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手を使おう [日々のデザイン]

 レイアウトがなかなか決まらない。基本的な構造に間違いはない、写真も商品名も社名もしかるべきところに納まっている。しかし、キャッチフレーズだけが、もうひとつしっくりとした位置、大きさに落ち着かない。



 ふと、付箋紙に書いたメモをペタッと貼ったようにしては?と思いつく。A4サイズのコピー用紙に4Bの鉛筆でフレーズを書き、カッターで切り抜く。付箋紙のように長方形がよいか、それとも他のカタチ?と思案しながら、ひとまずは長方形に切り、途中までできているレイアウトのプリントの上に置く。紙片を指先で動かすうちに、モニター上ではなかなか落ち着かなかった位置と大きさがスーッと決まってくる。
 なんともシンプルな作業である。でも、鉛筆でフレーズを書くときの文字の大きさ・太さ・行間、さらにカッターで切り抜くときの形の決め方、そんな些細なことに多くの「決め」が働く。もちろん紙片もバランスを見極めながら動かす。「決まった位置」に来れば指が自然に止まる。大袈裟に言えば、デザイン仕事でいちばん肝心な知恵やセンスがそこに集約されている。

 コンピュータでこの作業をすると、文字の大きさも太さも、そして“付箋紙のようなカタチ”も想定をはみ出すことがない。置く位置も任意に動かせるようでありながら、決してある種の枠の外にまでは広がらない。
 “なんとなく長方形?”ではなく、キチンとした長方形の指示をコンピューターは要求する。フリーな線で不定形を描けば済むではないか?という見方もあると思うが、それは違う。そこには不定形を作ろうという指示あるいは意図が前もってあるのだ。手書きの作業は、4つの直角をもつ長方形を描こうとしても不定形になってしまうかもしれない。しかし、その曖昧で中途半端な境目にこそ、ひょっとすると発見の芽が潜んでいるかもしれない。
 長方形ではなく正方形?いや台形?ひょっとすると円か?と切り抜く途中で考えることもできる。切り抜く前は思いつかなかったカタチが見つかる可能性を“手書きの作業”は秘めている。

 コンピューターのグラフィックソフトは、まだまだ人の手を超えられない。というよりはそもそも目的が違うのだ。いまのところは。
 デザインとは“発見”の連続である。その発見をなによりも大切にするならば、手書きのようなアナログ的作法の優位をもっと活かすべきである。コンピューターは効率よく定着作業をやってくれればよい、クラッシュせずに。

 レイアウトに詰まったら、コンピューターの電源を切ろう。そして、もっと手を使おう。その前に屋外へ出て新鮮な空気を吸ってみよう。新しい知恵が浮かんでくるかもしれない。


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コメント 22

カズ−

デザインの方面に才能はありませんが、よくわかる
お話です。
UNIの鉛筆懐かしいなぁ。
確か私が高校生のときに発売された記憶があります。
最初に使ったとき、書き味滑らかで驚きました。
by カズ− (2007-04-26 12:34) 

umi_umi

鉛筆の絵を見て思ったこと。
あたしは鉛筆が好きです。
シャープペンシルは、あまり好きじゃないな。
いっぱぃ書いて、減ったら削って・・・
これが、好きな理由です!
仕事量に応じて減り方も変わる、変わる(笑
by umi_umi (2007-04-26 18:06) 

mamire

私も、手書きが好きです。

ただの鉛筆から、はじめてuni鉛筆を手に入れたときの感動感触は今でも忘れられません。
なんという柔らかさ、色の濃さ。
特に気合を入れるときは、昔からUNIの鉛筆です。
デザインのことはまったく分からないのですが、やっぱり、黄金分割に落ち着くのでしょうか。
by mamire (2007-04-26 18:43) 

ミック

UNIの鉛筆、好きです。
特にB2以上が最高!
筆圧の強い私はHBだと、芯が折れてしまいます。
シャーペンもHBだと芯がポキポキ折れていきます。
その度に、心が焦って、ポキポキ折れます^^。
B2以上だと文字も絵も優しく描けますね^^♪
by ミック (2007-04-26 21:20) 

風

わかります! 私も装置の板金デザインをする時があるのですが、PCや
いきなり描く方法もなかなかシックリ来ないとき、パネル部品の大きさに
紙切り細工よろしく切り揃え、あとは決められた範囲内でいろいろ自由に
置き換えたり、数ミリ単位で寄せたり離したり・・・・そうしている内に「ここだ!」
という一瞬があるので、そこでテープ固定して寸法を得ます。
アナログ的ですが、確実です(*^^)v
by 風 (2007-04-26 21:52) 

Montego-Blue

こんばんは。
PCのようにundo効かない分、自由に描ける物もやっぱり緊張感があると思います。そこがまた良かったりもしませんか。
by Montego-Blue (2007-04-26 22:36) 

e-g-g

◎カズーさん
デザインは誰でもが持っている才能と思いますよ。料理の盛りつけなんて典型的ですね。子供の頃のコーリン鉛筆やトンボ鉛筆からuniになったときは、なんだか急に大人になったような偉くなったような、そんな気がしました。
by e-g-g (2007-04-26 22:39) 

e-g-g

◎海さん
「手を使おう」と言っていながら、鉛筆の使用量はあきらかに減ってますね。変わりにキーボードが黒っぽくなる、、、
by e-g-g (2007-04-26 22:39) 

e-g-g

◎ m a m i r e さん
uni の後に、少し高級版のHi-uniというシリーズが出ましたね。uniの1ダースに比べると、ケースが格好良かったです。
今日あたりの気分は、黄金分割より、すでに黄金週間です。
by e-g-g (2007-04-26 22:39) 

e-g-g

◎ミックさん
普通のメモ書きは2B、デザインのアイデアスケッチなどを描くときは4Bあたりを使ってます。uniに限らず粒子が細かく柔らかい鉛筆は気持ちの良いものですね。
by e-g-g (2007-04-26 22:40) 

e-g-g

◎風さん
そうですか〜、同じようなことをやっておられるのですね〜
分野は違っても、そういう話を聞くとすっごく興味が湧きます。
切り抜いた紙をあれこれ動かしていると、ある瞬間にパッと分かることがあるんですよね。何年やっても神秘的な瞬間です。きっと、指先と目と脳の往復運動がきれいに決まっているのでしょう。これはPC画面ではなかなか味わえません。素朴な方法ですけど奥が深いと思います。
貼って剥がせるテープ、ハサミかカッター、ごく普通の白い紙、そこそこの大きさのテーブルか白い壁、このあたりがあれば、相当のことができますね。
by e-g-g (2007-04-26 22:43) 

e-g-g

◎Montego-Blueさん
undo ができないと、自然と決断力が育ちます。これは、アナログ作業のいちばん優れている点でしょうね。PCの"undo"は決断力を鈍らせる要因のひとつと思います。
by e-g-g (2007-04-26 22:53) 

mio

PCに振り回されていた時、知り合いが「絵手紙」をくれました
その返事をPCで書こうとしましたが、頂いた物と不釣合い、私も絵を描くことにしました
久しぶりの絵はなかなか思うようにいかず、すぐPCに頼ろうとします
いろいろPCで試みますが、やっぱり面白みにかけます
結局、手書きでお返事したのですが、その時気が付きました
自分の気持ち、自分らしさはPCだけでは伝わらないと
それ以来、絵と習字を少しずつ始めました
まだまだ自分で納得のできるものは描けませんが、今の自分は反映されていると思います
そういえば、鉛筆を自分で削ることって少なくなりましたね
柔らかい鉛筆は芯を長めに削らないと、すぐまた削らなきゃいけなくなるんですよね
色鉛筆は今でも自分で削ってますよ
by mio (2007-04-26 22:57) 

kom

パソコンのグラフィックソフトって道具のひとつだと思うんですよね。
鉛筆か、筆か、ロットリングか、CADか、PhotoShopか、みたいな。必要に応じて使い分けるもの、な気がします。
で、この鉛筆は愛用しておりました。
ふふふ、今でも鉛筆はカッターで削ってますよ〜。
by kom (2007-04-26 23:04) 

e-g-g

◎mioさん
ひとふで書いたあるいは描いた瞬間からイメージがどんどん離れていく、、、描くのは難しいです。でも、描きながら少しずつイメージの再確認をする、この過程が“個”を浮かび上がらせるのでしょうね。パソコンにはできない技ですね。もちろんパソコンにはパソコン独自の領域もありますが。
ワタシは、鉛筆も色鉛筆も鉛筆削り機の使用者です。
by e-g-g (2007-04-26 23:34) 

e-g-g

◎komaさん
仰るようにグラフィックソフトは、たんなる道具です。ただ、他の道具とは比べものにならないほどの威力と便利さを持っています。個々のデザイナーも、業界も、その力に頼りきって効率の良さだけを追い求めると、その反動も大きい、と思うんですね。
一日中、モニターに張り付いているデザイナーが、マウス以外のモノを扱う機会はどんどん少なくなっています。相当に意識してかからないと、手は直ぐに萎えてしまいます。
鉛筆、筆、ロットリング、CAD、PhotoShop、、、これらを適宜使いこなせれば何の問題もないんですけどね、、、デザインの現場もけっこう深くて大きな問題を抱えているのですよ。
by e-g-g (2007-04-27 00:25) 

響

鉛筆は永遠だってことですね。
なんともシンプルな馴染み深い鉛筆です。
僕も絵を描くときはまずは鉛筆からですね。
まぁ、一生紹介することは無いですが(笑)
by (2007-04-27 11:47) 

e-g-g

◎響さん まいど
uniは発売から、もうすぐ50年だそうです。ロングセラーですね。いったい、これまでに何本のuniを使ったのか?これからもお世話になるんでしょうね。絵でも描きましょ
by e-g-g (2007-04-27 19:32) 

ポッチ

eguchi さん、こんばんは!
皆さん、鉛筆で盛り上がっていますねー。私も uni 愛用してます。写真のものよりワンランクお手頃なモデルですが。木のぬくもり、黒鉛の匂い、使命を終えたとき姿を消す潔さ・・・あと迷ったときに転がすには、やはり!ですよね。
私も新鮮な空気を思いっきり吸って、頭をスッキリさせよっと♪
by ポッチ (2007-04-27 23:08) 

e-g-g

◎ポッチさん 久しぶりです
う〜ん、インクの無くなったボールペンに比べると、鉛筆の潔さはたしかに際だちますね。でも、ちびたのも捨てがたく、ですけど。ところで「鉛筆」より「えんぴつ」ですね。コロコロッと ころがる えんぴつ
by e-g-g (2007-04-28 00:43) 

tak

なるほど。
ドラフターで図面を描くか、CADで描くか、
といった違いも、似たような感じなのかも
しれませんね。

最近のクルマのデザインって、どこかヘンだと
思うんです。3DのCADでかたちをつくって、
レンダリングソフトで色をつけたり、反射とか
映りこみの具合を見て、そのまま金型を起こして
製品をつくっているからなんでしょうね。

カラーペンでデザイン画を描いて、
クレイモデルを削ったり足したりして、
最後に実物大の模型をつくって...
といった工程って、意外と大事だったのかも
しれません。
そういった意味では、もう、117クーペとか
スカイラインのような名車って、出てこない
のかもしれませんね。
by tak (2007-05-04 00:45) 

e-g-g

◎takさん
クルマのデザインの現場は良く知りませんが、味気ないカタチが増えているとは思います。効率重視+経済性優先の結果なのでしょうか?もちろん工業生産品にはどちらも必須の要件ですが、行き過ぎると、、、
手作りの良さを再発掘する取り組みは、プロダクトに限らずデザイン全般に求められていると思います。その上でのCADやグラフィックソフトと思いますね〜
by e-g-g (2007-05-05 19:36) 

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