横浜で飛鳥Ⅱを描く。 [水彩画とスケッチ]
横浜の山下公園に行ったのは何年ぶりだろう。12月の20日、冬至前日とは思えないうららかな日差しを浴びながら、ぶらぶらと歩いた。それにしても明るい。海も、真っ白な「飛鳥Ⅱ」も、かもめもみんな明るい。
でも、公園全体がこんなに明るかったかな?ふと入り口の掲示を見ると、山下公園の景観を台無しにしてきた高架の貨物線が撤去されたとある。それも2000年のこと。
成人を過ぎるまで横浜で育った。だから横浜のことは何でも知っている、と、そんなことはまったくなく、いまや完全におのぼりさん状態だ。だいたい私が知っている横浜には「みなとみらい」も首都高速も地下鉄も、なにも無い。あるのはマリンタワーと氷川丸だけ。
横浜のいたるところに、まだ戦後の余韻が色濃く残っていた時代である。冬、雪が降った翌日、日本人の普通の家の屋根は真っ白なのに、本牧にあった米軍関係者の住宅の屋根の雪はきれいに溶けていた。そんな格差歴然の時代だった。
飛鳥Ⅱが停泊しているのは大桟橋。ここも、かつてはだだっ広いだけの寂しい場所だった。もちろん、大型船が着いたときはそれなりの賑わいも見せてはいた。でも、いつ訪れても、やはり味気のない印象のほうが残っている。
氷川丸が数百メートル離れた場所に繋がれている。黒く鈍重な船体のその古めかしさの方が、私の横浜のイメージには合う。
とはいいながら、飛鳥の大きさ、豪華さ、明るさには、やはり眼を引かれる。大桟橋も「くじらの背中」という愛称が示すように、なんとも柔らかくて大きな空間を演出している。
どこのどなたがプランしたのか、かつての鉄とコンクリートだけでできた直方体の無機的な印象を、見事に変えたものだ。
公園の中を走る高架の貨物線に戻って。ともかく、こんなに不粋なものが世の中にあるのだろうか?というほど無神経きわまりない構造物だった。1965年に開通する以前の「すっきり」とした公園の印象がぶち壊された、と子供心にもがっかりした記憶がある。この鬱陶しいコンクリートの固まりは、その後いつ訪れても、どーんと頭の上にあって憂鬱な風景を作っていた。
大仏次郎をはじめ当時の文化人達が高架線反対の声を上げたそうだが、時は高度経済成長へ向けてまっしぐらの時代。文化的香りなんぞより、まずは経済、経済、、、と押しまくったのだろう。
その高架貨物線も、今は消えた。あの傍若無人なコンクリートの固まりが奪った暗黒の35年は帰ってこない。と、ちょっと感傷的になるくらい、いまの公園は気持ちの良い空間になっている。
こんなに劇的に変わって、しかも「決断」さえすればできるのなら、日本橋の上を走る高速道路も何とかなるのではないか、と、ふと思ってしまう。
*この高架線、一部はプロムナードとして整備され、山下公園とみなとみらい地区を結ぶ散歩道になっている。
絵のほうは、ちょっと細かいところに気を取られてしまった。線も色も、もっとダイナミックに描きたい。紙のサイズもあると思う、もういちど描きたい気もする。
F4(33×24cm)・ワトソン紙
ちょっと里帰りの時間でしたね・・・
変わってしまうと戸惑いますね。
飛鳥Ⅱは・・・ねぶたの青森港の風物詩にもなりつつあります。
いつか、あの船で旅ができたら・・・と、憧れの船です。
by こぎん (2008-12-22 18:53)
「高架の貨物線」ありましたねー。ある時、急に風景が変わった気がしたのはそのせいだったのか。「飛鳥Ⅱ」も見てないし・・・最近は中華街ばかりだったなあ、と思ってます。今度行ったら見てきます〜。
そういえば、マリンタワーはリニュアルするんですよね?
by HEIJI (2008-12-22 23:50)
ずい分昔に、山下公園に行った事がありました。
しばらく行かないと、景観も変わるんですね。
飛鳥は憧れの、船ですー。
by ムーミン (2008-12-23 21:08)
"Happy Christmas"
よいクリスマスをお迎え下さい・・・♪
by mitsu (2008-12-25 15:05)
◎こぎんさん
今回は、文字通り里帰りの気分でした。
家から電車でも30分足らずなんですけどね。
飛鳥Ⅱは何処にいても目立つでしょうね~
市長ががんばって横浜に呼んだとのことですけど
すっかりシンボルになりました。
◎HEIJIさん
中華街はあまり変わってないかもしれません。
子供の頃に親に連れていってもらったお店が、
まだちゃんとあったりしますから。
マリンタワーは、ちょうどいま化粧直しだったようですよ。
◎ムーミンさん
前に行かれたのが2000年以前でしたら、
雰囲気が明るく変わっていると思いますよ。
飛鳥は、ほんとうに夢の空間なんでしょうね~
すごい演出力と思います。
◎mitsuさん
ありがとうございます。
クリスマスは終わってしまいましたけれど、、、
by e-g-g (2008-12-26 21:26)
こんばんは。ご訪問ありがとうございました!
丁寧な、品の良い水彩画ですね。見ていて気持ち良いです。
後日時間をかけて、じっくり隅々まで読ませていただきます。
by ジョウビタキ (2008-12-26 22:15)
本当に船の絵は素晴らしいです。
横浜育ちで船を沢山見られて楽しいですね。
by 旅爺さん (2008-12-27 08:43)
◎ジョウビタキさん
コメントを、ありがとうございます。
またお立ち寄りください。
◎旅爺さん さん
私が育っ横浜は「野山の横浜」でした。
それでも、その気になれば海も港も近かったですから、
いま思うと恵まれていたのかもしれませんね。
by e-g-g (2008-12-29 15:43)
僕も以前に2度ほど山下公園と中華街に行きました。懐かしいですね。
でも、今は知り合いが居なくなったので、横浜に行く事は無いかも知れませんね。今回もスケールのデカイ良い絵ですね。
by 井上酒店 (2008-12-30 00:27)
daland です。
子供の頃、絵を描くと言えば船や汽車など乗り物でした。
絵心をくすぐるんでしょうね。
また港って海の向こうは外国っていうような憧れてました。
横浜は遠くてなかなか行く機会がないのですが、雰囲気いいですよね。
by daland (2009-01-01 15:27)
◎xml_xslさん
◎はじ坊さん
◎一真さん
◎としゆきさん
◎こぼんさん
◎ラナさん
◎ゼイバーズさん
◎sanjinsaiさん
◎masaさん
お立ち寄り、ありがとうございます。
by e-g-g (2009-01-06 23:46)
◎井上酒店さん
山下公園も中華街も、昔にくらべると
ずいぶんと小奇麗になりました。
あの、ちょっと猥雑な感じもする怪しげな時代も
懐かしいです。
まぁ、でも良いところですよね、気持ちが晴れます。
◎dalandさん
子供のころ、私は飛行機と自動車ばかり描いてました。
もちろん船も、ようするに乗り物ですね、
みんな描くんですね〜
それから、描くのに飽きたらプラモデル、、、
根岸線、みなとみらい線を使えば、
赤い靴の横浜港も近いですよ。
by e-g-g (2009-01-06 23:46)