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日本民藝館、西館。 [水彩画とスケッチ]

20090708_mingeikan_nishi.jpg

 東京目黒区の駒場にある日本民藝館、その西館。もともとは民藝館の創設者の柳宗悦の住まいだった建物である。柳は益子に窯を構える浜田庄司のもとを訪ねるうちに、大谷の石蔵に親しみを覚えたらしい。大谷石の石屋根もその経験の中で見つけたものと思う。

 その柳宗悦がこの駒場に住まいを構える際に、栃木から移築したのがこの長屋門である。およそ昭和9~10年頃の話。


 子どもの頃、私の育った横浜でも、たとえば腰下に大谷石を使った建物は結構見た記憶がある。ただ、この長屋門のように屋根に大谷石を使った建物は見たことが無い。

 この屋根は、1963年と最近では2001年に葺き替えられている。瓦の重さも数十トンということだから、半端な骨組みでは持たないだろう。30年も経つとなんとも頼りなくなってしまう昨今のコンクリート造りとは筋金の入りかたが違う、すごいものだ。

 長屋門というだけあって南北に長い建物である。絵はその南端の部分。ほんとうはこの左右に長い建物を真正面から描きたかった。しかしながら正面の道幅は狭く、その道を越えると民藝館本館の敷地になってしまう。といった次第で、正面からのスケッチポイントは確保できない。こんどは、分割してスケッチをして合成してみようか?などと考えてもいる。上手くいくかどうかは別にして。

 それはともかく、いざ描こうとするとこの大谷石の屋根瓦、メリハリ感に乏しく、さらにはザラっとした質感も、少し離れるとフラットに見えたり、けっこう厄介だった。現地で実際に見る分には柔らかく品のあるトーンが好ましいのだけれど。


 この界隈は静かで落ち着いた環境が好ましい(生活感はあまり無いけれど)。最寄り駅は京王井の頭線の駒場東大前。以前に描いた旧前田侯爵邸はお隣、そのときにも書いたが、この静かな地が渋谷から二駅目とは、何度訪れても信じられない。

日本民藝館・西館
F4(24×33cm)・ワトソン

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のすけの母

法隆寺の柱についての話で、木は切り倒されてからしばらくは強くなるようなことを読んだ覚えがあります。
木の文化は凄いです!!

そして、この絵の空は、やはり梅雨空なのでしょうね。
今にも雨が落ちてきそうです。
by のすけの母 (2009-07-08 17:03) 

ミモザ

素晴らしいですよ~~(^_^)/
e-g-g さんは几帳面な方のようですね。きっちり描かれていて
とてもマネできないと思います。
ドッシリして風格が感じられますね。大谷石って昔は帝国ホテルにも
使われていましたね。懐かしい感じがしました。(本で読んだだけですが)
by ミモザ (2009-07-08 20:09) 

よしあき・ギャラリー

旧前田侯爵邸は描いたことはあるのですが、日本民藝館は知りませんでした。
大谷石の屋根とは、見当がつきません。
これぞ、水彩画ですね。手を止める思い切りの大切さを知りました。^^;
by よしあき・ギャラリー (2009-07-08 20:14) 

鋭理庵

いくつものnice!ありがとうござます。
貴ブログ、いつぞやか拝見させて頂きましたのを思い出しました。このように水彩画が、自由にお描きすることが出来ると楽しいでしょうね!
貴兄との共通項はMusicとBicycleですね、Musicはバロック音楽とJazzです。Bicycleは昔のランドナータイプのブリヂストン ユーラシアです、28年間乗っています。
これを機会に貴ブログ更新の都度、寄らさせて頂きます。
by 鋭理庵 (2009-07-08 20:14) 

mio

全体のトーンが淡く優しい感じでいいですね。
屋根が大谷石ですか!!
驚きです。
by mio (2009-07-08 21:31) 

春分

「柳宗悦の住まいだった建物」があるのですね。それは見てみたい。
大谷のすぐそばに住んでますから大谷石はなじみ深いのですが屋根は見ないです。
by 春分 (2009-07-09 05:53) 

mimimomo

おはようございます^^
そんな素晴らしいものがあるのですか。
まだまだ知らないところが一杯です。
いつものことながら、絵がとても素敵で
ホッとさせられます~
by mimimomo (2009-07-09 07:29) 

こぎん

柳宗悦の民藝運動自体を尊敬しております。
企画展はチェックして、行こう!と思っているのですが、
そう、遠くはないはずなのに・・・なかなか頻繁には行けない場所なんです。


by こぎん (2009-07-09 11:12) 

いろは

こんにちは^^
大谷石の屋根というのは見た事がありません。
お恥ずかしいお話ですが、駒場に日本民芸館があることも知りませんでした。近くなので、機会を見つけて訪れて見たと思います。

柔やかなタッチの素敵な絵ですね〜♪
屋根の大谷石、やはり瓦とは違う感じがいたしますね。
by いろは (2009-07-09 14:08) 

e-g-g

◎のすけの母さん
西本願寺御影堂の大修復の様子をテレビで見ましたけれど、
ここでも木の威力は凄かったですね。
この先、その力を使いこなす技が伝わっていくのか、
ちょっと心配ですね。

絵の方は、実は梅雨入り前に凡そのところまで
描いてあったものです。
ただ、陰影の少ない曇り日でした。
こういった光線の日はメリハリ感をつけにくいです。

◎ミモザさん
けっして几帳面な性格ではないのですが、
今のところ描くとこうなってしまいます。
抜くべきポイントを、もっとおさえられれば良いのですが。
帝国ホテルの大谷石はライト設計のものでしょうか?

◎よしあき・ギャラリーさん
前田邸と民藝館はほんとうに隣り合わせです。
機会がございましたら、是非。
手を止める思いきり、、、
どんなタイプの絵でもこれが一番難しいでしょうね~

◎鋭理庵さん
niceを押すだけで失礼いたしました。
このところ絵づくしになっていますが、
もちろん音楽も自転車も欠かせないものです。
音楽は若い頃の熱中からは冷めましたが、
折りに触れて聴いております。
ジャンルを問わずですが、精神を集中させて相対するのは
やはりクラシックとなります。

自転車は、たぶん18年くらい乗っているMTB、
もう少しロード寄りにしたいもの、と
この二、三年思案中です。
最近はちょっとサボっていますが、
いつでも漕ぎ出せるように空気圧だけはチェックしています。

ブログを開かない日も多々ありまして、
失礼させていただくことが多いとは思いますが、
またお寄りいただけましたら幸いです。

◎mioさん
派手さは無いのに存在感は十分、
自然素材でしっかり作ったものは見ごたえがありますね。
大谷石の屋根、私もここの他には見たことがありません。

◎春分さん
大谷のそばにお住まいなんですね、
柳宗悦は日光街道でこの長屋門を見つけたとのことです、
界隈には、いまでも大谷石造りの建物は残っているのでしょうか?
いちど訪れてみたいものです。

◎mimimomoさん
たまに目にする民藝館の収蔵品は、
やはり、目を休ませてくれます。
落着いた建物と合わせて、やはり珠玉のような場所と思います。

◎こぎんさん
今は『特別展 西洋家具の美』、
そして次回は『柳宗悦の世界 生誕120年記念特別展』、
となっております。
ご来館のほど、心よりお待ちしております。

いや、私もこのところちょっと覗いていないので
行かなければ、、、

by e-g-g (2009-07-09 18:20) 

e-g-g

◎いろはさん
駒場のこのエリアには、
民藝館と前田邸、それと日本近代文学館があります。
民藝館では、いま珍しく西洋家具の展示中です。
18世紀の英国家具が中心のようですが、
なかなか面白いのでは?と思います。
是非。

大谷石の屋根は抑揚に乏しく、やや苦労しました。

by e-g-g (2009-07-09 18:27) 

U3

大谷石は吸水率が高く風化しやすいので吹き替えが必要なのでしょうね。
たぶん大谷石よりは鉄筋コンクリートの方が(正しく施工されたものであれば)耐用年数は20年以上長いと思われます。
by U3 (2009-07-09 20:03) 

HEIJI

石屋根の重厚感というか、石らしさというか、伝わってきます。
ザラっとしてるけれど、離れてみるとフラット・・そんな質感もよくわかります。(難しそうですね)
勉強になりました。
by HEIJI (2009-07-09 23:11) 

e-g-g

◎U3さん
ボロボロに風化した大谷石の壁など、よく見かけますね。
その素材を屋根瓦に使う理由が気になります。
柳宗悦の見立てはどのあたりにあったのでしょう?
描く時間を割いて、ちょっと調べてみたいものです。

by e-g-g (2009-07-10 23:09) 

e-g-g

◎HEIJIさん
花のあとに描くと、石はやっぱり硬いですね、
でも、大谷石はなんともいえない風合いがあります。
見ている分には、
その柔らかなイメージが良いのですけどね、、、

by e-g-g (2009-07-10 23:20) 

旅爺さん

凄く上手いですね。
大谷石の石屋根の雰囲気が実に素晴らしいです。
大谷から我が家は近いんです。
by 旅爺さん (2009-07-11 06:58) 

奥津軽

柔らかいタッチでステキな絵ですね
私にもこんな才能があったなら・・・・
by 奥津軽 (2009-07-11 07:20) 

e-g-g

◎旅爺さん さん
大谷の近くにお住まいですか、
私はまだ訪れたことがありませんが、
どんな街の風情なのでしょうね、
大谷石を探しにいちど行ってみたいです。

◎奥津軽さん
コメント、ありがとうございます。
奥津軽さんの写真を拝見して、
あぁ、こんなところで描いてみたいな、と
思うことがありますよ、
いろんな日本を訪ねて回りたいですね。

by e-g-g (2009-07-12 21:25) 

e-g-g

◎xml_xslさん

◎Krauseさん

◎cheeさん

◎青の風画さん

◎Comat!さん

◎SILENTさん

◎とりのさとZさん

◎flutistさん

◎murasawaさん

◎はじ坊さん

◎watamiさん

◎KAZUYAさん

◎miopapaさん

◎ぽこぺんさん

◎のりさん

◎アマデウスさん

◎わかさん

◎ちかさん

◎一真さん

◎りぼんさん

◎COCOさん

niceを、ありがとうございます。

by e-g-g (2009-07-12 21:32) 

匁

ガチッとした頑丈そうな雰囲気出ています。
いつ行かれたんですか?
だんだん暑くなってスケッチも難しくなります。
by (2009-07-13 07:15) 

響

何気ない建物の一角ですが
日本建築ってどの角度から見ても美しいですね。
植え込みとのマッチングがとても良いです。
by (2009-07-14 11:17) 

masa

民藝には興味あって、いろいろ勉強してるくせに
民藝館には行ったことないんです。
何だか縁が無いのでしょうか。。とほほ。。
でも、『柳宗悦の世界 生誕120年記念特別展』は是非!!
見にいかないと!!ですね〜
お知らせありがとうございます〜^^

大谷石の屋根とは知りませんでした
またもや質感が出てますね〜☆
by masa (2009-07-14 23:11) 

e-g-g

◎匁さん
この絵、スケッチは梅雨入りの前です。
仕上げはそれからずいぶんと後ですが、
現地でスケッチした日はまだ暑く無かったです。
関東も梅雨明けしたとか、
真冬の切るような寒さも辛いですが、夏も苦行ですね。
まず、道具を入れたバッグを肩から下げて歩くだけでもたいへんです。

by e-g-g (2009-07-14 23:12) 

e-g-g

◎響さん
描いていると日本建築の勉強をしたくなりますよ。
普通の民家でも地域によっていろいろ特長がありますよね、
屋根瓦の色とかもずいぶんと違ったり、
そんな日本建築の微妙な違いを訪ねて歩きたいですね。

by e-g-g (2009-07-14 23:17) 

e-g-g

◎masaさん
なかなかお邪魔できなくて、ゴメンナサイです。
さて民藝館、ぜひ訪ねてみてください。
ここはちょっと変わっていて展示品の説明が少ないんですよね、
頭で考えるよりも、まず見て直感的に感じるものを大事にしなさい
ということと思いますけど。
ただ、特別展はそれなりに、かなとも思いますが。
行かれる時は隣の旧前田邸とかも合わせて、
のんびりされると良いですね。

大谷石の屋根、真夏の強い日差しを受けて
光るような(たぶん)そんなシーンも描いてみたいですね、
でも、めんどくさそ、、、

by e-g-g (2009-07-14 23:27) 

barbie

柳宗理さん、好きなんで、日本民藝館には一度行ってみたいと思っています。
ステキな建物ですね。
by barbie (2009-07-21 23:13) 

e-g-g

◎barbieさん
柳宗理は、長いあいだ民藝館の館長でしたね、
氏のモダンデザインの源流に民藝はどんな影響を与えたのか?
興味深いところです。
本館はなかなか立派な建物です。
東京に来られる折には、是非。

by e-g-g (2009-07-22 17:49) 

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