SSブログ

フォーレ、そして西行。 [聴く・クラシック音楽]

20120327_saigyo_faure.jpg

空が少しずつ高くなってきた。
まだ冷たさを含んだ風が、首元にすーっと入り込んでくるけれど、
ようやく春らしい陽差しの到来、今年は待ち遠しかった。

目黒川のソメイヨシノもそろそろ蕾が弾けそう、
開花はあと一週間くらいか。
この季節、フォーレの旋律とハーモニーが、
条件反射のように浮かんでくる。
そういえば、五年前のいまごろ “春の日の、フォーレ” という記事を書いた。
毎年、同じ音楽を同じような心持ちで聴いていることになる。
まったくもって進歩がないのだ。
(去年はその夢見心地の気分には、とてもなれなかったけれど)

西行が見、詠んだ桜をイメージする。
といっても、吉野に行ったこともなく、
ただ数少ない印象の断片を寄せ集めて想像するだけ。

  吉野山こぞの枝折りの道かへて
  まだ見ぬかたの花を尋ねん

西行は桜を詠んだ歌が230もあり、
吉野山の桜を詠んだ歌は六十首におよぶとか。
上の歌は、この記事を書きながらふと思い浮かんだもので、
あまり深い意味はない。

フォーレ、
レクイエムもエレジーも、もちろん良いし、
ピアノのための音楽も忘れられない。
そのなかでピアノを加えた四重奏曲と五重奏曲、
そこに散りばめられたアルペジオ、その煌めきは何にも増して美しい。
今年も桜の散る頃まで、その旋律が脳と心の内を駆け巡るのだろう。

12世紀に生きた極東の歌人と19世紀フランスの作曲家、
二人の残してくれた精神の高みと造化の妙、
それを重ねて楽しめる21世紀の愉悦。

春はフォーレ、そして西行。

***
私の好きなJean Hubeu盤ではないけれど、
それとどちらも第一楽章のみですが、興味のある方はどうぞ ↓
Gabriel Fauré : Piano Quintet No.1 in D minor Op.89 (1: molt moderato)
Gabriel Fauré : Piano Quartet No.1 in C minor Op.15 (1: allegro moderato)

nice!(89)  コメント(17) 
共通テーマ:音楽

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。