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群青の海、真名瀬漁港。 [水彩画とスケッチ]

20100302_shinnase.jpg

50年前の『チリ地震津波』という名前は、
津波の恐ろしさと合わせて当時の小学生の頭に刻まれた。
ともかく、大津波警報の3メートルが現実のものとならず、
ひとまずは安堵だろうか。
日本の裏側で生まれた波が、ほぼ一日かけてやってくる、
地球の凄さ。

森戸海岸から南へ少し行くと真名瀬(しんなせ)漁港がある。
この真名瀬という地名、ずっと「まなせ」と読んでいた。
もともとの「名瀬」に「真」が付いたものだろうか、
あるいは「真名」の「瀬」ということか?
いずれにしても「まなせ」でもおかしくはないと思うけれど。

それはともかくとして、ここは『犬の散歩』の浜からは、
たぶん、七、八百メートルほどしか離れていない。
なのに、海に突き出た港の突堤を歩いていくと、
森戸海岸の明るいターコイズブルーはもう見えない。
浜辺から本当の海へ、突然放り出されたような濃い群青が広がっている。

今さらではあるけれど、海の色の変化はとても面白い。
そんなことはこれまでだって、ずいぶんと見てきた。
金魚すくいの盥のように、妙に明るいボラボラ島の浮き世離れした海、
茫洋としてほんの少し薄茶けたサンタモニカの海、
鈍色の海面に夕日の射す日本海、これは冬の弥彦山から見た。

世界中の海ともっと仲良しの人からすれば、
大した経験ではないけれど、やはり忘れ難い記憶だ。
陽のあたり加減で実に様々な顔つきになる海の、
その表情に出会えば写真も撮ってきた。

いろんな海を思い出しながら描いてみると、これがまた難しい。
描けば描くほど、目の前の印象が遠ざかる。
そう言いながら描く。
シャッターを押すと直ぐに「次ぎ」に目を移してしまう
私のような堪え性のない人間には、これも良いのだ。
描くことで見えてくるものがあるのだから、
まぁ、そう信じて。

2010年3月1日・葉山・真名瀬漁港
(現地を訪れたのは2月6日)
F6(39.5×31.5cm)ホワイトワトソン

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コメント 26

よしあき・ギャラリー

北斎の富嶽三十六景を思い起こしました。
波の表現が巧みですね。参考にさせていただきます。
by よしあき・ギャラリー (2010-03-03 13:54) 

mwainfo

私は絵を描くくのは苦手ですが、観賞するのは大好きです。「今さらではあるけれど、海の色の変化はとても面白い」、とありますが、納得です。
城ヶ島の先端の岩場に砕け散る波の様相を見ていると、海は時折、青ではなく、緑に見えます。モネは一日に25枚も睡蓮の絵を描いたと聞きます。
by mwainfo (2010-03-03 17:28) 

gwan3

波頭がパシャッと砕ける感じがいいですね。
海の色の描き分けもさすがだとおもいました。
それにしても、文章がいいですね。
by gwan3 (2010-03-03 17:55) 

daland

daland です。
深い青ですね。
これが”群青”の青なんですね。
波頭の白がまた青を引き立ててるんですね。
by daland (2010-03-03 22:33) 

oira

私、実は。
クールベの「波」が好きです。
荒涼として、寒々しい荒波!
「プルシャンブルー」に更に緑を加えて
「プルシャングリーン」色の海。

『群青の海、真名瀬漁港』
白波の彼方に見える「未来」
想像させていただきました。
by oira (2010-03-03 23:48) 

鋭理庵

漁船が帆をたたんでいるので、港に向かって走っているのが分ります。

比較的、海の傍に住んでて良かったと富岡沖を見て思う時があります。休日にはヨットが白い帆をアクセントに沖の方に沢山見えます。群青の青に近い表現をする時が、冬の晴天の風の強い日に散歩の途中、ちょっとした高台から見える事があります。残念ながら、東京湾なので相模湾のように富士山は見えませんが....。
by 鋭理庵 (2010-03-04 01:11) 

いろは

こんにちは^^
群青色、とても素敵ですね!
私も帯揚げと帯締めに使っています。
最近地震が多くて恐ろしいです。
今日も台湾で地震が・・・
by いろは (2010-03-04 15:16) 

こぎん

気持ちがスカッとするブルーです。
私の記憶のふるさとの海はいつも灰色。
でも、石の浜は透明度があって、底が見えて・・・
そこにはウニなどの宝物が・・・(^w^)
結局、食い気かい? 海は宝物ですね~^^;
by こぎん (2010-03-04 18:42) 

akipon

描くことで見えてくることがある、同感です。
何事もやってみることが大事・・・春が来ると同時に
気持ちも盛り上げて頑張ります。


by akipon (2010-03-04 23:39) 

すずめ

群青という呼び方を忘れていました、日本語は色の呼び方も素敵ですね。
私とっての海は、幼い頃にいつも見ていた唐津の海です。
by すずめ (2010-03-05 01:15) 

e-g-g

◎よしあき・ギャラリーさん
神奈川沖浪裏ですね、
やっぱり北斎もこんな風景を見ていたのかなぁ、
と一瞬ですけど思いました。
で、あんな凄い絵のことはすぐに忘れました。

◎nwainfoさん
この二週間後に城が島に行きまして、
岩場からの波もすいぶんと眺めました。
中途半端な曇天のため、絵は描きませんでしたが、
また見たいですね。
抜けるような晴れの日、あるいは嵐の時なども。

◎gwan3さん
「海」ははまりそうです。
色、波のカタチ、どんどん変わるその様子を
もっと捉えたいものです。

◎dalandさん
この海の印象は、どちらかと言えば
もう少し濃くてくすんだ感じのシーブルー(藍色)の
ほうが近いかもしれません。
群青はウルトラマリンのことですから、
ちょっと派手ですね、色の名前は難しいです。

◎oiraさん
クールベの「波」はどれも情念がこもった印象ですが、
ああして何枚も描く気持ちがほんの少し
分るような気もします。
とにかく見飽きることがないですね。

◎鋭理庵さん
そうです、この船のすぐ前方が港です。
冬は見通しが効いて良いですね。
もう少し通えば良かったと思っています。
でも、これからの春霞の季節、
どんな表情を見せてくれるのか、それも楽しみです。

◎いろはさん
手のお具合の方は如何ですか?
わざわざのコメント、ありがとうございます。
群青色は洋名でウルトラマリンなのですが、
そう言ってしまうと、何か違うなぁ、とも思います。
和装の群青、素敵でしょうね。

◎こぎんさん
ハイ、気持ちをスカッとさせて描きました。
でも、ちょっと丁寧さに欠けますね。
ウニなんかが見えたりしたら、
ワタシも絵なんか描っきませ〜ん
そりゃ食い気ですよ!

◎akiponさん
描くのはほとんど考えることと同じです、
なんとなく良いと感じたイメージを、
少しづつ頭の中に定着する、そんな感じです。
ま、いろいろやってみましょう。

◎すずめさん
子どもの頃の記憶では「ぐんじょういろ」です。
独特の響きのある名前ですね。
唐津の海、どんな色あいなのでしょう?

by e-g-g (2010-03-05 15:29) 

東雲

こんにちは。
「群青」という言葉、そしてその色合い、好きです。
今回の海は とても男性的、に思えました。
「海シリーズ」楽しみにしています。
by 東雲 (2010-03-05 15:54) 

響

深い青を群青色って呼んでいましたね。
黒潮らしい深い色の海が印象的です。

by (2010-03-05 18:40) 

ガマさん

こんばんは
波の青さが良いですねー
荒い波の感じが素晴らしいですね。
by ガマさん (2010-03-05 20:23) 

e-g-g

◎東雲さん
海を描いてみると、つくづくと海を知らないな、と思います。
もっといろいろな海を見て、たくさん感じたいものです。
群青色だけでなく様々な青も知りたいですね。

◎響さん
「ぐんじょういろ」、妙に懐かしいんですよね~
ほんとうはその色に近いのかどうか、、、
ですけどやっぱりイメージとしては群青の海です。

◎ガマさん さん
めまぐるしく変わる海の表情を、
もっとしっかりと捉えたいですね、
もっともっと描かないと、です。

by e-g-g (2010-03-07 22:35) 

SilverMac

津波は南海地震で経験しました。ブルーがキレイですね。
by SilverMac (2010-03-07 23:18) 

mimimomo

おはようございます^^
昨年でしたか、静岡県の日本平の辺りを歩きました。
そのときの海の色、波の様子を思い出します。
場所は違いますが、東京湾の稲毛海岸とは違った海の風景が
思い起こされます。
by mimimomo (2010-03-08 09:15) 

ももこ

色を覚え始めた子供のころから、
群青色に強い関心がありました・・
深い海の色がとてもきれいで
憂いのような感じが惹きつけるのかも知れません。
by ももこ (2010-03-08 11:10) 

e-g-g

◎SilverMacさん
四方を海で囲まれた日本は、津波の国でもありますね。
私は、南海地震のときはまだこの世におらず、
1960年のチリ地震が津波を知った最初です。

◎mimimomoさん
季節、時間帯によって様々な表情を見せる海、
もっといろんな海を見たいものです。
稲毛海岸も、たとえば早朝などにいちどは訪れて見たいです。

◎ももこさん
ぐんじょういろ、はだいろ、だいだいいろ、
クレヨンに印刷された平仮名の名前を思い出します。
私も「ぐんじょういろ」は強い響きと一緒に
けっこう記憶に残っています。

by e-g-g (2010-03-10 10:37) 

e-g-g

◎niceを頂いた皆様、ありがとうございます。

by e-g-g (2010-03-10 10:37) 

侘び助

素晴らしい波の色
一昔前、陶磁器の転写の印刷をしたことが・・・
色指定に四苦八苦しました。海碧に黒を混ぜたり、グリーンを混ぜたり
by 侘び助 (2010-03-10 15:27) 

be-sun

素晴らしい
by be-sun (2010-03-10 19:03) 

HEIJI

なんだか「風」を感じる海面の絵ですね。
海の色は深さによって違うのでしょうか。
岬を回るとそれまでと全く違う色だった、なんて経験が自分にもあります。
そういうふうに海を見て回るのはとても好きです。
by HEIJI (2010-03-10 22:02) 

いそしぎ

空と山は穏やかな表情のように見えます。
それが、荒々しい波をいっそう引き立てているように感じました。
優しさも厳しさも、自然にはあるんですね。
by いそしぎ (2010-03-11 00:18) 

茶菓子

e・g・gさん、
素晴らしい風景画の数々、勉強になります。
これからも拝見させていただきます。
by 茶菓子 (2010-03-11 21:47) 

e-g-g

◎侘び助さん
以前に瀬戸と九谷で転写の工程を見学しましたが、
色について初めて知ることも多かったです。
考えてみれば転写も色指定が肝心ですよね、
私はもっぱら紙媒体が中心ですが、
青系統に深みが欲しいときは、
僅かに赤味をさしてもらいました。
ともかく海の色は一様ではありませんね、、、

◎be-sunさん
ありがとうございます。
実際にはもっと豊かな海の色の階調、
見返すと、ちょっと単調だったかな?とも思います。

◎HEIJIさん
>岬を回るとそれまでと全く違う色、
その驚き、たしかにありますね。
この日は歩きなので大した移動じゃないのに、
その突然の変わりかたに驚き!でした。
近い内に、また行きたい!

◎いそしぎさん
遠景は仰るとおり、けっこう長閑なんです。
で、目の前の海は風が吹き荒れて!
そのギャップも面白かったです。

◎茶菓子さん
コメント、ありがとうございます。
これからもぼちぼちと描いていくつもりです。
またご笑覧ください。

by e-g-g (2010-03-16 12:52) 

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