SSブログ

卒業制作展 [日々のデザイン]

 この時期、美大やデザイン学校では卒業制作展が開かれる。桑沢デザイン研究所を卒業してから、かれこれ36年(いや37年?)。この十年ほどは卒業制作展をちゃんと見るようにしている。若くて勢いのあるデザイナー(の卵)に、ひょっとしたら出会えるかもしれない、という期待があるから。



 写真は、今回の展示でいちばん目についた(あくまでも私の目)作品。タイトルは『消費と私』。割り箸でつくられた「服」を作者自身が着ている。体を動かすと密度濃く貼られた割り箸が、まるで動物の体毛のように、生き物のように動く。服とは何か?包むとはどういうことか?を見るものに強烈に問いかけてくる。コンセプトの的確さと表現技術が見事にバランスした優れた作品である。

 世の中に出てすぐに役に立つ職能教育を優先するか、あくまでも表現者としての基礎素養を養うのか?なかなか難しい問題であるが、私は後者の立場。若いときから、仕事の手際だけがそこそこに上手くなっても多寡がしれている。デザインとは何かを、ずっと問い続けるエネルギーを持ち続けて欲しい。その“問い続ける技術”を教えるのがデザイン学校の基本命題と思う。

 デザイン学校生も、卒業制作展が終わると4月からは社会人。また、新しいライバルがデビューする。


nice!(9)  コメント(14) 
共通テーマ:アート

nice! 9

コメント 14

おはようございます!
新しいライバルが出る!この言葉、すごい!
eguchiさんの探究心の心意気が感じられます(*^_^*)
学者型や政治家的新社会人がでるのならまだ良いですが、今はどちらも無いですね。
でも、その業界が廃れないのは、よき指導者が存在するからですね。きっと。
by (2007-02-25 09:36) 

Montego-Blue

こんばんは。
面白そうなパフォーマンスですね。動きによって割り箸がバサバサ動くのでしょうかね。そういえば割り箸って何処の産地が多いのでしょうか。
4月から新社会人が参戦してきますね~。
by Montego-Blue (2007-02-25 18:27) 

e-g-g

◎Montego-Blueさん こんにちは
動きに連れて音が出ます。それが、けっこう優しい感じの微妙な音で、ふと「衣擦れ」といった古い言葉を思い出しました。いつ動くのだろう?どんな風になるんだろう?と見る側に素直な期待感を持たせるパフォーマンスでした。
by e-g-g (2007-02-25 18:45) 

e-g-g

◎月光さん コメント、ありがとうございます。
最後の一行は決め過ぎかな?とも思いましたけれど、でも、けっこう実感です。
ヴェテランは持っている引き出しの数も多いです。だからといって、いつも新人君を上まわるアイデアが出せるわけでもありません。横一線の関係です。
良いライバルがいれば、自分の能力もより高められますよね。だから逆説的ですけど、「新しいライバルを待つ」というのは、本質的には自分のためでもあるのですね。
by e-g-g (2007-02-25 18:48) 

mykie

こんばんは。
確かにライバルが増えちゃうんですよね。若い人のセンスを見せつけられたりすると、ちょっと背筋が寒くなると同時に、くそー負けてられんな、と思います。
学生の製作物ってあまり縛られてないせいか、発想が自由な作品が多いように感じます。
by mykie (2007-02-25 21:46) 

mio

「仕事の手際だけがそこそこに上手くなっても多寡がしれている」
これは私のような仕事(福祉関係)でも言えることですね
私はどちらかというと「理屈、技術」で仕事をしがち、あしらいがうまいだけでは根本的な解決にはつながらない、対象者を受け止める、受け入れる『覚悟』が大切といつも肝に銘じています
時々、感性で仕事をし、人をひきつける「天才」がいます
この人たちが理論と技術を身に付けたら、私何ぞは到底かなわないと思うのですが、「天は二物を与えず」の場合が多のが現状
それと昨今の福祉業界は、この「天才」が働きにくい状況が続いています
原因は介護保険法と、障害者自立支援法の施行
福祉サービスを利用される方達のためにも、「天才」が働き続けられる法改正を望んでいるのですが・・・

(なんだか、訳の分からないグチになっちゃいましたね。聞き流して下さい)
by mio (2007-02-25 22:22) 

kom

eguchiさん、桑沢のご出身だったのですねー。
「作者自身が着ている」ということは、作者も展示されてるですね。
うーん、自分を展示してしまうとは、なんて素敵な発想でしょう。
本人がいないとこの作品がなりたたないのは、タイトルからもわかりますね。自分も刺激を受けに行きたくなりました。
by kom (2007-02-25 23:23) 

e-g-g

◎mykieさん こんばんは
若い人に限らず、とにかくたくさんの人を知るべきでしょうね。違うキャラクターとぶつかり合うことで自分も伸びていくわけですからね。
ただ、ある程度ヴェテランになってくると、若い人達を上手くディレクションするという役目も負ってきますね。教えつつ、競争、なかなかスリリングです。

◎mioさ〜ん むっずかしー
団塊の世代としては、のっぴきならない状況が目の前の「福祉」です。そういう個人的事情はさしおいても、この国の福祉行政がとんでもない問題を抱えていることはたしか、、、なこと。さぁ、どうする、、、もっと勉強せにゃ!
人を惹きつける力はたしかに天与と思います。努力して身に付くものではないですね。要は、自覚でしょうね。才気煥発天才型も努力一筋秀才型も、いかに己を知るか???で、これが実に難しい、、、人間の一生って、その確認のためにあるような。。。

“あしらいがうまいだけでは根本的な解決にはつながらない、対象者を受け止める、受け入れる『覚悟』が大切といつも肝に銘じています”、これ、デザインの極意でもあります。

◎komaさん こんばんは
ハイ、桑沢です。大昔ですけど
割り箸とはいえ、あれだけの数になると相当の重さと思います。作者は女子学生でしたが汗だくで大変そうでした。でも、自分で考え、作り、演じたものが人の目を惹きつける、このダイナミズムの体験は、ずっと忘れないでしょう。
実は、この専攻クラスは8人ほどの規模です。他の学生の作品もそれぞれレベルの高さを保っていまして、教える側の質の高さも感じました。
by e-g-g (2007-02-25 23:50) 

東雲

eguchiさん こんにちは。
この写真を見た瞬間「綺麗!」って思い
それが 割り箸だと知ってビックリ! そして改めて「美しい」と思いました。
若い人に限らず センス(生き方)の良い人、感性の豊な人に出会うとやっぱり惹きつけられ、羨ましくも思えます。
外に出る機会が少ない私ですが こうしてブログを通じてでも色々な方々から
様々な刺激を受けつつ すこ~しずつでも自分自身を良い方向へ持って行けたら、と思う毎日です。
割り箸って“吉野の割り箸”が 有名だと思いますが。
奈良に住んでいた頃 PTAの社会見学で 吉野の和紙や割り箸作りを見に行った事があります。
by 東雲 (2007-02-26 12:29) 

e-g-g

◎東雲さん コメント、ありがとうございます。
この作品、割り箸が動きに連れて何ともいえない良い音を出すのです。
見た目の不思議感、動きそうという予感、衣擦れという言葉を思い出させるサラサラと乾いた音、、、そんなすべてが濃密な気配を感じさせていました。消費のような小難しいテーマを、気配で感じさせる、かなり良くできた作品と思いました。そのセンスを、私も美しいと感じました。
作者の学生はファッションメーカーへの就職も決まっているそうです。きっと、いろんなことにぶつかるでしょうけれど、ものごとをピュアに見つめる態度は失って欲しくないな、と思います。

吉野の割り箸って有名なんですか、知りませんでした。環境の問題、食生活のスタイル、、、割り箸もちょっとつつくといろんな問題が見えてきますよね。
奈良にお住まいだったんですね〜 良いですね〜 ともかく奥行きを感じるところでしょうね、ずっと住んだら感覚も変わりそうです。
by e-g-g (2007-02-26 16:21) 

mamire

きれいだなぁって思ってみたら、割り箸だったのですね。
一つ一つをどうやってつけたのかしら。
割り箸は小学校でも普通に教材として使うので、若い人が結びつけるのは、考えられなくもないのですが、作者の主張と一致させるのは流石ですね。
最近は、給食もフォークから箸になりました。
by mamire (2007-03-01 20:38) 

e-g-g

◎ m a m i r e さん はようございます
作品説明の素材には「割り箸・バイアステープ」とありますが、さてどうやってつけたのか?ともかく、そうとうの時間はかかったでしょうね〜
この作品を見ていて、人って一生にうちにいったいどのくらいの割り箸を使うんだろう?と考えてしまいました。作者の「消費と私」というテーマに見事にはまったわけですね。:-)
by e-g-g (2007-03-02 11:37) 

tak

ははあ、なかなかユニークな“展示”ですね。
私は思わず「ナマハゲ」を連想してしまいました。
クリエイティブであるためには、常に前衛的でないと
いけないのですね。
by tak (2007-03-09 23:12) 

e-g-g

◎takさん
ワタシは熊、アライグマ、オオアリクイといった動物を連想しました。そういった連想を引きだすだけでも、半分は成功した作品と思います。
by e-g-g (2007-03-10 00:34) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。