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見えない道具 [日々のデザイン]

 オートバイに乗りはじめて、もうすぐ3年。オートバイの、とくにメカニズムに関する知識は一向に増えない。はじめの一年くらいは、初心者だから仕方がないとも思っていたが、2年目も、そして今も増える兆しはない。オートバイそのもに無関心なわけではない。いいなぁ、と思うオートバイもあるし、ニューモデルが出ると感心も湧く。しかし、、、

 たぶん、若い頃、少なくとも30才代までにその世界に入っていれば、オートバイのメカニズムについても、人並みの知識や経験は深まったはずである。すべてを年齢のせいにするのはどうかと思うが、これはやはり50代も半ばを過ぎてから乗りはじめた人間の、ひとつのパターンかもしれない。もちろん、年齢に関係なくその道に精通する人もいるとは思うが。

 これは、私の場合、ことオートバイに限ったことではない。オーディオしかり、クルマもスキーも山登りも然り、である。もちろん、感心のすべてが薄れたわけではない。鳥肌が立つような録音のCDに出会ったときは、やはりオーディオのチューニングに気を使う。年に一、二度のスキー(クロスカントリー)も、板に足を乗せた瞬間に、やはりいろいろと気になることも出てくる。その都度、次こそ新しい道具を買おうとも思う。しかし、その熱意が長続きしないのである。情熱の欠如か?あるいは老化現象の始まりか?

 いま欲しいのは、限りなく後ろに隠れていてくれる道具である。オートバイなら、現地を目一杯に楽しむための「走る道具」。気持ちよく走るためのパワーその他の性能は過不足無く満たしていて、なおかつ存在を忘れられるような、そんなオートバイ。
 マリア・カラスが目の前に立っているような錯覚を覚える、そんなオーディオも欲しい。それは、しかしスピーカーもアンプもプレーヤーも、目に見えないところに隠れていて、ただトゥーランドットだけが鳴り響く、そんなシステム。

 そこに到達するまでには、莫大な授業料と時間、なにより「もっと良くしたい!」という強烈な願望が必要なのは重々承知している。はたして、自分はそういいきれるだけの没頭を経験したか?と自問もする。

 だんだんと隘路に入り込んでしまいそうだ。
現実に、走っているオートバイの挙動そのものからも多くの快感は得られる。気になって、いつかは乗ってみたいオートバイもある。オーディオにしても、良いシステムがあってこその音楽である。TANNOYをもっと鳴らしきるオーディオアンプがあれば、やはり気になるし、その性能に無関心でいられるわけはない。

 しかし、そういった我が儘をぜんぶ受け入れてくれて、とにかく、そこにあるのに見えない道具。これは、自分の経験値の限界を棚上げにした無い物ねだりか。


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コメント 13

オートバイの知識は増えませんね。車とかなら、洗車の知識から、入りましたけど、バイクはなんというか、シビアすぎて自分ではできないと思い込んでいるからでしょうか?(*´∀`)
by (2006-12-25 21:01) 

e-g-g

◎月光14thさん いつもありがとうございます。
オートバイのメカニズムは、やっぱり難しいですよ。ちょっと、取り付く島がないという感じもします。その難しい(イメージの)世界に、ユーザーもメーカーも少し寄りかかり過ぎかな?とも思います。
メカニズムは知らなくても、純粋に走る喜びを味わいたいという潜在ユーザーはたくさんいると思うんですけどね。
by e-g-g (2006-12-25 23:04) 

Montego-Blue

こんばんは。
修理も楽しいですが、やっぱり私も走ことが一番楽しいと思います。
たまたま気に入ったものが厄介な2輪(笑)だったので、半ば仕方が無いと思っています(笑)
私の場合、強烈なインパクトがあったオートバイでして、所有する機会が訪れたら「あがり」オートバイと決めちゃったので、修理不能になるまで乗らなければならくなっています。

壊れないオートバイを気に入っていたら、きっとそのオートバイとの走り方になっていたような気がします。
by Montego-Blue (2006-12-25 23:56) 

YASH

ハードの造り込みは第一級で、なおかつ存在感を主張せず、主役はあくまで乗り手のオートバイ、ということでしょうか?
うーん…、私自身は乗った事ないんですが、F650GSってかなりそれに近いと思うんですけど。
それと、写真上の一節でどこから答えが見えてくるか、すでにeggさんは分かっておられるかと。

私はオートバイに乗って20年目に、やっとTDMに気付きました。
なにを求めるか、どんな道を辿るかは人それぞれですけどね。
by YASH (2006-12-26 00:10) 

カズ−

ドイツ グラモフォン、中古レコード屋に行くとついつい買って
しまうレーベルです。
知り合いからクラシックレコード100枚くらいもらったんですが、
聞けていません。
とりあえず、アースを取らないと『ブーン』と言う音が、、、。
昔は徹夜してでも読んだ取扱説明書にちっとも熱が入らなく
なりました。
買っただけで、満足、、みたいな。
私も今更ながら、没頭が足りなかった事を後悔しています。
by カズ− (2006-12-26 00:52) 

mykie

こんばんは。
なかなか難しい問題ですね。
バイクはともかく最近のテクノロジーの進歩はあまりにも速すぎて、仕事柄ついて行かざるを得ないのですが、付いて行くのに大変な労力を使います。
そんな労力を使わないでも、理想は使っていれば自然に使い方や構造などの知識が身に付く…って、これもユニバーサルデザインですね。
by mykie (2006-12-26 01:19) 

e-g-g

◎Montego-Blueさん おはようございます
“たまたま気に入ったものが厄介な2輪”いやぁ、良く分かります。で、厄介なモノにはまりやすいですね、オトコは。

◎YASH さん
“ハードの造り込みは第一級、かつ存在感を主張せず、主役はあくまで乗り手”そのとおりと思います。道具について考えるときに、ひとつの理想型です。
面白いのは、二級品の造りでも妙に愛着を感じたりするケースです。きっと、そういう道具との付き合いの過程に自己を投影するのでしょうね。だから、投影する対象の少ない道具はつまらなく見える。
オートバイも、クルマも、オーディオも、男の好きなコトの道具は、そういった“ユーザーの投影力”を前提にして成り立っているモノが多いと思います。
で、ワタシは、なんとなくそのあたりの熱がいまひとつ上がらない、というところだと思います。

◎カズーさん
記事内容にあまり関係のない写真で失礼いたしました。実は、私も最近はこの黄色いレーベル、あまり聴いてません。懐かしいです。
没頭不足、いいんじゃないでしょうか、そういうものだと思います。私もそうですし(なんだか禅問答みたいですね)

◎mykie さん おはようございます
“使っていれば自然に使い方や構造などの知識が身に付く”まさにそのとおりですよね!道具の完成度はその点に尽きると思います。
でも、この忙しい時代、それとは正反対の現象も多いですね。ユニバーサルデザインとはまったく逆の流れです。まったく、疲れます。
マニュアル、ヘルプを前提にした道具なんて未完成の極みなのだ!と、ちょっとドンキホーテ的になっても、言い続けなければイケナイ、なんて思います。
by e-g-g (2006-12-26 11:23) 

たいへー

アンプ、変えたい。 来年6月には変える予定だが
どれにするかが大問題! 迷うな・・・
by たいへー (2006-12-26 14:59) 

e-g-g

◎たいへーさんは Luxman、DENON、でしたっけ。私のいまのプリメインはONKYOです。この数年間で良いなと思えたのは Linn です。オペラの舞台の奥行き感が感じられました。もっともこれはLinn のレコードプレーヤーの実力によるものとも思えます。
by e-g-g (2006-12-26 15:29) 

mio

こんばんは
「見えない道具」いいテーマですね
なんかいつも酔っ払いですが、シラフにもどりました(笑)
YASHさんの「ハードの造り込みは第一級で、なおかつ存在感を主張せず、主役はあくまで乗り手(使い手)」いいですね、こんな表現のできる男になりたいですね
私は刃物をよく使うので、それでちょっと語りたいと思います
刃物は鉄(Fe)の塊です
しかし、鍛冶屋の腕で切れる芸術品に生まれ変わります
いかに素晴らしい刃物を手に入れても、それだけでは切れません
それを使いこなす腕と、管理する能力が必要です
また、いい刃物を選べる感覚も重要
私は刃物だけはお店に出向き、散々吟味して購入します
納得いくものがなければ欲しい刃物と同じ型のものがあっても購入しません、しかしその反面、当初予定したもの以外でも、これはというものがあれば購入します
でも、それはその時の自分の能力で選んでいるだけであって、能力が向上すれば、またその向上した能力にあったモノが欲しくなります
その反面、未完成なものに惹かれたりもします
デザインは秀逸だけど、機能的には今一つ
しかし、その不自由さを楽しんでいたりもしてるんです
私は人間は死ぬまで成長し続けると思っています
たとえ、年老いてボケてしまったとしても、体力、知力以外の何かがあり、人間として成熟していくのでは
だからヒトは死ぬまで究極の道具を追い続け、使いこなそうともがく
特に男は
なんちゃって
by mio (2006-12-26 22:07) 

e-g-g

◎mioさん 酔いはさめましたか〜
 この話は、詰まるところ道具と人はどう関わればよいのか、ということなのですね。使いこなすという言い方があるように、道具の能力を上手く引きだして、そのうえで自分の思い通りに使う。これが理想でしょう。もちろん、そのレベルに達するにはそれ相応の修練、トレーニング、それと道具との対話もいるわけです。
 私も、そういうことをないがしろにしてはいません。それに、すべての道具が、オートマチック、なんでもラクチンになったら、それは怖いことですよね。人間が道具にスポイルされるということですから。(洗濯機とか、諸々の生活道具はラクちんな方が良いですけど)

 結局は使う人間の問題なんだと思うんですよ。ここで大事なのは「使う人間」であり「使われる人間」ではないということ。上手に使っていれば、道具が目の前にあろうがなかろうが、それは使い手が主役です。逆に、下手な使い方では道具がしゃしゃり出てきます。管球式のアンプがデーンと居座っていても、それを使い手が上手くコントロールしていれば道具は「見えない」のです。音楽だけが聞こえてくるはずです。ハイパワーのオートバイも、使い手がきちっと使いこなしていれば、それはやはり「見えない」と思うのです。だいたい、名人とよばれる人の道具は、ごく普通に見えてけっして大仰ではありませんよね(たぶん)

 ぐずぐず書きましたが、ま、そんなこんなの上で、道具には見た目にもできるだけ楚々としていてもらいたい、と私は思うのです。
by e-g-g (2006-12-26 23:25) 

umi_umi

『なんでバイクに乗ってるのか』って、聞かれたら?
バイクで走るのが好きだから。気持ちいいから。
あと、旅好きだから。
これしか理由が見当たらない・・・。
いや、理由は無くてもいいのかな、って。
だいたい、男の人のようにバイクいじりしたり、なんてことも無い。
面倒なことは人任せになってしまってるし(汗
それでも、好きだから乗ってます。
うーん、文の主旨とはコメントずれてるかな??(滝汗
by umi_umi (2006-12-28 12:05) 

e-g-g

◎海さん コメント、ありがとうございます。
私は男ですがバイクいじりしません、というよりできません。全部ディーラー任せです。
散歩のときに“なぜ散歩をするのか?”とはあまり問いかけませんよね、私にとってオートバイは、その散歩の延長です。ですから、バイクそのものにあまり気を取られたくないんですね。もちろん、気持ちよく走るのは大好きですよ〜
by e-g-g (2006-12-28 13:27) 

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