北鎌倉、東慶寺本堂。 [水彩画とスケッチ]
北鎌倉の東慶寺は、山門から墓苑まで百メートルを少し越えるほど。
たとえば鎌倉街道をはさんで反対側の円覚寺などに比べると、
ずいぶんとこぢんまりとしている。
事実、円覚寺の弁天堂の見晴台から眺める東慶寺は、
まるで箱庭のように可愛らしい。
その空間に合わせてか、書院、本堂、宝蔵とならぶ建造物も、
仰々しさを感じさせない程良い大きさ、いや小ささ、そして楚々とした佇まい。
その端正で清潔感の漂う造形、押しつけがましくない清々しさが、
このお寺の性格というか品格を表しているように思える。
とくに本堂の端正さは気持ちを惹きつける。
昭和10年の再建というから、
やはりどこかに“新しさ”を感じてしまうのかもしれない。
それ以前にあった仏殿が、なぜ横浜の三渓園に移築されたのか?
という疑問も湧くけれど、
それはそれとして、“今の”本堂はこの境内にとても良く合っていると思う。
その本堂を描きたい。
が、ベストポイントは本堂の前の門の真下。
小さな門の、それも人が頻繁に出入りする場所である。
そんなところでスケッチブックを拡げるわけにもいかない。
ほんとうに狭いのだ。
じっくりと眺めて、眺めて、眺めて、覚える。
訪れたのは10月13日、もうふた月も前のこと。
良く良く見たつもりが、何か見落としているような気がする。
というわけで翌日に再訪。
再び訪れて、何が分かったというわけでもない。
細部の形など写真を撮っておけば済みそうなものだが、
やはり現地の空気、匂いが必要なのだ、と自分に言い聞かせる。
それはともかく、描き終える頃には紅葉も真っ盛り。
こちらのほうは今月の七日に見物に行ったが、
さて絵になるのはいつのことになるのやら。
相変わらずの遅筆なのだ。
時間をかければ絵が良くなる、というわけでもないけれど。
『東慶寺』
F6(39.7×31.5cm) Montval Canson・水彩
*何人かの方からコメントを頂き、
誤解を生んでしまったようなので、追記(12月17日)
「細部の形など写真を撮っておけば済みそうなものだが、」
と書いてしまい、これはちょっと言葉足らずでした。
あっという間に消えてしまう目の記憶、
それを補うために覚えのための写真は撮ります。
要はその使い方、
写真に頼り切っては描くべきものが消えていく、
そうなってしまいますから。