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フォーレ、そして西行。 [聴く・クラシック音楽]

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空が少しずつ高くなってきた。
まだ冷たさを含んだ風が、首元にすーっと入り込んでくるけれど、
ようやく春らしい陽差しの到来、今年は待ち遠しかった。

目黒川のソメイヨシノもそろそろ蕾が弾けそう、
開花はあと一週間くらいか。
この季節、フォーレの旋律とハーモニーが、
条件反射のように浮かんでくる。
そういえば、五年前のいまごろ “春の日の、フォーレ” という記事を書いた。
毎年、同じ音楽を同じような心持ちで聴いていることになる。
まったくもって進歩がないのだ。
(去年はその夢見心地の気分には、とてもなれなかったけれど)

西行が見、詠んだ桜をイメージする。
といっても、吉野に行ったこともなく、
ただ数少ない印象の断片を寄せ集めて想像するだけ。

  吉野山こぞの枝折りの道かへて
  まだ見ぬかたの花を尋ねん

西行は桜を詠んだ歌が230もあり、
吉野山の桜を詠んだ歌は六十首におよぶとか。
上の歌は、この記事を書きながらふと思い浮かんだもので、
あまり深い意味はない。

フォーレ、
レクイエムもエレジーも、もちろん良いし、
ピアノのための音楽も忘れられない。
そのなかでピアノを加えた四重奏曲と五重奏曲、
そこに散りばめられたアルペジオ、その煌めきは何にも増して美しい。
今年も桜の散る頃まで、その旋律が脳と心の内を駆け巡るのだろう。

12世紀に生きた極東の歌人と19世紀フランスの作曲家、
二人の残してくれた精神の高みと造化の妙、
それを重ねて楽しめる21世紀の愉悦。

春はフォーレ、そして西行。

***
私の好きなJean Hubeu盤ではないけれど、
それとどちらも第一楽章のみですが、興味のある方はどうぞ ↓
Gabriel Fauré : Piano Quintet No.1 in D minor Op.89 (1: molt moderato)
Gabriel Fauré : Piano Quartet No.1 in C minor Op.15 (1: allegro moderato)

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コメント 17

よしあき・ギャラリー

奈良の談山神社へ行くたび、この奥に吉野があるんだなとは思うのですが、なかなか踏み込む機会に恵まれません。^^;
by よしあき・ギャラリー (2012-03-27 19:57) 

moz

12世紀と19世紀、その精神の洗練された成果物をわれわれは選び嗜好することができるんですよね。思えばすごく贅沢なこと。
ぼくも歌とかあまり分りはしないのですが、昔から例えば百人一首では西行のものに惹かれたりしています。
そう言えば西行花伝、辻邦生さんでしたっけ、学生の頃辻さんには待った時期があって読んだことがあると思います。かなり昔で記憶も薄れているので、ありがとうございます、読み返してみようと思います。ちなみに辻さんのでは、背教者ユリアヌスが一番好きです。
フォーレもこの季節良いですよね。月並みですけれど、レクイエムが一番好き、あとラシーヌ雅歌もいいですよね。
by moz (2012-03-28 05:34) 

gillman

西行の美意識は日本人の美意識の一つの底流のような気がします。
一度吉野の桜を見てみたいものです。
by gillman (2012-03-28 09:13) 

めもてる

西行、住んでる町には、鴫立庵があり、3月の最終日曜に西行祭が行われます。
by めもてる (2012-03-28 09:46) 

mimimomo

こんにちは^^
今、白洲正子の『西行』を読んでいます。
なかなか難しいです。
by mimimomo (2012-03-28 11:51) 

sig

こんばんは。
目黒川の桜並木、満開になったらさぞ見事なことでしょうね。楽しみですね。
by sig (2012-03-29 00:28) 

アールグレイ

フォーレの美しい旋律に
西行のサクラの歌
素敵な組み合わせですね。
by アールグレイ (2012-03-29 19:20) 

東雲

こんばんは。
如月から弥生へと移ろう頃になると
何故か決まって西行を思い出します。
年明けから始まった『平清盛』の中の義清も待賢門院も
私のイメージとは随分とかけ離れているのですが、
ついつい観てしまっています。
こちらでは一昨日、昨年より5日遅く
ソメイヨシノが咲いた、との発表がありました。
今日は23℃近くまで気温が上がりましたので、
どんどん開花が進むことと思います。
春、本番です。。。
by 東雲 (2012-03-29 22:23) 

カズノコ

この季節、フォーレの旋律とハーモニーが
条件反射のように浮かんでくる。
五年前にも、素晴らしいことではないですか!
何かの拍子に、過去のその時の情景が再現される
プルーストのママレードの味に、いきあたりましたよ。


by カズノコ (2012-03-30 13:53) 

Silvermac

西行は大河ドラマで若い人たちにも知られましたね。
by Silvermac (2012-03-30 17:00) 

ZZA700

フランス映画を連想させる繊細な旋律ですね。
by ZZA700 (2012-03-31 07:52) 

ミモザ

遅くからのコメントでごめんなさい。
好きなものって、自分が忘れていても魂にしっかり
刻み付けられているのかもしれませんね。
私も西行は好きです。西行と桜は深い縁がありますね。
朝から素敵な音楽を聴かせていただきました<(_ _)>
by ミモザ (2012-03-31 08:09) 

e-g-g

◎よしあき・ギャラリーさん
奈良へいらっしゃるだけでも良いですよ、
私など、奈良そのものも、もう三十年くらい行ってません。
こんなことではイケマセンね、、、

◎mozさん
>思えばすごく贅沢なこと。
そのとおりですね、
で、そのぶん感性も磨かれれば良いのですけれどね。

背教者ユリアヌス、懐かしいです!
1970年代の半ばだったと思いますが、夢中になって読みました。
ただ、あまりにも時間が経って、
いまは、何にどう感動したのかさえ思い出せません。
要再読ですね。
『西行花伝』に出会ったのは五年ほど前、西行熱に罹った頃です。
いちばん驚いたのは文章の格調の高さと美しさです。
どの頁を開いても、飛び込んでくる言葉・文章に惚れ惚れ、
日本語っていいなぁ、としみじみ思います。

フォーレは、実は若い頃はあまりピンと来なかったのですよ。
なにか、いまひとつ掴み所がないというか、
その良さに気づいたのは五十も過ぎてからです。
もっと早く聴いていれば、とは思いますが、
音楽が届いてくるタイミングというか、
巡り合わせもあるわけで致し方のないことです。
ま、これから、もっと聴き込んでいきたいものです。
ラシーヌ雅歌、この音楽でも印象的なアルペジオが耳に残ります。

◎gillmanさん
その存在と、それを認め愛してきた人々の両方があって、
いまの西行なのでしょう、ともかくも大きな存在ですね。
桜の吉野も、それ以外の吉野も、
行かねばなるまい!と一年に一度は思うのですが、、、

◎めもてるさん
鴫立庵のことは白洲正子さんの『西行』ではじめて知りました。
生まれ育ったのが神奈川というのに、お恥ずかしい話です。

by e-g-g (2012-03-31 10:52) 

e-g-g

◎mimimomoさん
白洲さんの『西行』は力作、いやそれを超えて一種の迫力を感じます。
評伝のようでありながら、白洲さんの鋭い感性のすべてを
さらけ出しぶつけている、そんな感じがします。
どの章も読み応えがありますが、
後半の讃岐の院にまつわる章あたりはとくに響きますね。

◎sigさん
目黒川の桜はなかなか見応えがあります。
ただ、年々増える人の多さにちょっと閉口します。

◎アールグレイさん
フォーレと西行は、ちょっと安易なイメージの連想ですね、
でも、たまには良いか、と。

by e-g-g (2012-03-31 10:53) 

e-g-g

◎東雲さん
ご無沙汰しています・・・
ソメイヨシノ、開花しましたか。

これだけ有名な西行ですが、
過去に映画にもドラマにもなったことがないそうです。
その大きさ・幅の広さを表現しにくいのでしょうか?
そんなわけで、
『平清盛』の義清と待賢門院は、けっこう期待していましたが、
ちょっと強引な演出が目立ちますね。
たとえば、有名な娘を縁側から蹴落とすシーンですが、
そこに至るまでの義清の心の動きがほとんど表現されず、唐突すぎます。
秘めた情熱と決意をもっと奥ゆかしく格調高く表現してもらいたい、
というのが正直な感想です。
週ごとの視聴率が騒がれてしまう大河ですからね、
ある程度は仕方ないのでしょうね~
義清の清々しさ・複雑さが感じられるシーンも、
時折あるのですが、、、

ともかく、深みも奥行きも感じられる演出を期待したいですが、
これはテレビのドラマではなく、映画や舞台でないと無理かもしれませんね。
さて、西行はこの後、ドラマに出てくるのでしょうか?
ブツブツ言いながらも、気になります。

◎カズノコさん
>プルーストのママレードの味に、
そのとおりですね、
よくよく考えてみると、日ごろの様々な思いやイメージは、
ほとんどがマーマレードの味なのかもしれません。

◎Silvermacさん
西行はこれまで映画もドラマもないそうです。
ご本人の行き方も時代背景も、
とてもドラマティックと思うのですが、ちょっと不思議です。
その多様性と大きさを描きにくいのかもしれませんね。

by e-g-g (2012-03-31 23:28) 

e-g-g

◎ZZA700さん
フランス映画、、、そうですね、
フォーレのうちのフランス人の魂、
それがイメージを拡げるのかもしれませんね。

◎ミモザさん
私もいつも遅いので恐縮です。
更新→直ぐにコメント→直ぐに返信、
ブログ黎明期にはこのサイクルが当たり前のようでしたが、
昨今はようやく少し落ち着いてきたようです。
感じたことを感じたときに伝える、それで良いのではないでしょうか?
ほとんど自己弁護ですけれど。

西行に気づいたのは、この五年ほどのことです。
触れれば触れるほどに、次々に扉が開いていく感じ、楽しいですね。

by e-g-g (2012-03-31 23:29) 

タックン

こんばんは。
目黒川の桜も咲き始めたようですね~
こちら通信隊のソメイヨシノは ほんの少し色づいたところです。
西行は230もの桜の歌を詠んでいるのですか!
短歌は少し疎いのですが
e-g-gさんを西行熱に罹らせたという 『西行花伝』
是非読んでみたくなりました。

春はフォーレ
一曲目は 春が遠くから近づいてくるときめきを♪
二曲目は 春が来た! その喜びを♪

素敵な曲を聴かせていただきました^^
by タックン (2012-04-01 19:58) 

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