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イヤフォンの左右問題 [日々のデザイン]

 気持ちよく使っている i Pod Shuffle だが、イヤフォンの「L」「R」の表示の見えにくさには、いつもイライラする。
 この表示は、もう少し見やすく分かりやすくすべきである。白い本体に淡いグレーの細い書体では、視力に問題があると見えにくい。最低限、濃いめの色、あるいは左右で色を変えるなどの工夫をすべきだろう。


 さらに言えば、この表示では目の不自由な人にはまったく判別のしようがない。もっとも、これは他の製品でも事情は変わらないだろう。およそヘッドフォンなどの左右表示は、あくまでも「見える人」を対象としている。たとえば全盲の人など、いったいどうやって識別しているのだろう?この問題はたとえ「見やすい表示」にしても解決にはならない。(たぶん探せば、そういった配慮がされている製品もあるとは思うが)
 適当に耳に付けて、ファーストヴァイオリンの音が右から聞こえて初めて間違いに気付くというのは、なんともスマートではない。(通常のオーケストラ配置ではファーストバイオリンは向かって左側に位置する)

 シャンプーとリンスの容器を区別するため、今ではおおかたのシャンプーボトルにギザギザがついている。シャンプーの時は健常者でも目をつぶることが多い。そこで無用な間違いを避けるための“触っただけで分かる”工夫である。障害者に優しいデザインは健常者にも優しいのである。

 さてイヤフォンの左右識別、できればこのシャンプーボトルのように左右どちらかに小さなポッチを付ければ済む。触っただけでおっコレは左だ、と分かるようにすればよいのである。暗いところでも手探りでも間違えなくなる。もちろん、その突起を作るためには、新たに成型用の型を起こすといったコストがかかる。できればメーカー努力で吸収してもらいたいが、仮にいくらかの価格アップになっても、それが正統な理由ならば、受け入れられるだろう。

 ついでに書くと、本体底にある二つのスイッチも判別しにくい。ひとつは電源のオンオフ用、もう片方は通常の演奏とシャッフル演奏の切替用。これがどちらも同じ大きさのため、また対称関係に配置されているため、間違えやすい。これも、工夫次第でもっと使いやすくなるはずである。以前の記事で書いた i Pod Shuffle の「読めない説明書」と合わせて、解決すべき点と思う。

 アップル社は、かつてコンピューターの世界にGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)という素晴らしい概念を持ち込んだ。その革新があったからこその今日のパソコンである。そして少しでも分かりやすいインターフェース作りの理想があったはずである。その良き伝統を今の製品にも可能な限り反映すべきと思う。

 i Pod 製品群の本体は黄金比をベースにデザインされている(Shuffle は微妙に違うようだが)。見た目や、持った手応えといったものはかなり完成度が高い。それと、Shuffle の円形操作ボタンも、それなりに練られたデザインだ。
 だからこそ、もっと細かいところにまで配慮の行き届いたデザインをして欲しいと思う。そういった姿勢から生まれた製品は、企業にとっても大きなデザイン資産になるし、なにより視覚障害者にも利用者が増えれば、売上げももっと伸びるだろう。


 この写真を撮ったあとに、「L」の方にサインペンでラインを描いた。格好は良くないが、分からなくてイライラするよりはマシである


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mio

なるほど、これでは分りませんね
色、形ともにシンプルできれいなのに・・・
私なら多分、どちらかにドリルで貫通しない程度に穴明けて、突起を付けるでしょうね(無駄に工作好きですから)
私はご存じの通り両手を使いますから、右左の区別が今一つ認識できません
車のルームミラーには「右」「左」とシールが貼ってあります
by mio (2007-02-26 22:08) 

のすけの母

i pod を持っていない私は、「ふ~ん、そうなっているんだ!」と思いながら、いつも読ませていただいております。

>障害者に優しいデザインは健常者にも優しい

仰るとおりだと思います。
触っただけで左(あるいは右)とわかることは、私たちにとってもありがたいことだと思います。
ほんの少し気をまわせば可能なことのように思えますが、そのほんの少しが難しいのかもしれませんね。
by のすけの母 (2007-02-26 23:09) 

e-g-g

◎mioさん こんばんは
相当に小さなドリルが必要ですよ。でも、mioさんなら・・・。ワタシはお手軽にサインペン、触って分かるようにするなら赤い糸でもグルグルですね、きっと。
両手が使えると、かえって左右の認識が難しくなるということですか?ちょっとハテナです。こんど機会があったらおしえてください。

◎のすけの母さま こんばんは
たとえば、携帯電話の「5」のボタンについている小さなポッチ。ポッチのためだけに金型を作ったらコストアップになるから出来ない!という時代もあったんです。今は、ほぼ付いてますけれど。
たとえば、宅急便の不在時配達の通知にある横の切れ込みは、ヤマト運輸の視覚に障害のある社員の発案です。
みんなの思いを形に出来るかどうか?企業もそういったことが評価される時代に徐々になってきたと思います。
by e-g-g (2007-02-26 23:30) 

Montego-Blue

こんばんは。
なるほど、これは判りませんね。
そういえば、何処かのシャンプーの「ぽっち」を思い出しました。
シャンプーの時は目を開けられませんから、リンスとシャンプーの区別をつけるのにかなり判りやすかったモノがありましたね。
このようなものにも適用してくれればと願います。
by Montego-Blue (2007-02-26 23:38) 

カズ−

私は外ではSHUREのインナーイヤータイプのヘッドフォンを使って
います。
現行品ではなく古いタイプですが、右(R)側は胴体の半分が黒く
ペイントされていて、とても解りやすいです。
by カズ− (2007-02-27 00:22) 

umi_umi

思います。見えにくい!だいたいこんな色じゃ・・・
シャンプーのボトル、昔はシャンプー・リンスの区別を色でしてたような。
でも、考えてみれば目を開けられない状態にあるから・・・(笑
今は手で触ってみればすぐわかるようになってますね。
そう考えると・・・ この判別考えた人って・・・ かなり古い?(爆
by umi_umi (2007-02-27 09:29) 

耳の穴の形がが前方と後方では非対称なので、右耳用と左耳用と形自体を変えれば、良いと思います。
インナータイプなら別ですけど、その場合はコードの出口を前方に向けるとか、すれば、違和感で、見なくても左右がわかると思います。
by (2007-02-27 09:36) 

e-g-g

◎Montego-Blueさん おはようございます
工夫のしようでまだまだ使いやすくなるものって、いっぱいあると思います。モノヅクリにはすぐにコストという問題がつきまといますけど、やはり優先順位としては「使いやすさ」と思います。

◎カズーさん こんにちは
SHUREのやりかたは真っ当と思います。ユーザーに無用なストレスを与えないのがデザインの大原則と思うんですけど、i Pod のは、、、

◎海さん こんちはです
この表示、写真ではけっこう見えますけれど、少しでも暗いところや夕方になるとダメです、ミエマセン。
シャンプーとリンスのボトルの区別はバリアフリーデザイン、ユニバーサルデザインの典型的な例ですね。他にも探すと「地道」な努力ってけっこうあるんですけど、アップルも少しはそっちにも気を使って欲しいな、と。

◎月光さん コンニチハ
実は、このイヤフォンもコードの出口のパイプ位置はずれています。でも、ごくわずかなズレのためなかなか認識できません。パッと見ると円の中心から出ているように見えます。あと1ミリでもずらすと、かなり分かりやすくなると思いますね。
この左右の違いは設計図の上では、あきらかに分かるでしょう。でも、実際の使用場面では、いつも左右をそれも「正面図」の方向からきちんと見比べるなんていうことはしませんよね。実際にダミーを作って、いろんな場面を想定してみればすぐに検証できるはずなんですけどね。

写真のものは2代目です。(付属で付いてきたものはどこかで紛失)。思い切って「エリモティックリサーチ」などの高評価のものにしようと思ったんですけどね、「標準仕様」の音のバランスもなかなか良いので、、、
by e-g-g (2007-02-27 11:11) 

響

シンプルなデザインを追求しすぎてますね。
eguchiさんのアイデア、ナイスです。
by (2007-02-27 18:36) 

mio

説明不足でしたね、ごめんなさい
そうなんです
日常的に両手を使ってますと、あまり左右を意識しなくていいんですね
例えば字を書くのは右、カッターは左、線を引いたり絵を描くのは両手、ボールは左でないと投げられませんが、バットは左右どちらでもといった具合
車の場合はそういう訳にはいきません
昔は助手席のナビゲーターの「右に曲がれ、左に曲がれ」がすぐに判断できず、よく曲がり損ねました
今はカーナビの指示に迷うため
ちなみに私は0.5ミリのドリル刃所有、ピンバイスでコリコリと(笑)
by mio (2007-02-27 21:29) 

e-g-g

◎響さん こんばんは
i Pod は、いや他のプレーヤーもですけど、音楽を聴くだけでなくオーディオブックや、その他諸々の耳から入る情報のコントローラーにもなるんですよね。アップルでいえば Pod Cast がそうですけど、これは上手く使えれば視覚障害の人達にも、かなりのメリットが生まれるはずです。そういう明るい未来?もあるのに、目前の見た目のシンプルさだけを追求したようなデザインというのは、やっぱりいただけないですね。
Simple is Beautiful を信奉しすぎ?ですかね。
by e-g-g (2007-02-27 21:55) 

e-g-g

◎mio さん わざわざ ありがとうさんです
それにしても器用というか、スゴイですね〜 私は左はまったくダメです。左右どちらでも絵が描けたら、デザイン仕事ももっとはかどるのに、、、あっ、でも今の時代なら左右どちらでもマウスを操る!ですね。
「右に曲がれ、左に曲がれ」は、良く間違えますよ。咄嗟のときに限って起きます。脳の中でナニかが上手く機能してないんでしょう、きっと。
0.5ミリのドリルですか、、、私の道具箱には2ミリくらいまでは確かありましたけど、、、0.5ミリのドリルの刃でいったいナニを、、、あとは無言、、、
by e-g-g (2007-02-27 22:06) 

ポッチ

eguchi さん、こんばんは。
このたびは私の名前をアピールしてくださって、、おかげでアクセス数が・・・なんて(笑)。

>障害者に優しいデザインは健常者にも優しい
のすけの母さんと同じところに反応しました。本当にその通りですよね。

デザインと実用性。デザイナーにとって難しい問題なのでしょうが、商品である以上、作り手の自己満足で終わってはならないでしょう。それは“妥協”とは違いますよね。実用性が新たなデザインを生むこともあるかもしれないし。
i Pod Shuffle のイヤフォン、今後どう変身するか楽しみに見守りたいと思います。
by ポッチ (2007-02-28 03:24) 

e-g-g

◎ポッチさん こんにちは アクセスは増えましたか〜?
デザインというのは、巾の広い概念ですよね。限りなくアートに近いもの(たとえば一見しただけではナニに使うのかも分からないような)から、きわめて実用的なものまで、普段は何気なく十把一絡げにデザインと呼んでしまっています。
その境目はすごく微妙ですけれど、少なくとも道具性の高いものは、まず使いやすさが大命題ですね。そこを解決して初めてデザインといえると思います。デザインはたんなる装飾ではありませんからね。

ま、機能は満たしているんだから見た目はそこそこでもいいだろう、というのもいただけませんけど。
by e-g-g (2007-02-28 16:49) 

narkejp

私の祖母は全盲でしたが、カセットテープで演歌を聞くのが大好きでした。カセットテープにA面とB面の区別が手触りでわかるようになっており、それを教えたら、だいぶ喜んでいました。カセットテープを菓子箱に順番に並べ、どのテープに何の歌が入っているか、完璧に記憶していました。取り出したら、必ず元の場所に戻す、という方法で、ライブラリ化していましたね。カセットテープのA面・B面を区別するボッチは、間違いなく祖母の生活の楽しみを支えたと思います。
by narkejp (2007-02-28 19:25) 

e-g-g

◎narkejp さん 貴重なコメントをありがとうございます。
たしかにカセットテープはいろいろと工夫されていましたね。初期の頃から相当に長い間は「ネジ止め」の穴で分かったと思います(穴のある方が「A」ですね)。また後期になってネジ止めではなく圧着?になると、「A」「B」の表示がエンボス加工(押し出し加工)になりましたが、A面中心の凹みは、やはり大事な識別の機能があったと思います。

もし目が見えなかったら、もしメガネ無しでは見えなかったら、もし指先が不自由だったら、そういった状況も視野に入れるとデザインの意味合いや働きはずいぶんと変わります。専門的な勉強も必要ですけど、まずは人のことを良く考えるところからはじまるのでしょう。

カセットテープの扱いやすさ、お祖母様の楽しみを確実に増やしたのですから、これはやはりすごいことと思います。道具のデザインはそうであって欲しいな、と思います。
by e-g-g (2007-02-28 20:47) 

mykie

こんばんは。
うーん、最近のAppleはファッション>UIという方向性のような気がします。
UIって使わないとわからないですし、ファッション性を追求した方が収益的には良いのかも知れないですね。

昔と違って一つのモノを長く愛用する、という時代では無くなってきて、製品の市場における寿命もどんどん短くなって…。入れ替わりのサイクルがどんどん短くなってきている事も、ファッション性重視の方向に拍車をかけているような気もします。

もう自分が使っているiPod miniは市場から消えてしまいました。バッテリもそろそろ寿命のようです。
買い替え時、って事なんでしょうか。
by mykie (2007-03-01 01:33) 

e-g-g

◎mykie さん コメント、ありがとうございます。
売るためのファッション性の強調は、メーカーにとって媚薬のようなものですね。でも、良く効く薬は副作用もあります。道具のデザインは、もちろん美しくて楽しい方が良いですが、それとひき替えに不便さを強いるようなら、いつか強烈なしっぺ返しもある、と気付くべきでしょうね。今回話題にした「左右識別」や「読める説明書」などは、さほど難しい議論をせずとも取り組めることですから、なんとかして欲しいものと思います。そういう細かいことの積み重ねが、企業のデザインポリシーにつながっていくと思うんですけれど。
by e-g-g (2007-03-01 18:26) 

mamire

便利さは、不便を感じて分かるものなのでしょう。
不便を感じないユーザーが多いのかな?
それとも、おしゃれのためには、少しの不便なんて、なんのそのかな?
近所迷惑にならないように、エレクトーンの練習はヘッドフォンですが、RとLはやっぱり見にくいです。
ぽちあるいは、ぎざぎざのアイディアはすごくいいと思います。
by mamire (2007-03-01 20:28) 

e-g-g

◎ m a m i r e さん
ワタシも若い頃は少々不便でも格好良い(と思いこんでいた)ものをけっこう使ってました。でも、やっぱり無用なイライラはいやですね。(歳のせいもある?でしょう。きっと)
エレクトーンを弾くときは、すぐに音楽に入り込みたいですよね。そんなときにR・Lでまごつくのは、やはりバッド・デザインと思います。
たとえば、目の見える人間は見えない状況をなかなか想像できませんよね。だからこそ、できるだけ多くの試行や検討を重ねて、少しでも使いやすいものをデザインして欲しいと思うのです。
by e-g-g (2007-03-01 20:59) 

barbie

ネイルアート用のお花のシールをちょこっと貼りました。
一枚送りましょうか(笑)
by barbie (2007-03-06 13:36) 

e-g-g

◎barbie さん コンニチハ
おぉ、ネイルアート用のシールですか、グッドですね。アップルも、そういうちょっとお洒落で気の効いたアイデアを同梱すれば良いのに、って思います。
by e-g-g (2007-03-06 15:42) 

tak

私もイヤホンの右と左は、神経質なんです。
で、Lがわにメタルテープを貼ってます。
by tak (2007-03-09 23:09) 

e-g-g

◎takさん
おっ、テープですか。みなさん思い思いに工夫してるようですね。ワタシはサインペンで塗っただけなので「触れば分かる」という根本解決にはいたってません。
by e-g-g (2007-03-10 00:31) 

サザン

100円ショップで売ってる極小のカラーシールを貼ってます。
by サザン (2011-08-04 22:54) 

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