SSブログ

街の水辺 [街の表情・ほぼ東京]

 家の近くを目黒川が流れている。いちばん手頃な散歩コースだ。下流へ向かうと、目黒、五反田へ。上流は、下北沢までが私の散歩コース。

 その上流方向は世田谷区の三宿で、北沢川と烏山川に分かれる。このふたつの川は、江戸時代に下北沢村を支えた川だったという。かつてはきっと長閑な農村の小川だったのだろう。その小川も高度成長期の水質汚染のため、ほとんどが暗渠化された。その暗渠の上に今は人工的に作られた「せせらぎ」(せせらぎ復活事業)が流れている。その「せせらぎ」を流れる水は、新宿にある落合水再生センターで高度処理をされた下水である。目黒川の流れも大部分は同じである。


 北沢川と烏山川に人工的に作られたせせらぎは、それぞれ「北沢川緑道」「烏山川緑道」として整備されている。「せせらぎ復活事業」以前からあった木々も多く、事業以後に植えられた花々や植物とも次第に調和してきている。桜の季節は人出も多い。流れの水深が浅く至るところに堰があるため、水中の生き物は少ない。それでもメダカ、ザリガニは見かける。あとは生命力旺盛なコイ。カモ、コサギなど、野鳥も見かける。ともかく暗渠のままの無味乾燥さは、このせせらぎのおかげで一変する。四季を通して季節を感じられる、街中の貴重な潤いの場である。

 ただ、この「せせらぎ」はいまのところ世田谷区内のみの事業。国道246号線の池尻付近にある目黒区との境で終わっている。画像は、世田谷区側から下流方向を見たもの。奥に見えるのは首都高速3号線の高架。

 人工的にせよ、ここまで楚々と流れてきたせせらぎは唐突にコンクリートで遮られ、また地下に潜っていく。その先は目黒区が管理する駐輪場。なんとも今日的かつ都市的な光景である。ちなみに、この「終点」から国道246号まではほんの100メートルほど。その先の目黒川は三方囲みの深い川になっているので、せせらぎ化は無理。だから、伸ばしても僅かなものだ。それにしてもこの光景を見れば、なぜこんなところで「せせらぎ」を止めてしまうのか、と誰しも思うだろう。駐輪場利用者の便も考えなければならないが、やはり無粋である。


nice!(9)  コメント(15) 
共通テーマ:地域

nice! 9

コメント 15

Montego-Blue

こんばんは。
あらー、246の脇にこんなところもあるのですね。
環八の下の等々力渓谷もそうですが、道路の下には小さな自然があるんだなぁと思いました。こういうところは徒歩でなければ見つけること出来ませんよね。途中で切れてるのは残念ですが、何も無いよりこういうものがあることにnice!です。
by Montego-Blue (2007-01-21 20:56) 

kokudoh

なんと。
区の境で、きれーに終わっているんですねー。
自治体ごとの独自性もここまでくると、
一種のセクショナリズムのようなものを
感じますね。
「お隣の世田谷区のやってることなんか、
ウチは一切、関知しないよ。」と。
そういった強い意志を感じさせる風景です。
by kokudoh (2007-01-21 21:24) 

kom

玉川上水や千川上水も下水処理水をつかって復活したものなんです。もともとが人工の水路だったので、「川」じゃないのかもしれませんが。
人間の都合で作られたり埋められたり復活させられたり・・・調べてみると興味深いです。
人の手で作られているものではあるけれど、植物や小動物が暮らす環境になっていますよね。
by kom (2007-01-21 21:56) 

e-g-g

◎Montego-Blueさん こんばんは
 いちど埋めてしまった川を、その雰囲気だけでも地上に蘇らせる。人間の知恵の浅さを象徴しているとも思いますが、でも、良いものは良いです。
 日本橋あたりの高速道路を地下に埋めてしまえ!などと同じように、壮大な授業料を払ってやっと分かることなのでしょうか?

◎takさん お久しぶりです
 自治体のセクショナリズム的対応も、ここをしみじみ見ていると、なんだか笑えます。世田谷にあんなふうにやられてしまったら、、、と思ったかどうか知りませんが、目黒区も手を付けるそうです。

◎komaさん こんばんは
 “下水処理水川”はけっこうあちらこちらにあるんですね。あんなものは本来の自然じゃない!という意見もあるようです。でも、komaさんも書かれているように、生き物が生きていける環境が身近にあるのはうれしいものです。
by e-g-g (2007-01-21 22:59) 

mio

休耕田は5年も立つと草むらになり、再び田んぼにするには2年はかかります
バブルの頃に開発した別荘地も、すでに自然に還りつつあります
都会でもそれなりに人が意識すればそれなりになるといった所でしょうか
しかし、ないよりあった方が、人にも動物にも植物にもいいんでしょうね
しかし、川が途中で切れる場面、いかにも不自然ですね
by mio (2007-01-21 23:27) 

e-g-g

◎mioさん こんばんは
 ふだん“自然”と呼んでいるところのほとんどは、人の手が入っていますよね。とくに都市部では自然は人がつくるものと思います。そのためにはいろんな知恵がいるのでしょうね。少しでも自然らしくしようとしたら、却って不自然さが目立ってしまった、ということにならないためにも。
by e-g-g (2007-01-22 00:10) 

東雲

こんにちは。
>四季を通して季節を感じられる、街中の貴重な潤いの場

そういう場所が どんどん増えて行く事を願いますが
果たしてどうなって行くでしょうか。
娘の通う高校には ビオトープがあり メダカなどの希少な魚が育っていて
夏になるとホタルも飛び交います。
昔は 当たり前の事だったのですがね...。
by 東雲 (2007-01-22 13:15) 

umi_umi

都会の中にも、こんなところってあるんですね。
あたしのとこは自然だらけですが(汗
白鷺ですか? 真っ白で綺麗です(・∀・)
by umi_umi (2007-01-22 16:25) 

e-g-g

◎東雲さん こんにちは
 たとえ処理された下水でも、たとえ人工的につくられた場所でも、そこに集まってくる生き物の生命力は凄いな、と思います。私は詳しくないのですが、ビオトープ関連の研究も進んでいるのでしょうね。

◎海さん こんにちは
 白いのはコサギです。都内でも水場でときどき見かけます。数年前に自宅の前で初めて見たときにびっくりして図鑑で調べました。
 このコサギ君からわずか200メートルくらいのところを、首都高速が走っているんですよね〜 それでも、めげずに一生懸命に水苔をついばんでいるコサギ君、けなげであります。。。
by e-g-g (2007-01-22 18:19) 

久しぶりに東京に行きましたが、大阪と違って、自然との共存できている割合は多いですね。
大岡山にいたときは夏でも涼しかった記憶があります。
ただ、都会部分と下町部分がはっきり分かれているのは東京だけですね。
by (2007-01-22 18:50) 

e-g-g

◎月光さん コンバンハです
 土曜日はかなり接近遭遇していたのですよね???
都内は、場所によって意外と気候?が違いますね。練馬あたりは冬の気温も低いです。大岡山のある目黒区はけっこう海も近いですから、しのぎやすい地域かと思います。
 下町と山の手ですが、単純に江戸城から見た土地の高低から付いた呼び方とか。はじめはそうであっても、やはり土地柄の違いは出ますね。といっても山の手の方はあまり特色もありませんけれど。(都会部分を勝手に「山の手」と解釈してしまいましたが、違ったかな?)
by e-g-g (2007-01-22 19:26) 

mykie

こんばんは。
こんなふうに切ってしまうのって、何だかもったいないですね。
無駄の無い効率的な都市計画も結構ですが、少しは「あそび」の部分も残しておいて欲しいと個人的には思います。
by mykie (2007-01-23 01:30) 

e-g-g

◎mykieさん コメント、ありがとうございます
 お役所仕事の典型、もう少し気を使ってくれればと思いますね〜。
 駅、道路、建築空間など公共的な施設の設計やデザインは、20年とか30年というスパンで見れば、ずいぶんと良くなった思います。経済成長一点張りで、見た目は二の次といった時代に比べれば、だいぶマシになってきました。高速道路のSAなども、けっこう気遣いのあとが見られますよね。
 そういった全体のアベレージが上がるのが、文化的尺度のひとつと思うんですけどね、このプッツンは・・・なんとも。
by e-g-g (2007-01-23 13:11) 

響

都会のオアシスと言うべきものですね。
見てて癒されそうですが突然現実に引き戻される感じですね。
もっと増やしてほしいなー。
by (2007-01-23 22:02) 

e-g-g

◎響さん いつも ありがとうございます
 たとえ人工的でも、川は人を惹きつけるものがありますね。周囲は、すき間のない都会ですけれど、水の力で異空間が生まれます。自然そのままの川の再生など、もう不可能な都会では、これからもっと増えるのではないでしょうか。税金もそういうところにキチッと使って欲しいものです。
by e-g-g (2007-01-23 23:46) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

Red Boxザ・ケルン・コンサート ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。