秋の日の名越切通 [逗子とその周辺]
日曜日の明るい陽差しを浴びる住宅地、
区画整理されたそのいちばん奥から唐突に名越切通がはじまる。
いや、もともと切り通しからの道が通っていた山地に
“唐突に”住宅街ができた、それが正確な言い方だろう。
鎌倉と三浦、房総を結ぶ要路上に家々が立ち並んだのは、
いまから半世紀も前、東京オリンピックの頃という。
臨時公開中の“まんだら堂やぐら群”をたずねる。
切り通しの入口からは、歩いてもほんの数分。
住宅地と隣り合わせの中世の遺構は
時間の感覚が少し狂うようなタイムカプセルだ。
いくらかの葉が落ち、明るさの増した尾根道、
絵に描いたような小春日和、
すれ違うのは圧倒的に中高年の人々、私もそのひとり。
二人の小さな女の子を連れたお父さんが歩いてくる、なんだか嬉しい。
小さな背中に小さなデイパック、
お父さんの“行くぞ!”のひと言で連れてこられた?
あの子たちは、大人になってもこの道を覚えているだろうか?
秋の日を受けた相模湾はとても穏やかな表情、
肉眼ではうっすらと見える大島が写らない。
ま、それよりも、丘の先の小坪港にあがっている(はずの)魚たちが気になる。
一時間半後、歩き始めた“入口”に戻る。
昼下がりの住宅街を歩きながら、昔の様子を想像する。
開発以前、いや一足飛びに鎌倉時代はどんな所だったのかと。