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心を刺激する音楽 ラフマニノフのチェロソナタ [聴く・クラシック音楽]

午前、仕事先に向かうクルマの中でNHK-FMをつけた。
あの懐かしい吉田秀和氏のしわがれた声が紹介していたのは、
ラフマニノフのチェロソナタ。

この曲が、ラフマニノフの室内楽の傑作といわれていても、
聴くのは初めてだった。
吉田氏の解説によると、ピアノコンチェルト第2番と同時期の作品で、
様式や旋律に共通するところが多いという。
たしかに、耳にたこができるほど聴いた2番のコンチェルトと
相通じる感じもする。
でも、そういった相似点よりも
独自の音楽として聴き応えがある作品とも思った。
できれば全曲を聴きたいと思ったが、直に目的地へ到着。
約束の時間も迫っていたので、曲の途中でオシマイ。
クルマのオーディオにも小さなモノでよいから、
録音機能があればよいのにと思う。

夕方、こんどは電車で都心の三番町へ向かう。
ラフマニノフはすっかり忘れて、
久しぶりに i Pod のイヤフォンを差し込むと、
ドヴォルザークの「新世界より」が飛び込んできた。
演奏は、ジョージ・セル指揮/クリーブランド管弦楽団。

もう30年以上、これまでに何回この演奏を聴いただろう。
今日、取り立ててこの演奏を聴かなくても良いのだけれど、
やっぱり聴いて安心という曲と演奏でもある。
渋谷駅の雑踏や地下鉄の騒音の中でも、
耳元で鳴る音は、まるで硬い鉛筆で描いた細密画のように
音楽のカタチをシャープに見せてくれる。いや聴かせてくれる。
この音の楽しみも音楽を聴く快感のひとつだ。

でも、その音の鳴る、ほんのわずか前に
すでに次の音は頭の中で鳴っている。
そう、聴き馴染んだ曲を聴くことは、
その紡ぎ出す音の連なりを追認しているのだ。
もちろん、そういう聴き方があっても良いと思っている。
これは耳のリラクゼーションなのだ。
心地よさに身をまかせ、慣れ親しんだメロディーをなぞる。
これも音楽の聴き方のひとつ。

と同時に、午前中に中途半端に終わってしまったラフマニノフも
未知の曲であるが故に、聴きたくなる。
音楽好きは心をほぐすマッサージと、
心を刺激する(ときには痛いほどの刺激も)音楽の
両方を求めているのだ、と思う。


nice!(7)  コメント(13) 
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カズ−

私にとっては中学生のときに音楽鑑賞(という名前の授業で、
学校の音楽室でクラシックのレコードをかけてくれる。)の際に
聞いたレコードを購入し、家で何度も聞いた曲が慣れ親しんだ
メロディーとなっています。
確かにリラックスしますよねぇ~♪
by カズ− (2007-07-04 12:28) 

e-g-g

◎カズーさん こんにちは
ずっと聞き慣れた音楽はカラダの一部、そんな感じになっていると思います。

ワタシは音楽鑑賞の時間に聞いたベートーヴェンの田園、それと学校の終礼に使われていたドヴォルザークの「家路」、
そんな曲を大人になってから、もういちどちゃんと聴いてみたい、というのが音楽に入り込むようになったきっかけです。

ともかく、
子供の頃に学校で聴いた(聴かされた?)音楽の影響は大きいですね〜
音楽といえば、笛吹童子、少年ジェットの主題歌くらいしか知らなかった時代ですから。
by e-g-g (2007-07-04 14:53) 

daland

eguchiさん。こんばんは。

久し振りにeguchiさんの「音楽論」(造語です)をお聞きしました。
共感しました!
「音楽を聴くこと」についていつも教えて頂いています。
CD買うばかりが「音楽を聴くこと」じゃないですね。
いけない。いけない。どうも「音楽を聴くこと」を見失ってしまいます。
by daland (2007-07-04 22:44) 

barbie

ラフマニノフ、特にピアノコンチェルトは大好きな曲の一つです。チェロソナタも聞いてみたいです。
どなたの演奏がいいでしょうかね。
もしお勧めが見つかりましたが教えてくださいね。
by barbie (2007-07-04 23:14) 

今日、NHK(TV)でも新世界が流れていました。たまに聞くといいなと僕でも思います。しかし、最近昔ほど音楽が楽しめなくなってきました。感性が鈍ってきたのでしょうか。eguchiさんの感受性は僕のそれとはまったく違いますね。
by (2007-07-05 00:48) 

e-g-g

◎ daland さん
音楽論などとは、、、
それにワタシは音楽について、
人様に教えるほどの知識も経験もありません。

気持ちの良いメロディー、
音響的な爽快感(へんな言い方ですが)、
演奏者、作曲家へのゴシップ的な興味、
ともかく音楽を聴く動機は、いろいろとありますよね。

もちろん、楽しく愉快であればそれでよい!
という聴き方をするときもあります。
たぶん、そんな時間の方が多いでしょう。
でも、けっして耳に心地良くはないけれど、
何かを訴えてくるもの、
そんな音楽もたくさんありますよね。

それから、主流にはなれなかったけれど、
豊かな音楽を感じる辺境や周縁の音楽。
そんな、まだ知らない音楽がこの地球上に
たくさんあるはず。。。

要するに欲張りなんです、ワタシは。
モネもゴッホも良いけれど、
ピカソのゲルニカはどんなことがあっても外せない。
遠藤周作のユーモア小説も面白い、
しかし「沈黙」も「海と毒薬」も無ければ困る。
いや、そんな有名どころだけでなく、
たぶん凄い表現というのは、きっとどこかに潜んでいる。

そういった「気になる」ものをずっと探しているんでしょうね。
この習癖は、たぶん死ぬまで変わらないでしょう。

レコード店でも、どの棚にも分類できないような
不思議な音楽を見つけるのが好きです。
ネット上では、なかなか難しいですけど。
by e-g-g (2007-07-05 17:12) 

e-g-g

◎ barbie さん
このFM放送の演奏者は、残念ながら聞き逃しました。
またCDもLPもワタシの棚には無し、、、
もし、この曲のCDを買うとしたら、
ダニール・シャフランかポール・トゥルトゥリエの盤を買うと思いますよ。理由はなぜ?と聞かれても困りますけど。。。
by e-g-g (2007-07-05 17:18) 

e-g-g

◎ akipon さん
音楽の感じ方は年齢とか環境によって
ものすごく変わると思いますよ。
感性は鈍くなっているのではなく、より磨かれているのです。
(と、思いこむことにしましょう)

「新世界より」は、私も一時期まったく聞きませんでした。
なんだか、こう、もっと難しい(難しそうな)曲ばかり
追いかけてましたね〜 ある時期は。
いまは、けっこう素直になんでも聞いてますよ。
by e-g-g (2007-07-05 17:23) 

mamire

ラフマニノフピアノコンチェルト第二番は、あこがれですね。
弾けもしないのに楽譜だけはしっかり持っています。
できそうなところだけちょっと・・・
でもエレクトーンではポップにアレンジされたものにチャレンジしました。

>心をほぐすマッサージと、
心を刺激する(ときには痛いほどの刺激も)音楽

同感です。
最近はリラックスするときにクラッシック。
心の発散は、自分で弾きこむ、に徹しています。
選ぶ曲は意図によって違いますね。
by mamire (2007-07-05 17:46) 

e-g-g

◎mamireさん
エレクトーンを弾かれるんですよね、
ラフマニノフの2番、ぜひモノにしてください。

30代半ばのある時期、
来る日も来る日もこの曲を聴き続けました。
何かに憑かれたように聴きましたね〜
(まだ小さかった娘や息子には、
 ずいぶんと迷惑をかけました)

私も音楽とは、いろんな付き合い方をしています。
さらっと気持ちよく聞くこともありますが、
実は、そういうときはあまりリラックスできません。
下手をすると、かえってイライラしたり。

しっかりと対峙するときが、いちばんリラックスできます。
これはエネルギーも要りますから、
ほんとのリラックスかどうか分かりません。
それに、そうそう毎日のようにというわけにもいきません。
ま、音楽とのこんな付き合い方は、
ちょっとひねくれている、ということ。。。

mamireさんのように楽器を弾く方は
音楽とのとっておきの付き合い方を
もうひとつ、持たれているんですね。
羨ましいです。
by e-g-g (2007-07-05 20:38) 

anan

ラフマニノフのピアノコンチェルトにあこがれて、40歳からピアノを始めました。
その後10年以上お稽古を続け、ラフマニノフどころか音階もたどたどしい有様。絶対に弾けるようにはならないことが、分かったのです。残念ですが…。2番より4番が好きです。4番が演奏会で弾かれることは、まずありませんね。CDを持っています。
by anan (2007-07-06 15:03) 

e-g-g

◎ananさん
ラフマニノフの4番は、ほとんど聴いてませ〜ん。
一度だけ、FM放送か何かで聴いたかな?という程度です。
ピアノは鋼鉄製の楽器、と2番を聴いていると思いますが、4番もやはりラフマニノフ節なのでしょうか。
大いに感心有りです。

人生はまだまだ長い!
ピアノ、がんばりましょ。
by e-g-g (2007-07-06 19:00) 

e-g-g

◎barbieさん こんばんは
ラ・カンパネッラですか〜
そういえば、この曲もミミタコ向きかもしれませんね。
なんだか変な言い方ですけど、
耳に残りやすい旋律とかリズムってあると思うんです。
いちどタコになったら、そうやすやすとは取れそうもない曲ですね。

ラフマニノフのチェロソナタは、
ワタシ自身もしっかり聴いていないので、
名前を挙げるのはどうなんでしょうね〜
実は、今日タワーレコードに行ったついでに
探すつもりだったんですが、
他のディスカウント盤のあれこれに目が行ってしまって、、、
by e-g-g (2007-07-07 19:19) 

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