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熊井正個展 触覚 爪とボタン [絵の周辺と展覧会]

20101010_KumaiTadashi.jpg

“描くことの意味を考えたとき、思い当たるのは、触れる感覚です。何かに触れ、そして動かすことで生ずる感覚です。
                ・
                中略
                ・
触れる感覚、その衝動を手掛かりに、また新たな気持ちで描き始めました。手を動かし、そして見て、手を動かし、そして考え、それを繰り返し続けていく過程を、様々な要素と表現で見せる、一つの試みです。”(『熊井正個展 触覚 爪とボタン』の案内状より一部抜粋)

常に手を動かし何かを描いている姿、それが二十数年前に知り合って以来、変わらないイラストレーター熊井君の印象だ。最近は年に二三度ほどしか会わないし、一緒に取り組む仕事も絶えて久しいけれど、描いたり作ったりする話になると子供っぽく輝く目はずっと変わらない。私よりはぐっと若い世代の作家だが、初めての出会い以来ずっと刺激を受け続けている。

今回の個展は毎週末の三日間(金・土・日)それが4回開かれる。そのあいだ、作者はずっと会場に滞在している。いや泊まり込んでいる。ということは、きっと案内にある“繰り返し続けていく過程”とおおいに関係があるに違いない。雨の中訪れた昨日は、始まってまだ二日目、さて最終日に近づくとどんな変化が起きているのだろう?

ところで、この個展の様子を伝えるのはなかなか難しい。ドローイングなどのひとつひとつはもちろん作品ではあるが、例えば、会場の踊り場に設えられた神棚は、なんと伊勢神宮まで出向いて手にしたお札を納めた熊井君の自作であるという。

会場も一風変わっている。人はあるスペースに入ると、なんとなく臍を探そうとするものだが、この会場はその無意識の感覚を消し去るような空間だ。時間が経つにつれて、そんな会場のそこかしこに潜んでいるアイデアやら「思い」やら、そんなモノとコトが、じわじわっと現れてくるのである。

ま、それにしても文章化するのはなかなか大変、ということで『展覧会紹介』をそのまま載せる。
______________
触覚 爪とボタン 展覧会紹介
本展覧会は熊井正による個展です。
熊井正は鉛筆やペンキ、インク、油絵具などを使ったドローイングの他、MacやiPhoneといったデバイスを利用した作品、Tシャツの制作など多岐に渡る作品を展開しています。この個展では、氏自身がここヨコハマアパートメント・ムーンハウスに短期滞在し、制作された作品を中心に展示しています。また、作品の展示だけではなく、谷口広樹氏、都筑潤氏や保坂和志氏、古谷利裕氏とともにトークイベントを行い、アートとイラストの境界や、描く事それ自体について考えていきます。会場構成は建築ユニット403architectureが担当し、準備段階からコラボレートしアイデアを共有することで、空間と一体的な作品展示となっています。
______________

会場のなかにちょっと大きめの作業机がある。
そこに置かれているのは、筆や絵の具、カメラ、サンドペーパー、Mac用のマウス、、、
作家の作業場が会場に引っ越してきているのである。
会場に据えられた三角形のテーブルは、いまは合板の生地そのままだが、
これにもいずれ描き込みがされるらしい。
話の合間に見せてもらった“落書き用のペン”を使うのだろうか?
片隅には描かれることを待っている数十枚のコンパネ、
今月末、そこにどんな触覚の跡が見られるのだろう?

参考リンク(会場の様子など、私の拙い文章よりこちらを見た方が早い)
熊井正ホームページ:http://www.tadashikumai.com/
熊井正ブログ:http://blog.tadashikumai.com/
ヨコハマアパートメント・ムーンハウス:http://d.hatena.ne.jp/ondesign1/

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よしあき・ギャラリー

柔軟な発想を維持するのは大変難しいですね。
いつの間にか固まってしまいます。
by よしあき・ギャラリー (2010-10-11 05:35) 

mimimomo

おはようございます^^
熊井正さんって名前をどこかで聞いたような・・・
本の挿絵のようなものを描いていらっしゃるかしら。
この絵の感じもどこかで見たことが・・・
by mimimomo (2010-10-11 07:32) 

gwan3

多才な方なのですね。
おもしろい案内状(ポスター?)ですね。
by gwan3 (2010-10-11 11:45) 

masa

e-g-gさん、本日はありがとうございました。
またまた的確なアドバイス頂き、次回までの課題です^^

うわっ、これは面白そう!
というか緊張感あるような。。。
都築さんのトーク、何度か聴いていますが
とっても丁寧な方で勉強になります。でも終わってしまったのね;;
それにしても通いたくなるような個展ですねー
by masa (2010-10-12 02:15) 

e-g-g

◎よしあき・ギャラリーさん
>柔軟な発想を維持するのは大変難しい・・・
そう思いますね、
それと、もう固まってしまっても良いかな?という誘惑も起きます。
でも、様々な表現に触れるのは素朴に楽しいものですね。

◎mimimomoさん
熊井正さんは、もう長い間一線のイラストレーターとして、
活躍していますから、きっとどこかでご覧になっているでしょう。
ホームページの「WORKS」に過去の作品もありますので、
よろしければご覗いてみてください。

◎gwan3さん
これは案内状です。
熊井さんの表現の根っこはすごくシンプルなんですが、
それを思いがけない手段で見せてくれる、その楽しみがあります。

by e-g-g (2010-10-12 11:46) 

e-g-g

◎masaさん
いえいえ、こちらこそ。
肝心のトーク、ワタシは聞き逃しました、、、
(出かけようと思ったとき、すでに始まってしまって)
今月の末までやってます。
ちょっと分かりにくい場所ですが、
機会がありましたら、どうぞ足を運んでみてください。

by e-g-g (2010-10-12 11:51) 

ミモザ

これも個展なのですね。面白い案内状ですね。
秋は個展に行きたい季節です。近かったらいいのに(^^)
by ミモザ (2010-10-13 07:10) 

tano

原田宗典さんの『スバラ式世界』は読んだことがあります。
あのイラストを描かれたんですね。
by tano (2010-10-13 22:53) 

e-g-g

◎ミモザさん
毎週のように個展の案内状が届きます。
カレンダーとにらめっこの秋ですね。

熊井さんの個展は、一週間ほどが過ぎました。
どんな風に変わったか?楽しみです。

◎tanoさん
コメントを、ありがとうございます。
『スバラ式世界』の装幀ですね、
熊井さんは本の装幀も多く手がけていますが、
なかなか心に残るものが多いですよ。
ただ、私はこの本を見ていません、こんど探してみましょう。

by e-g-g (2010-10-14 18:26) 

いそしぎ

tanoさんのコメントを見て、ああ、そうでしたか!と。
本の装幀や帯に書かれた言葉で本を選ぶ事があります。
by いそしぎ (2010-10-14 23:24) 

e-g-g

◎いそしぎさん
そうですか、ご存知でしたか。
装幀と帯の役割は大きいですよね。
私も数は少ないですが装幀もします。
真っ白な束見本を見ながら、さてどんなイメージに?
これは、なかなか楽しいものです。
ただ、帯のデザインにはけっこう苦労させられますね。
一種の絵としても存在できるような装幀と
有効な広告として機能する帯の違いでしょう。
by e-g-g (2010-10-15 12:07) 

東雲

ずっと刺激を受け続ける・・・
そういう人がいるって 幸せなことですよね。

横浜ですか・・・。
来月だったら行けない事もなかったのになぁ・・・。
by 東雲 (2010-10-15 17:00) 

e-g-g

◎東雲さん
私と熊井さんとは15歳ほど離れてますが、
刺激をされるのにその差は関係ありませんね、
ずっと大事に付き合いたいものです。

来月、東京ですか?楽しみですね。
by e-g-g (2010-10-15 18:13) 

ぶんじん

なるほど、作り続けること、作っていく過程もアートなのかな。それをどう表現するか、人にどのように伝えるかは難しそうですが。
by ぶんじん (2010-10-15 22:01) 

e-g-g

◎ぶんじんさん
>作っていく過程もアートなのかな
そうですね、一種のインスタレーションに近い面もありますね。
会場に来る人とのコミュニケーションから
作者がインスパイアされることもあるでしょう。
4週間にわたる会期のなかで、
どんな変化・触発が起きるか?楽しみです。

by e-g-g (2010-10-15 23:08) 

maki

ちょうど今日友だちからメールが来て、都築潤さんの作品展に行きませんか?と誘われたところでした。
きっとこの展覧会のことだったんですね^^
by maki (2010-10-22 22:30) 

e-g-g

◎makiさん
コメントを、ありがとうございます。
都築潤さんは10月9日のトークイベントに出られています。
この個展は興味深いものがありますので、
機会がありましたら、ぜひ。
by e-g-g (2010-10-24 18:56) 

向日葵

topの絵が、なんとも「素敵!」ですねぇ~ぇ!
by 向日葵 (2010-10-29 00:01) 

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