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東慶寺、遠望。 [水彩画とスケッチ]

20130117_tokeiji_enbo.jpg

12月の7日、最後の紅葉を探しに北鎌倉の東慶寺を訪れる。

先ずは紅葉。
境内の奥、墓苑の一画まで進むと、
モミジの紅と緑のままの葉のコントラストに目を奪われる。
逆光に輝く紅葉を眺めていると、
足もとから這い上がってくる寒気も忘れる。

この鮮やかなコントラストを見せる紅葉も実に美しい。
こんな色彩配置を愛でる心持ち、
その積み重ねが私たちの色彩感覚の根っ子を、
たしかに形づくって来たのだろう、ちょっと派手だけれども。

が、この日は一本の大きな銀杏の黄葉に気持ちが動いた。
東慶寺の山門から右手に書院、本堂を見ながら少し歩くと
松ヶ岡宝蔵の白壁が目に入る。
その脇に大きな銀杏の木が一本だけ佇んでいる。
自発的な光源もないのに、なぜこんなに鮮やかに輝くのか?
文字どおり真っ黄色のその輝きは、周囲に強烈なエネルギーを放っている。
もちろん太陽の光を受けて輝くわけだけれど、
それは、見る者を燦々と光を放射する黄の世界に誘い込む。

たとえば、青山の絵画館前の銀杏並木、
倒れる前の鶴岡八幡宮の大銀杏などなど、
名物黄葉は他にもたくさんあるけれど、
この一本銀杏の色づきも見事なものだ。

東慶寺の細長い境内は両側が山地になっている。
この大銀杏もそのちょっとした谷戸形状の底に立っている。
まわりの木立も深く、なにより地形的に一日中陽が差す場所でもない。
それだけに、太陽の光を受けるわずかな時間の輝きは、
とても印象的だし、どこか舞台演出を目の当たりにするようだ。

その銀杏、離れた場所からはどう見えるのだろう?
思い立って、円覚寺・弁天堂の高台に向かう。
ちょっと息の切れる階段を登り、たどりついた見晴台からは、
鎌倉街道、JR横須賀線越しに東慶寺の境内を見下ろせる。
広い広い円覚寺に比べれば、東慶寺はなんとも箱庭のように可愛らしい。
一本の大銀杏はその中でもひときわ輝き、
この日、この時間ばかりは、
主役は本堂でも宝蔵でもなく、この私なのだと語っているようだ。

『東慶寺遠望』
F6(40×31.3cm) ウォーターフォード ホワイト・水彩

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コメント 30

よしあき・ギャラリー

大銀杏への思い入れがあふれた作品とお見受けしました。
変わらぬ色彩表現に品格を感じます。
文章も素敵です。
by よしあき・ギャラリー (2013-01-18 06:40) 

takenoko

円覚寺にはよく行きますが、いつもここは素通りになってしまいます。
上がるすぐ前の東慶寺とは気づきません。
別世界になったような気分になります。
by takenoko (2013-01-18 08:47) 

engrid

銀杏の葉の輝き、さわさわと風に吹かれるさまに、目を奪われる
その心の動きの根源を、とらえていただいた思いをしています。
by engrid (2013-01-18 11:00) 

mimimomo

こんにちは^^
心温かくなる一枚ですね~優しい色使いがたまりません。
今度是非ここに行ってみたいです。東慶寺までは行くのですが(--
何故だか足を運んだことがないです。
by mimimomo (2013-01-18 11:39) 

akipon

遠近感は色遣いでも表現できるんですね。
思わず見入ってしまう作品です。
by akipon (2013-01-19 00:38) 

gwan3

銀杏の黄色には目をひかれますね。
風景の中から浮き上がる感じ・・・まさにこんなイメージですね。
とても印象に残る絵ですね。
印象に残っているといえば、以前ここで拝見した、自転車と黄色い落ち葉の絵を思い出しました。 ^_^)b

by gwan3 (2013-01-19 11:15) 

レイン

どこかで見た景色だと思いました。
弁天堂のお茶屋のあるところからの眺めですね。
中央の銀杏に光が当たり、輝いて見えます。
by レイン (2013-01-19 19:53) 

kiko1578

感じたままに表現出来る方はいいですね。やはり描かなく
てはだめですね。わかっているけどやらないから上手く出来
ないです。トホホ
by kiko1578 (2013-01-19 21:12) 

響

濃い緑の中に
見事に色付いた大銀杏の木が印象的ですね。

by (2013-01-20 02:29) 

moz

素敵です、あの銀杏の鮮やかな黄色を思い出しました。
本当に綺麗な色彩でしたよね。
じぶんが行ったときは紅葉は終わりかけていましたが、でもこの銀杏の色は一番良いときだったと思います。
そうですか、円覚寺の方まで行かれてご覧になられたんですね。
確かに東慶寺は小さいですね。そこに四季折々の花たちと色彩が詰まっているんですよね。
by moz (2013-01-20 05:55) 

COLE

e-g-gさんの作品は暖かくとても好きです
また次作を楽しみにしています
by COLE (2013-01-20 08:53) 

タックン

円覚寺の上からはこんな風に見えるのですね。
明るい色合いにホッとします。
by タックン (2013-01-20 13:42) 

e-g-g

◎よしあき・ギャラリーさん
いつも、ありがとうございます。
見たときの印象を素直に表すのは難しいものですね。

◎takenokoさん
鎌倉のように適度な高低差があると、
意外な景色も楽しめますね。
歩く楽しみが増えます。

◎engridさん
心動かされる風景でした。
が、それをどこまで描けたのか、はなはだ心許ない思いです。

by e-g-g (2013-01-21 17:00) 

e-g-g

◎mimimomoさん
いつも、ありがとうございます。
私も円覚寺のこの高台に登ったのは初めてです。
なかなか良い眺めです、ぜひ一度。
色づかいの方は、もうひとつなのですが、、、

◎akiponさん
肉眼で見ても、なんとなく望遠レンズを覗いているような、
ちょっと不思議な距離感でした。
遠近感、苦労したところです。

◎gwan3さん
銀杏の黄が、もう描け!描け!と。
自転車と黄色い落ち葉の絵、
もう三年も前の絵ですね、進歩が無いなぁ、、、

by e-g-g (2013-01-21 17:10) 

e-g-g

◎レインさん
>弁天堂のお茶やのあるところ
そのとおりです。
あの眺めはなかなか魅力的ですね、
高低差のある鎌倉ならではでしょう。

◎kiko1578さん
感じたままに表現するのは、なかなか難しいです。
技術の無さを痛感する日々ですが、
どこかで“技術よりも気持ちだ!”と
妙なところで開き直ったりしています。

◎響さん
ご無沙汰です〜
たぶん誰かが、あの場所に銀杏を一本だけ植えたわけで、
こういった光景を見通していたんでしょうか、
なかなかの目ですね。

by e-g-g (2013-01-21 17:33) 

ミモザ

お久しぶりでした♪
なんとも優しい色合いで和んでしまいます。
東慶寺って駆け込み寺のことでしょうか。
昔、どこかで聞いたような気がします。
大銀杏の黄色が際立っていてe-g-gさんの
感動なさったお気持ちが顕れているようですね。
大銀杏の木は確かに感動的で私も大好きです(^.^)
by ミモザ (2013-01-21 17:39) 

e-g-g

◎mozさん
たしか一日違いで、あの銀杏に会っていたのですよね、
間近に見上げる黄葉も素敵で描きたいな、とも思いました。
結局、少し離れたところからの光景を描いたのですが、
恰好の場所が見つかり良かったです。
仰るとおり、東慶寺には色彩が詰まって密度が濃く飽きませんね、
それと、絶妙な手の入れ方がとても好感が持てますね。

◎COLEさん
>また次作を・・・
ドキッ!
今年は描くぞ!と年の初めに決意しましたが、
あっという間に時は過ぎます。
でも、なんとか頑張って増やしたいです。

◎タックンさん
この高台は私も初めて訪れました。
というより、円覚寺そのものが(たぶん)中学生のころ以来、
でも、良い場所を見つけることが出来ました。
それにしても、知らない所・事ばかりですね。
この日(12月7日)は、まだ晩秋の暖かさが空気にありました。
絵の色合いも、その影響を受けていると思います。

by e-g-g (2013-01-21 18:51) 

e-g-g

◎ミモザさん
いつも、ありがとうございます。
色合いですが、
晩秋のこの日の空気の柔らかさを意識しました。

東慶寺の由来については私もまったくの素人ですが、
たしかに駆け込み寺だったということです。
ずっと尼寺だったからでしょうか、
控え目でやさしい感じのするお寺さんですね。
あまり広くはありませんが、とても落ち着く空間です。

by e-g-g (2013-01-21 18:59) 

鋭理庵

コメントありがとうございます。
e-g-gさんの淡い色彩での水彩画、心地良~い! ボクもスカ線の北鎌倉で降りて、東慶寺の脇を通り鎌倉へ抜ける道を時々歩きます。そして鎌倉の勝烈庵でビールと勝烈定食を食し、ご機嫌で帰ります。
by 鋭理庵 (2013-01-22 03:08) 

風船かずら

色使いがとても暖かくて好きです。文章もきりっとして素敵ですね。鎌倉を訪ねたときは東慶寺に寄ってみたいです。
by 風船かずら (2013-01-22 10:44) 

風子

大銀杏の黄色が際立っていますね。
優しい風合いで とても素敵です。
細かくて感心します♪
by 風子 (2013-01-22 20:58) 

OJJ

銀杏の黄葉が画面を引き締めていますね~素晴らしいです!
by OJJ (2013-01-22 21:08) 

tree2

ご訪問とnice! ありがとうございました。
前回の時、コメントしたつもりでおりましたら、いま、見たら入っていませんでした。リンク集に加えさせていただきましたこと、遅くなりましたがご報告いたします。

数年前、永平寺にいきました。ちょうどこの絵のように、紅葉の最盛期でした。
非常にきれいに色づく樹を選んで、ポイント的に植えていると思いました。
鎌倉のお寺は(永平寺もです)赤く塗っていないから好きです。
地味な空間が、1年1度、この季節だけ、華やかに装うのですね。

by tree2 (2013-01-23 13:58) 

ナツパパ

緑の中に点在する紅葉がとても印象的です。
柔らかな秋の陽差しを感じます。
by ナツパパ (2013-01-23 15:48) 

e-g-g

◎鋭理庵さん
歩きたくなる道があるというのは、幸せなことですね。
勝烈定食にビール、、、
美味しそうですけど、すぐに眠くなりそうですね。

◎風船かずらさん
ありがとうございます。
東慶寺を知ったのは私もつい最近のことです。
季節の折々に訪ねてみたいですね。

◎風子さん
細かく描きすぎですね、
その風景から感じたものをもっと大きく掴みたいものです。

by e-g-g (2013-01-24 17:03) 

e-g-g

◎OJJさん
この日はほんとうに銀杏が輝いていました。
一年に一度の晴れ舞台ですね。

◎tree2さん
リンク集に・・・、ありがとうございます。
手を入れすぎず、といって野放しでなく、
植物や樹木(に限りませんが)に接する日本の心を感じます。
この境内も季節ごとに色合いを変える知恵が
いくつも施されているのでしょう。
永平寺も訪れてみたいですね〜

by e-g-g (2013-01-24 17:13) 

JF

こういう深い緑に秋の黄色や紅が映えますね。
(よく絵葉書で青空に強い紅葉の景色を見かけるのですが、
実はあまり好きじゃないんです)
スケッチの時は陰影も鉛筆でつけておくとか、
色鉛筆を使うとか、何かされているんでしょうか?(^^)
by JF (2013-02-10 13:23) 

e-g-g

◎JFさん
スケッチは、鉛筆、コンテ鉛筆、細いサインペン、といろいろ使いますが、
やはり鉛筆が多いですね、いちばん気軽ですし。
陰影は、光の加減がポイントの時は大雑把な影をつけます。
いずれにしても、その風景の魅力(私にとっての)が、
気持ちにすっと入るときは描く用具もすんなりと決まるようです。
by e-g-g (2013-02-13 18:56) 

akipon

けして描き込まれてはいないタッチだと思いますが、
こういう軽やかな感じも良いですね。
ただこれも構成力によるものだと思いますが♪
by akipon (2013-02-13 19:13) 

e-g-g

◎akiponさん
やはり見抜かれてますね・・・
実は、どこまで描き込むべきか、あるいは抜くべきか?
けっこう悩んだ絵です。
by e-g-g (2013-02-15 19:19) 

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