勘違いのもと。 [日々のデザイン]
文具店で細々とした買い物をするついでに、家人から「修整テープ」の替えを頼まれた。たぶんカートリッジ式で中身の替えがあるはずだから、と言われて。
私自身は使わないものなので、念のために現物を持っていった。ひととおり買い物を済ませ「修整テープ」のコーナーに行くと、該当の商品がない。形は似ているけれど商品名が違う。近くにいた店員に訊ねると“似てますけど、違う商品のようですね。メーカー違いですけど、こちらの方で如何でしょう?”と。
使い切った「修整テープ」、その容器をそのまま捨てるのも、なんだかもったいない気もするけれど、きっと廃番か何かで店頭から消えたのかもしれない。ならばということで、新しい「修整テープ」と替えのカートリッジもついでに買った。(写真の右側が「使い終わった」もの)
二三日後、家人が“これ、修整テープよ!頼んだのは糊なのに、、、”と。一瞬なにを言われたのか分からなかった。頼まれたものを買ってきたはずなのに何が違うのだろう?
家人の手元を見ると、封筒のフラップに修整テープが貼られているではないか!
ここまで来て、ハッと気が付いた。「修整テープ」ではなく「テープ糊」を頼まれたのだ。そういえばその品物にプリントされている「PiT」というのは糊の製品名、スティック状のものなら私も使っている。
さて、なんでこんな頓珍漢な間違いをしたのか?
ワタシ自身は、修整テープもテープ糊も使わない。使わないからその形状が似ていることなどまったく頭に無いし予備知識も無い。ただ、なにやらテープ状の修整テープ(らしきもの)があるな、という程度の認識だ。
また、「PiT=糊」という関連を素直に思い浮かべることが出来れば、この間違いは未然に防げたかもしれない。しかしながらハナから修整テープと思いこんでいるから、この回路は閉じている。ヒトの頭は厄介だ、いや単純なのだ。
要するに思い込みというヤツだ。カタツムリのような形と何となく透明感のある容器(というか外装)、それは修整テープなのだ!という思い込み。
ただしかし、店員も「その違い」に気づかなかったではないか。たんに商品知識の不足といってしまえばそれまでだけど、持参した修整テープを見ながらけっこう真剣に探してくれて、その果てに間違えた。
このことを考えると、そもそも「修整テープ」と「テープ糊」は間違いやすいものではないか?という疑念・その1が生まれる。
二つの製品を見比べると、「修整」と「糊」このどちらの表示もない。「糊」の方にはかろうじて「PiT」とあるだけだ。この「PiT」だって、それが糊だということを知らない人にとっては、たんなる符号である。決して「糊」の変わりにはならない。
ここまで観察して、なぜこんなに間違えやすい風体のまま商品化するのかという疑念・その2が浮かぶ。
商品パッケージの台紙をよく見ると、たしかに右上に「修整テープ」と印刷されている。が、本体には何も書かれていない。使い切ったテープ糊の方は残念ながら台紙も残っていないから、なんとも言えないがたぶん同じような感じで「テープ糊」と表示されているのだろう。
だから、店頭時点では過不足のない情報となっているはずだ。ただ、いったん台紙から外して製品だけになった場合(通常はこの状態が長いはず)、「修整テープ」と「テープ糊」を識別する手がかりはきわめて少ない。
この二つを机の引き出しにきちんと仕舞って、いつも几帳面に使う人ならば、たぶんこの二つの製品の微妙な差を見分けて、使いこなしているだろう。
でも、たとえば、リビングの壁際にある領収書やら小銭やら病院の診察カードやらなにやらが、ギュッと詰め込まれた引き出しの中に、無造作に入っていたりするのが、こういうものである。
そんなごく普通の使用場面を考えると、モノそのものをもっと分かりやすく正確にデザインすべきではないか?と思う。
「修整用」とか「糊」といった表示を大きく入れておくという方法もある。あるいは容器(というのかどうか)自体の色を、たとえば修整テープは青、糊は赤、といったように決めておくという方法もある。これは、その業界全体で進めないと意味がないけれど、浸透すれば効果は大きいと思う。
メーカーの立場からすれば、修整テープと糊なんて間違いようがない、そもそも型番も違うし、、、といった感覚かもしれない。少なくとも、この商品を扱う問屋レベルまでは、間違いようのないことなのかもしれない。
ただし!である。この段階で間違いがないからといって、それで終わりという問題でも無い!と思う。
こういった使用時の混乱は、その製品が実際に使われる場面を想像してみれば、かなり容易に分かることと思うけれど、どうだろう。
修整テープもテープ糊も、テープ状のものを紙に押しつけるなりして使う。そのテープの巾も似ている(いや同じ?)。とすれば、そのテープをセットする容器の構造は基本的に同じでも良い。
と、ここまでは、製品の構造を詰める際のごく普通の筋道ではないかと思う。であるならばなおさらのこと、使う場面を考えて、間違いを引き起こさないための工夫なり配慮が必要と思う。そこまでをキチッと詰めて、初めてプロダクト・デザインと言えるのではないか。
(製品をよく見ると「テープ」の出てくる「口」の角度が90度違っている。これはたぶんそれぞれの使い勝手を考えて配慮した結果だろうから、構造の決め方が安易だとは決して言えない。細かいところは良くできていると思う)
さてこの記事、買った本人の思い込みに端を発しているのだから、ちょっと八つ当たり気味ではある。それに、こんな間違いをしでかすのは、きわめて稀なことなのかもしれない。けれど、なんとなく釈然としないのも正直な実感で、モノを世に送り出すには、もうちょっとは神経を使おうよ、とついつい思ってしまうのである。
さぁ、使うアテのない修整テープ、どうしよう。
2008-09-19 19:26
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コメント(23)
私は日々仕事で修正テープのお世話になっています。
もっと前は修正液でしたが、ぼとっと液が落ちて固まると、そこに文字を書くのは難儀でしたので、修正テープの出現は嬉しい限りでした。
で、テープ糊!
これは知りませんでした。
こんなのあるんですね。
この記事を読まなかったら、きっと間違えたと思います。
by のすけの母 (2008-09-19 20:27)
これはみんな間違えそうです。
テープ糊の認知度が低いのも原因でしょう。
僕も知りませんでした。
うっかり者ですので修正テープのヘビーユーザーです(笑)
by 響 (2008-09-19 20:29)
私も何度も間違えて・・・以来、テープの出口を確認して使っていましたが、最近はなるべく形状の違うデザインを選んでつかってま〜す(笑)。
さて、使う当てのないテープって困りますよねぇ。
・・・そうだなぁ・・・
日暮里駅のガムテープ案内板のごとく、机とか壁とかに案内文字を書いてみようかなぁ・・・爪でクリクリこすれば剥がせるし。。。
by komadamu (2008-09-19 21:10)
文具類も日々進歩しているんですねぇ。
私もテープ糊なるものがあるなんて、この記事を読むまで
知りませんでした。
同じ間違いをする自身があります、、、。
by カズ− (2008-09-19 22:32)
わたしもテープ糊というモノを知りませんでした。
だから頭の中はきっとあっちの方です。(笑)
思い込みで失敗よくあります。
日にちとか時間は汗たら〜〜ですよ。(笑)
慌てん坊なのかなぁ〜。
by berry (2008-09-20 07:12)
仕事で修正テープを愛用していますが、
テープのりというのがあるのですね!
そっちの方にびっくりしました。同じデザインなら
絶対間違えちゃいますね~☆
by masugi (2008-09-20 23:54)
修正テープなしで暮らせないananです。「使うアテのない修正テープ」、大丈夫、ワタシ承ります。
修正テープ大好きのワタシは、ある日薬屋さんのギブアウェイで、修正テープと全く同じ形の糊のあることを知りました。ン、これは面白い!と早速重宝しておりますよ。見分け方は?って。幸い色が違うので。修正テープは緑、糊テープは紫です。
でもおっしゃるとおり、はっきり「糊」と表記するべきです。
by anan (2008-09-21 11:19)
◎フェイリンさん
◎xml_xslさん
◎Nicoli♪さん
◎カフェオランジュさん
◎一真さん
◎スカピオサさん
◎POPさん
◎Krauseさん
ナイス、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-09-21 15:36)
◎のすけの母さん
乾くのを待ちきれずに上書きして悲惨なことになったり、
コピー機のガラスにくっついてしまったり、
修正液、懐かしいです。
テープ糊の存在は私もよく知りませんでした。
知らないこと、それが間違いの始まりでした。
◎響さん
もし「テープ糊」をお買い上げになる場合は、
間違わないように、くれぐれもご注意ください。
◎komadamuさん
間違われる方がいると分かって、ちょっとホッです。
>日暮里駅のガムテープ案内板
これは知りませんけれど、
察するにテープで文字を書くんですね?
なかなか良いアイデアかと、、、
でも、修整テープでね~
◎カズーさん
さすがにチューブの糊は使いませんが、
せいぜいスティック糊までです。
いろいろ進歩?してます。
◎berryさん
思い込みは物事を前進させるエネルギーでもあるのです。
だから、どんどん思い違いをしましょう。
あまり、実害の無い範囲で、、、
◎masugiさん
テープ糊は、まだまだ認知度が低いようですね。
間違えた私の思い込みも、
すこしは必然のあることなのだ、とすこし安心しています。
◎ananさん
>修正テープは緑、糊テープは紫
これは覚えておきましょう。
でも、それらを使わない私は、きっとすぐに忘れる、、、
by e-g-g (2008-09-21 15:53)
文具もそうなんですが・・・
目が不自由になってくると、説明書きも見えない状態で・・・
悲しい思いをします。
日用品の世界も・・・洗剤類では洗濯・台所・お風呂・トイレ、芳香剤、柔軟剤、歯磨き粉関連、シャンプー類・・・その辺のコーナー、商品多すぎで、似たようなパッケージ・・・
モノが溢れていて、次々と新商品が出ては消え、今まで使って気に入っていたものが見つかりにくかったりして、購買意欲がなくなったり、あれ! 何買いにきたんだっけか? なんて、思うことが多くなりました。
by こぎん (2008-09-21 16:11)
◎こぎんさん
この修整テープ、
本体には「CORRECTION TAPE」と記されています。
が、しかし、あんな小さな文字を誰が読む!?
洗剤も、歯磨きも、シャンプーも、あの容器が無かったら
すごく使いにくいですよね。
でも、その恩恵は十分に感じつつも、
似たようなモノの多きこと、まことに煩雑です。
それから読めない説明書きも困ったもの、、、
売り場で迷っていると、
メーカーはみすみす優良顧客を逃がしている、
とそんなふうにも感じますね。
そろそろ「中高年良品ブランド」でも立ち上げましょうか。
by e-g-g (2008-09-21 17:44)
私も全く(・.・;)知らなかった。・・・文房具の進化について行けません。
我が家では(^_-)-☆文房具お宅の?
三姉妹とパパさんがこの手のものに強い様です(#^.^#)
私は・・・台所用品ならね~(●^o^●)V
by 甘党大王 (2008-09-21 18:35)
テープ糊、知らなかったです。いろいろあるんですね。
文房具に限ったことではないのですが、似たような商品を
多くのメーカーから発売するため、商品名が紛らわしかった
り形が類似しているものが多くあります。売り手の都合
ばかりで、買い手がそれについていかなければならないのは
どうかと思うこともよくありますが・・。今の日本、何事も
商売利益優先ですからね。 これはちょと違うは話かも
しれませんが。
by akipon (2008-09-21 23:16)
◎甘党大王さん
かつては、店頭でコレナニ?を見つけると、
とりあえず手にとったりしましたが、最近は、、、
けっこう面白いものもあるんですけどね。
◎akiponさん
ニーズを見つけて新しい商品を開発すること、
それ自体は良いと思いますけどね、
ただワカラン製品にならないための工夫も必要ですね。
何のための製品なのか、
しっかり詰めてから世に出して欲しい、と思います。
by e-g-g (2008-09-22 06:55)
◎こぼんさん
◎岸田法眼さん
◎旅爺さんさん
◎てりーさん
ナイス、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-09-22 06:57)
確かにこの2つ紛らわしいですね。もう少し明確な違いがあっても良いと思いますね。しかし僕は逆にテープ糊の存在を知りませんでしたね。修正テープは使うんで持ってもますけどね。でも詰め替えれるタイプを買うんですが、詰め替えが見つからずに、結局新しいものを買うケースが多いですね。何か無駄なんですよね。
by 井上酒店 (2008-09-23 23:29)
◎井上酒店さん
どうやらテープ糊の存在は、
まだあまり知られていないようですね。
まわりでも知らない人が多いです。
「詰め替え」がある商品の「替え」、
これは簡単に手に入れられるようにしてほしいものです。
by e-g-g (2008-09-24 19:02)
◎たねさん
◎takemoviesさん
ナイス、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-09-24 19:03)
まだ新参者の文房具なんでしょうかね。
自分も「スティックのり」と「修正液」を使ってます。
家電製品と違って、文房具はオーソドックスなのが好きです。
とくに「詰め替え」製品は苦手です。覚えられません・・・。
by HEIJI (2008-09-25 23:21)
文具を探すのが大好きなので、糊も修正テープも使っています。
ですが、 e-g-g 様と同じく間違えて購入してしまったことが何回かあります。
さらに、テープの幅も色々あって、詰め替えカートリッジを適当に買ってしまうとサイズが合わないこともあり、また、買いなおすハメになります。
商売上手ってことですか。
メーカー同士も似たようなものを出しているので、詰め替え用のメーカーを間違えることもありました。
もっと、斬新なデザインで人の目を引いてもらいたいです。
by mamire (2008-09-26 16:18)
◎HEIJIさん
「スティックのり」と「修正液」、
現状ではこれが真っ当な消費者の姿ですよね。
そもそも「テープのり」なんて、まったく知りませんでしたから、
だから間違えてもトーゼンなのだ!と思うことにしてます。
◎mamireさん
同じ間違いをされる方がいらっしゃるとは、これはウレシイ!
で、それがフツーですよね~
メーカーは、そのフツーの常識を
もっと認識しなければイケマセン。
by e-g-g (2008-09-26 18:54)
良く分かります!
私は書類に糊を貼ってしまった事があります^^;
by sanjinsai (2008-09-30 14:22)
◎sanjinsaiさん
ハッハッハ!スイマセン、笑ってしまいました。
が、ワタシもやってしまいそうです。
(世に間違える人がいて、ほっとしてます。)
by e-g-g (2008-09-30 18:53)