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のすけの母

生にまさるものはないですよね。
鍵盤に手を置く、その緊張感も、生では伝わってきます。
間違いもご愛敬。
それら全部ひっくるめて、生ならではのものってありますね。

ただ、悲しいかな、そんなに生は堪能できません。
それで、私だったらもっぱらCDを聴くことになります。
もうこれは、「生だったら」なんて考えることは許されません。
できないものはしょうがないので、今できることに感謝する他ありません。

ラフマニノフは、最近とんとご無沙汰です。
明日にでもまた聴いてみようと思います。
by のすけの母 (2007-07-06 23:30) 

e-g-g

◎テルの風景屋さん nice ! 、ありがとうございます。

◎のすけの母さん こんにちは
生が良い!とはいうものの、
私など、たまのコンサートで、
その演奏の良否をきちっと判断できるほどの耳を持ち合わせていません。
ま、
“なんとなくピンとこないな〜”
“とにかく今夜のコンサートは盛り上がった!”
せいぜい、こんなもんです。

CDは妙に分析的に聴きすぎたりもしますけど、
でも、生もCDも両方あって、
バランスがとれるのではないかな、と思います。
アレッ?と感じたところを、すぐに聞き直せたりするのは
CDじゃないと無理ですしね。

私もラフマニノフは久しぶりですよ。
いまの時期、ちょっと暑いです。

◎カフェオランジュさん お立ち寄り、ありがとうございます。
by e-g-g (2007-07-07 11:56) 

mamire

eguchiさま、昨日コメントを書いたあとで、
「もしかしたらお子さんもラフマニノフ好きでしょう?」
と聞きたくなりました。
自分の好みの曲は、やっぱり、幼少から聴き親しんできた曲だと思うの。
ある時代は、流行のものにも心がときめくけれど、一番音楽の欲しいときはなじみの曲なんです。
そして、今日の記事をよんで、
「あ~やっぱり」
と思いました。

ですから、小さいときから良い音楽に触れるのは、実技を習うより大切なことだと思います。
生演奏の醍醐味は、弦の音が重なるところかしら。
それと、体全体に振動が伝わるところかな。
by mamire (2007-07-07 17:21) 

barbie

前記事のコメントのお返事ありがとうございました。CD探してみます。最近生演奏を聴きに行くチャンスがなかなかありません。私のミミタコはラ・カンパネラでした。今聞くとあの頃の風景が目に浮かびます。
by barbie (2007-07-07 18:51) 

e-g-g

◎mamireさん こんばんは
ただただ、ワタシ自身が聴きたかったから、
来る日も来る日もいろんな音楽をかけていたのです。
情操教育なんていうことは、
これっぽちも考えませんでしたけれど、
やはりある程度の量を耳にすると、
子供の耳には残るようですね。

もちろん、ラフマニノフ以外もた〜くさん
ちゃんこ鍋のように聴いてましたから、
そういった音楽もモザイクのように
刷り込まれたかもしれません。。。
良い迷惑だったかな、、、

*
>それと、体全体に振動が伝わるところかな。
そうですね、生演奏の醍醐味ですね。
弦楽器のパートが重なって、
ときどきほんのちょっとずれたり、
それも生の楽しみです。
by e-g-g (2007-07-07 19:09) 

e-g-g

◎barbieさん
CDのほうは、あまり役立たずのコメントで、
ゴメンナサイです。
そういえば、ラ・カンパネッラも耳タコになりそうな有力曲ですね。
by e-g-g (2007-07-10 16:10) 

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