時節柄、第九。 [聴く・クラシック音楽]
NHKのクラシックミステリー『名曲探偵アマデウス』、欠かさず見るというほどではないけれど、タイミングが合えばけっこう見ている。今週はベートーヴェンの第九。時節柄の選曲で、それ自体はきわめて真っ当。
この番組は、曲のある一部分、それはやはり聴かせどころが多いわけだけど、そこに焦点を当てて音楽の構造を解きほぐしていくのを、ひとつの特色としている。通り一遍の話が多いN響アワーなどよりも、おもしろい(こともある)。
作曲をコンポーズ、作曲家をコンポーザーという。この「コンポーズ」、ひとことで言えば「構成」である。絵画的な構成も「コンポジション」と言ったりする。
ヨーロッパ音楽の根っこは、詰まるところこの「構成」の追求だったろう。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、そしてブラームス、ワーグナー、マーラーと、姿形は、だんだんと壮大になっていくけれど、基本的には音楽は構築物であるという信念・伝統の上に立っている。
私の仕事はグラフィックデザイン。もう何十年もやっているけれど、基本は「見る・見せる」こと。きわめて視覚系の営み、そして「構成」もその仕事の中で大きな領域を占める。
この構成について、私は視覚的、例えば絵画などよりも、音楽からの影響の方を強く受けている。ヨーロッパの音楽家達が、知恵の限りを尽くして開発した様々な音楽の手法、そこから感化されるものの方が、私の中にすっと入ってきた、ということ。視覚的な仕事をしていながら、実はかなり聴覚的なタイプなのかもしれない。
ゴルトベルク変奏曲、「英雄」の変奏曲、「キラキラ星変奏曲」、変奏曲ひとつとっても、構成のお手本のようなものばかりだ。
ここでいう構成というのは、たんに見かけ上の形のバランスも、もちろん含む。が、もう少し大きく広い、たとえば編集物の構成、売り場展開の構成、といったようなある程度の空間的あるいは時間的な広がりを持つ場面にも通じる。言い方を変えると、ひとつのプロジェクトのシナリオづくり、そんな感じかもしれない。
山あり谷あり、あるときは静かにあるときは盛大に。素材を集め、配置し、個々の色合いは失わずに、いやそれぞれを引き立てながら全体としてのまとまり感を作る。その構成のテクニックは、デザインであろうと絵画であろうと、そして音楽であろうと変わらない。
番組の後半で、あの第4楽章の歓喜の歌をとり上げていた。複数の声部が交互に前へ出たり、役割を交換しながら全体としての「歓喜」を紡ぎだしていく。ベートーヴェンの力は、もう、ほんとうにいやというほどの技だ。こんなに完成度の高い構成を見せられては、後から来たものはどうすれば良いのか、、、
ま、しかしながら200年も前の技が、いまでも訴えかけてくるパワーに素直に感謝しよう。
*
この『名曲探偵アマデウス』の「第九」は、のすけの母さんもとり上げていて拝見しました。私は今日(12月27日)の再放送を見ての感想です。
この番組は、曲のある一部分、それはやはり聴かせどころが多いわけだけど、そこに焦点を当てて音楽の構造を解きほぐしていくのを、ひとつの特色としている。通り一遍の話が多いN響アワーなどよりも、おもしろい(こともある)。
作曲をコンポーズ、作曲家をコンポーザーという。この「コンポーズ」、ひとことで言えば「構成」である。絵画的な構成も「コンポジション」と言ったりする。
ヨーロッパ音楽の根っこは、詰まるところこの「構成」の追求だったろう。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、そしてブラームス、ワーグナー、マーラーと、姿形は、だんだんと壮大になっていくけれど、基本的には音楽は構築物であるという信念・伝統の上に立っている。
私の仕事はグラフィックデザイン。もう何十年もやっているけれど、基本は「見る・見せる」こと。きわめて視覚系の営み、そして「構成」もその仕事の中で大きな領域を占める。
この構成について、私は視覚的、例えば絵画などよりも、音楽からの影響の方を強く受けている。ヨーロッパの音楽家達が、知恵の限りを尽くして開発した様々な音楽の手法、そこから感化されるものの方が、私の中にすっと入ってきた、ということ。視覚的な仕事をしていながら、実はかなり聴覚的なタイプなのかもしれない。
ゴルトベルク変奏曲、「英雄」の変奏曲、「キラキラ星変奏曲」、変奏曲ひとつとっても、構成のお手本のようなものばかりだ。
ここでいう構成というのは、たんに見かけ上の形のバランスも、もちろん含む。が、もう少し大きく広い、たとえば編集物の構成、売り場展開の構成、といったようなある程度の空間的あるいは時間的な広がりを持つ場面にも通じる。言い方を変えると、ひとつのプロジェクトのシナリオづくり、そんな感じかもしれない。
山あり谷あり、あるときは静かにあるときは盛大に。素材を集め、配置し、個々の色合いは失わずに、いやそれぞれを引き立てながら全体としてのまとまり感を作る。その構成のテクニックは、デザインであろうと絵画であろうと、そして音楽であろうと変わらない。
番組の後半で、あの第4楽章の歓喜の歌をとり上げていた。複数の声部が交互に前へ出たり、役割を交換しながら全体としての「歓喜」を紡ぎだしていく。ベートーヴェンの力は、もう、ほんとうにいやというほどの技だ。こんなに完成度の高い構成を見せられては、後から来たものはどうすれば良いのか、、、
ま、しかしながら200年も前の技が、いまでも訴えかけてくるパワーに素直に感謝しよう。
*
この『名曲探偵アマデウス』の「第九」は、のすけの母さんもとり上げていて拝見しました。私は今日(12月27日)の再放送を見ての感想です。
2008-12-27 14:52
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コメント(17)
e-g-gさんもご覧になったのですね。
第九のすばらしさは、聴けばそれで十分なのですが、こうやってあらためて理屈で説明されると、やはり納得です。
な~るほど、と唸ってばかりでした。
この番組を見てから、毎日一回(全楽章は無理ですが)第九を聴いています。
by のすけの母 (2008-12-27 22:52)
「キラキラ星変奏曲」と「第九」しか知りません(汗)
でも、第九の時期が来ましたね。
第4楽章だけで良いですか?
by 響 (2008-12-28 21:57)
「第九」に限らず音楽の「構成」を考えて聴いたことがなかったです。
同じ曲でも聴くのと流しておくのでは全然違うものに聞こえますね。
同じ耳で聴いてるはずのに。
うーん、「第九」をちゃんと聴いたのは、いつ以来だろう。
by HEIJI (2008-12-29 00:34)
◎のすけの母さん
第九、いいですね~
とにかくあんなにエネルギー感に溢れた音楽も珍しいですね。
番組のほうは、ときどき無理な狂言回しに、しらけることもありますけれど。
◎響さん
キラキラ星もいいもんですよ~
じっくり聞くと思いがけずに深い味わいがあったりして。
第九、第4楽章だけでもすごいですね、
他の楽章も気になりだすと「はまり」ますよ、きっと。
◎HEIJIさん
いま耳にしている音楽、そのほとんどの基礎というか土台は
ヨーロッパ人が開発したものですね。
ロックも、J POPも、童謡も、演歌も、、、
おしなべて、その枠の中での表現です。
コード進行など、その典型ですね。
もちろん地球上には他の地域の音楽もあるわけで、
そういった、まだ聴いたことの無い音楽に
できるだけ触れたいと思ってます。
by e-g-g (2008-12-29 15:56)
「きらきら星変奏曲」を聞いたとき、「これを作曲した人は、どうかしてる。(人間ワザではない。)」と思いました。そうですよね、だってモーツアルトですから。
e-g-gさんは、視覚的であるデザインや絵の構成に、音楽の影響を受けているとのことです。私は絵を描き始めたばかりなので、まだ全体の構成などを考える段階ではありません。ただ目の前にあるものを、一つずつなるべく忠実に再現しようとしている所です。いずれは、e-g-gさんのようになりたいなと思っています。
by はじ坊 (2008-12-29 22:23)
第九を生で聞く
私の人生のうちで一回はと思う叶えたいことの一つです。
でも叶えたいことが沢山あるからなぁ^^;;;
今年も楽しくて温かい記事ありがとうございます
よいお年をお過ごしください!
by ハイマン (2008-12-29 23:07)
僕はクラシックには興味なかったのですが、ある番組で曲の解説や、曲がどのように成り立っているかを解説して、それを聞いた時に、正に目から鱗でした。クラシックとは、こんなにも考えられて作り上げれているのか・・・と。本当にベートーベンは偉大な人ですね。
by 井上酒店 (2008-12-30 00:31)
☆2008年はご訪問ありがとうございました!
来年もどうぞよろしくお願いいたします
良いお年をお迎えくださいね(‐^▽^‐)
by mitsu (2008-12-31 06:02)
今年はブログを通じてお世話になりました。また、ろくなコメントもできず恐縮です。来年も宜しくお願い申し上げます。
by Krause (2008-12-31 19:30)
天出臼男でしたっけ?何度か見たことがありますが面白いですよね!
今年はお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします!
by sanjinsai (2008-12-31 20:38)
明けましておめでとうございます♪
今年は大きく羽ばたいて更に明るく良い年にしたいですね。
本年も宜しくお願いいたします。
by 旅爺さん (2009-01-01 13:08)
daland です。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
昨年は第九を一度も聴いていないような...
なんか年々聴くことが少なくなってるような気がします。
年末にまたやってしまった衝動買いの第九がありますので、再確認します。
by daland (2009-01-01 15:15)
あけましておめでとう御座います
今年もよろしくお願いいたします。
by こぼん (2009-01-02 22:07)
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願い致します。。
第九やってたんですね~(゜o゜)見逃しました。。
再、再放送やらないかな~??
ベートーベン好きだなぁ
去年は第九、歌えなかったから来年はどこかで歌いたいなぁ。。
by masa (2009-01-03 16:05)
暮はテレビのない生活だから、見ることができず残念。
しかし、小澤 征爾さんのチャイコフスキー交響曲5番の解説を聞くことが出来たのがラッキーでした。
キラキラ星変奏曲も、年に応じて奥深さを感じるようになりました。
by mamire (2009-01-04 12:54)
◎xml_xslさん
◎カフェオランジュさん
◎スカピオサさん
◎gilmanさん
◎ゼイバーズさん
◎mitsuさん
◎sanjinsaiさん
◎murasawaさん
◎クララさん
niceを、ありがとうございます。
by e-g-g (2009-01-06 23:47)
◎はじ坊さん
きらきら星変奏曲、全部で12曲ありますけど、
あの手この手で楽しませてやろう!
モーツァルトの遊び心が溢れてますね。
絵の方ですけど、私などまだまだです。
描く前のイメージはもちろんあるんですけれど、
腕が付いていかない、、、
◎ハイマンさん
私も第九を生で聴いたのは一度だけです。
日本の暮れは第九ラッシュですから、
他の曲よりもチャンスがあるかもしれません。是非!
◎井上酒店さん
クラシックは、きわめて建築的なつくりです。
ですから、ずいぶんと理屈っぽいところもありますね。
でも、そのうえで人の感覚にストレートに訴える力もあるわけで、
この発明は、やはりすごいなと思います。
◎mitsuさん
コメントをいただき、ありがとうございます。
もう、今年になってしまいましたが、
また訪問させていただきます。
◎Krauseさん
こちらの方こそ、いつもniceを押すだけで
失礼しております。
今年も、またよろしくお願いいたします。
◎sanjinsaiさん
あと「響カノン」ですね。
番組の方は、良く知っているはずの曲も
えっ!?そうだったの?ということもあり、
なかなか楽しいですね。
◎旅爺さんさん
ほんとうに明るい一年になって欲しいですね!
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
◎dalandさん
昨年末はずいぶんと第九を聴きました。
バーンスタイン、カラヤン、アバド、
あとベ−ムも聴いたような、、、
でも、全部テレビです。楽してます
◎こぼんさん
コメント、ありがとうございます。
こちらのほうこそ、よろしくお願いいたします。
◎masaさん
もっぱら聴くだけの第九ですけど、
歌ったらさぞ気持ちよいでしょうね〜
今年は、がんばってください。
◎mamireさん
テレビのない暮れ、、、良いですね〜
小澤征爾はチャイコフスキーを得意にしていますから、
解説もきっと良かったでしょうね。
そういえば、お正月にテレビで小澤征爾の五番
見ました、いや聴きました。
キラキラ星、ちょっとマイナーで寂しい感じの変奏も良いですね。
by e-g-g (2009-01-06 23:52)