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空間率・パッケージの話-2 [パッケージの話]

 ある時代まで、土産物には上げ底が多かった。その上げ底の下はだいたいは空気である。かつて子どもに人気のあったプラスティック製の筆箱は、中が二層あるいは三層構造になっていて鉛筆類とは別にブリキ製のコンパスとかボンナイフなどを仕舞えるスペースがあった。あの「下」の隠された空間というのは、もう分かりきったものしか入っていないのに、なにやら秘密めいた空間だった。この筆箱の二層構造、カタチとしては上げ底に似ているが、子供の夢も詰まっているわけだから、ちゃんと役に立っている。ゆえに、純正上げ底ではない。純正の方は正真正銘、空気だけである。

 その空気を減らそう!ということで「空間率」という規制数値がある。商品が入った外箱の容積から、商品の容積を差し引いて残った空間の割合、要するに商品には直接には関係ない部分、これが空間率である。
             20080409_box.jpg
  仮に、サイコロ状の小箱を縦横三つずつ計9個をぴったりと併せてきちっと箱に収めると、この場合の空間率はほぼ0%となる。無駄な空間の生まれようがない。
 ただ、商品のパッケージというのはいつもいつもサイコロ状とか整然としたカタチのものばかりではない。たとえば食品のギフトセットなどでは、カニ缶のような平たい円柱状、水羊羹の缶のような円錐状、ゼリーなどの入ったプラ容器、、、そんな形態不揃い商品群を詰めることもある。
 そんなサイズも体積も違う商品を組み合わせて箱に詰め、しかも空間率を抑えるのは、なかなかタイヘンである。そのセットのメーカーも箱の製造メーカーも、最後は1%の違いに奮闘する。

 この空間率は、自治体の条例などでちゃんと数値が示されている。が、この数値が自治体によって違うのがけっこう厄介だ。たとえば東京都は20%なのに神戸市は15%、この5%の差は大きい。空間率20%であれば、見た目にも美しくセットされたものが、15%をクリアすべくあれこれやった結果、どこか無理のある詰め方になったりする。ともかく、ものづくりの現場では、空間率の数値、販売・デザインの意図、それと製造メーカーの技術、この三つのファクターがせめぎあうことになる。

20080404_box_shikiri.jpg

 きれいに詰め合わされたギフトセット、これは日本特有の習慣とも思うけれど、そこには贈る側の気持ちや、美を求める気持ちも反映されている。無味乾燥に端からギュッギュッと詰め込めば良し、というものでもないと思う。もちろん過剰な演出は避けるべきである。ゴミの量を減らすことも必須条件である。でも、空間率を気にするあまり「間」の役割や良さが消えてしまうのも残念なことと思う。


 上げ底を掴まされて、そんな姑息なことをやっていると結局は客を失うぞ!と思いつつ、騙された気分は直ぐに忘れてしまう。そして、だれも「上げ底無し」なんて期待しなくなる。だから「上げ底は」しぶとく生き残る。この構図、なんだか選挙と政治の世界のよう。


パッケージは次の三つの要件がそろって成り立つ。
 1・包まれるもの
 2・包むもの
 3・包み方
さっぱりしているけれど、これですべて。
上げ底や空間率の話は、「3・包み方」の領域だけど、もちろん「包まれるもの=中身」の質が良いことが前提条件。これはどんな商品のパッケージでも変わらない。
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コメント 25

HEIJI☆

空間率、初めて聞く言葉です。しかも自治体ごとに違うとは・・・。
いろいろな要素が合わさってひとつのパッケージが出来上がるのですね。
それをまとめることは苦しくもあり楽しくもあるんでしょうね。
少し違うけれど、上げ底は食べ物と食器の関係でもありますね。

by HEIJI☆ (2008-04-10 01:09) 

e-g-g

◎HEIJI☆さん
ほかにやはり過剰包装を抑制するために「包装経費率」
といったものもあります。
セット品の中身の金額に対しての包装コストの比率ですね。

まぁ、そんなこんなを頭に入れながら、
過剰にならずにある種のゆとりも欲しい、
なかなか難題です。

ところで、ごく日常的なお弁当などでも、
上げ底に近いものが多いですね、
というより、なんだか増えているように感じます。
あまり度を超すとしっぺ返しがくるんですけどね。
by e-g-g (2008-04-11 16:09) 

e-g-g

◎カフェオランジュさん

◎Krauseさん

◎一真さん

◎ハイマンさん

nice、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-04-11 16:11) 

anan

「空間率」なんていうものが、この世にあるとは知りませんでした。
さらに「包装経費率」というのもすごい!上げ底、過剰包装を防ぐため、これら条例を構築し、しかもこの法律用語を考え出したお役人もすごい!

自分の脳の「空間率」、身づくろいの「包装経費率」を、ちょっと考えたりしているananです。


by anan (2008-04-11 19:13) 

K

自分の脳の「空間率」、身づくろいの「包装経費率」を、ちょっと考えたりしているananさん、もっとすごい!
by K (2008-04-12 01:18) 

masa

初めて知りました〜
空間率。条例まであるなんて〜びっくりです!
企業も色々な問題をクリアしてパッケージが出来上がっているんですね。

by masa (2008-04-12 14:39) 

e-g-g

◎ananさん、そしてKさん
人体は「ヒト」を包み、
身づくろいはその人体を包む、
ともかく、この世はパッケージ。
そして空間率も経費率も、
すべてのパッケージに当てはまるのです。

◎masaさん
消費も生産もどんどん変わっていきますからね、
パッケージも暮らしの色々を映します、面白い世界ですよ。
by e-g-g (2008-04-13 17:36) 

e-g-g

◎デザイン屋さん

◎Nicoli♪さん

nice、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-04-13 17:38) 

マダム・リー

私のブログへのご訪問ありがとうございました。
私も空間率って初めて聞きました。

前のe-g-gさんの仔猫の記事を読んで感動しました。
足を包帯でぐるぐる巻きにされた小さな猫ちゃんが
今では元気になって幸せに暮らしている様子を
見て私も幸せな気持ちになりました。
by マダム・リー (2008-04-13 23:29) 

e-g-g

◎マダム・リーさん
コメント、ありがとうございます。

あの拾いネコの記事ですね。
空間率100%、要するに空の段ボール箱の中に隠れて
遊んでいます。
いまはいたって元気です。
by e-g-g (2008-04-14 16:20) 

masugi

こんにちは。面白いですね~。パッケージを見る目が
変わりそうです♪
by masugi (2008-04-14 18:21) 

響

そんな条例があるって初めて知りました。
最近は凝った造りの箱などが多いようですが
そんな絡みもあったんだー。
筆箱の秘密の空間は懐かしいです。
by (2008-04-15 14:38) 

e-g-g

◎masugiさん
コメント、ありがとうございます。
身の回り、パッケージだらけです、
なかには無駄としか思えないものもありますけれど、
ともかく使う立場できちんと見たいものですね。

◎響さん
こんな条例があるなんて、
ある意味、悲しいことでもありますね。
でも規制がないと、野放し状態、、、
たかが箱、されど箱です(うん?意味不明))))
by e-g-g (2008-04-15 18:57) 

e-g-g

◎奥津軽さん

◎xml_xslさん

◎いろはさん

◎takemovieさん

お立ち寄り、ありがとうございます。
by e-g-g (2008-04-15 19:00) 

daland

おはようございます。
パッケージ製作の世界ってぎりぎりのところのせめぎ合いの世界なのですね。
使う側はそこまで考えていません。
これからパッケージ開いてよく見てみますね
上げ底の空間、秘密めいて面白い世界です。

by daland (2008-04-16 08:25) 

風

「心の空間率」・・・・これだけは余裕を持ちたいですね(^_-)-☆

つまんないもので一杯になって、価値あるものを入れる余裕すらない今日、
そんなことまで考えさせてくれた記事でした。
サンキュー(^^♪
by 風 (2008-04-17 12:33) 

e-g-g

◎dalandさん
どの分野でも作りの現場には、いろんな秘話があるんでしょうね。
でもそんな秘話など知らずに、味わったり、楽しんだり。
それで良いんですよね。

上げ底も、ある意味面白いかもしれない!
そういったことも発想としては捨てたくないものです。

◎風さん
でも「心」の方は、かなり伸縮自在、
気の持ちようによっては、そうとうに広げられるとも思います。
なんて、人様のそう言う話を聞くと、そう思うのです。
いざ我が身の「心の空間率」となると、、、

by e-g-g (2008-04-17 18:27) 

akipon

「包まれるもの」と「包むもの」は気になりますが、包み方
にまであまり気を配ったことがありませんでした。
いろいろな配慮があるんですね。
デパートなどでギフトを購入した時、手際よく包んでくれる
作業にはいつも感心しています。自分では絶対無理です。
by akipon (2008-04-17 21:08) 

こぎん

so-netの不具合のようで、e-g-gさんのRSSが4月からぴくりともしません。
そういう方が複数おります。
困ったちゃんですね~。

上げ底・・・がっかりすることがありますが、
商品を守るのはしかたないし・・・開けた時勝負ですからね~。
ぐちゃぐちゃだと・・・いけないわ~。

先日食べた北海道の海鮮ご飯は・・・具が山に・・・
して、その正体はご飯で上げ底。これもがっくり!
崩れないように運んで来ました~。

by こぎん (2008-04-18 11:24) 

井上酒店

パッケージをこんな風に普段深く考えた事が無い気がしました。
でも、何故か最後は捨てられちゃうんですよね。なんかそうやって考えると、もっと何か利用できたら良いんですよね。
by 井上酒店 (2008-04-18 11:31) 

e-g-g

◎akiponさん
着物、風呂敷、祝儀袋、、、日本は「包む」国です。
機能的に包むだけでなく、そこに意味や配慮、
いろんな想いを込めてきました。
手際よく包む手さばきに、そういった伝統がなにかしら
残っているのかもしれません。

◎こぎんさん
RSSの不具合はワタシの方でもありました。
再登録しても素直にならないケースもあり、もう諦めてます。
食べ物の上げ底はイケマセンね
なにしろ、その恨みはコワイものですから。。。

◎井上酒店さん
用途が終わったとたんにゴミの山、
ちょっと大きなモノを買うと後がたいへん。
それでも紙やプラスティックの再資源化は
けっこう進んでいるほうと思います。
結果、この日本の質の良い資源ごみを、
いま中国が凄い勢いで買い集めていますね。
フクザツな時代です。
by e-g-g (2008-04-19 00:30) 

tak

へー、空間率って、自治体によって
まちまちなんですか。知らなかった。
そりゃ、デザイナーも大変ですねー。

子どもの頃、おまけ入りのお菓子を
買ったら、ほとんどが空気だった
記憶があります。で、メーカー名を見て、
二度と買わないようにする。
で、結局、グリコアーモンドキャラメルとか、
明治のミルクチョコレートとか、
地味だけど、まっとうなお菓子を買うようになる。
そういった意味では、空気を買わされて
だまされたことも勉強でした!

ちなみに、私はおまけ入りのグリコではなくて、
おまけが入っていなくて、数段美味しい
アーモンドキャラメル派でした。
おまけ入りにはトラウマがあります。
by tak (2008-05-08 00:28) 

e-g-g

◎takさん
オマケ付きグリコは、私もよく買いましたよ。
いま、あるんでしょうかね?
ともかく「消費」を覚える良いきっかけだったことはたしかですね。

空間率は、おおよそ15%です。
神戸市だけが、ちょっと厳しいですね。
by e-g-g (2008-05-08 14:33) 

KU

過剰包装のことについて、詳細を調べています。
これってどうやって調べたのですか?
教えてください。
by KU (2010-05-26 11:09) 

e-g-g

◎KUさま
コメント、ありがとうございます。
この記事の要点は、主に私自身が関わっている仕事の場で、メーカーあるいは印刷会社などから、直接に見聞きしたものに基づいています。
もちろん、それらの「生」情報に加えて、各自治体・関係官庁(経済産業省など)や印刷会社、包材関係の会社などの情報も参考にしています。
自治体・官庁に関しては、すぐには見つけにくいものが多いですが、これはこまめに目を通すしかありません。

お訊ねの件ですが、過剰包装のどんな点について調べられているのか、その点が分りかねますので、ちょっと判断に迷いますが、一般的には自治体・官公庁、国民生活センターといった消費者問題関連の団体・組織、そして各企業、それらの条例や事例を丹念に調べることが、まずは基本になるのではないでしょうか?

by e-g-g (2010-05-28 20:27) 

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