進む、進む、勘三郎。 [見る・観る]
平成中村座のニューヨーク公演をテレビで観る。
出し物は「隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)〜法界坊〜」。
実に面白かった。たぶん今年最高に近い番組だった(まだ四カ月もあるというのに)。
*
NHK BS-hi ハイビジョン・ウィークエンドシアター
平成中村座NY公演「隅田川続俤 〜法界坊〜」串田和美演出
(2007年7月21日、ニューヨーク リンカーンセンターでの収録)
「隅田川続俤〜法界坊〜」は喜劇である。
主人公の法界坊は江戸は浅草に住む色と欲におぼれた破戒僧。
ひとりの女性に恋い焦がれ、しかしその想いも叶わず殺人鬼に変貌するという、
まぁすこぶる人間的というか生々しいドラマ。
喜劇の舞台から、これでもかというほどの怨念の世界への転換が見せ所。
全編を通して演じると3時間を超える舞台である。
その詳細を書き出すときりがないので、このへんで。
歌舞伎はそもそも傾く(かぶく)が語源という。
いまは、格式のある伝統芸能というイメージも強いが、
猥雑さや混乱に満ちた人の情念の根本を様式化して演じるところに、その醍醐味がある。
勘三郎は、その異端的な面白さをニューヨークにぶつけたのである。
セリフにも英語がどんどん入ってくる。
客席に下りた法界坊が観客に向かって「どちらから?」と尋ね、
場を盛り上げる演出など、舞台演劇の原点を見る思いがする。
かと思うと、ハムレットの主人公のセリフをそのまま使ったり、
ともかく歌舞伎の自由さを存分に出していた。
(これは、もちろん“演劇通”といわれるニューヨークの観客を意識したものだろう。“ほらね、歌舞伎もシェークスピアも同じでしょ!”と勘三郎がぺろっと舌を出しているような感じがする。お洒落だ)
他にも、歌舞伎一門ではない俳優(笹野高史)の起用、
さらに串田和美の演出。勘三郎の先進性は止まらない。
他の出し物を見ると「連獅子」、「勧進帳」、「身替座禅」がある。
当然のことながら、この春の団十郎のパリ公演、
その「勧進帳」が頭をよぎる。
これも立派な公演だったとは思うけれど、
歌舞伎は格式のある立派な伝統芸能というだけではない、
今日に通用する面白さを秘めた演劇なのだ、
このことを全力で表現しようとする勘三郎に拍手を送りたい。
とにかく、久しぶりにスリリングな舞台中継。
テレビってやっぱり便利だなぁと感じ入った土曜の夜だった。
*
この番組を見てしまったせいで、
日曜の早起きバイクツーリング計画も頓挫。
ま、それも良し。まだまだ暑いし、、、
こんばんは♪
実は…
歌舞伎は今まで真剣に観たことが余り無いんです…
でも…
高校生の頃、課外学習で南座で歌舞伎の鑑賞の機会がありました。
片岡我當さんや片岡秀太郎さんが色々説明してくださったのを
思い出します。
名古屋でも御園座でよく顔見世などがあり、興味があるので
すが、なかなか。。。
片岡仁左衛門(現在)さんが片岡秀夫とおっしゃっていた頃、
私が勤務する会社のCMのイメージキャラクターとして
お嬢さんと出演なさっていたり、都踊りの時にお見かけしたり、
又テレビでも当時よく拝見していたので興味はあり、歌舞伎の
世界に馴染もうとすればチャンスはあったはずなんですが…
ちょっと年齢を重ねてきたので、着物を練習して、歌舞伎を
観にお出かけを…無理かな(涙)
初心者はテレビの中継から見始めるのもいいかもですね!
でも、何を最初に観るのがオススメですか?
by coco (2007-08-28 20:21)
◎aburayaさん お立ち寄り、ありがとうございます。
by e-g-g (2007-08-28 23:44)
◎cocoさん こんばんは
私が最初に歌舞伎に関心を持ったのは『与話情浮名横櫛』(よわなさけうきなのよこぐし)のテレビ中継です。
そう、お富さんですね。
“しがねぇ恋の情けが仇 命の綱の切れたのを
どう取り留めてか 木更津から
めぐる月日も三年(みとせ)越し
江戸の親にやぁ勘当うけ よんどころなく鎌倉の ・ ・ ・
と続く、何とも小気味よい七五調のセリフに、ふと耳が傾いたのです。
このリズムは何なんだ?やっぱり日本語は七五調なのか!?
などと思いながら、だんだんとはまっていったのです。
いつごろから歌舞伎の敷居は高くなってしまったんでしょうね〜
世の中の出来事を面白おかしく舞台に載せる、
興味を引くためには有りとあらゆる工夫をする、
そういったことの積み重ねが歌舞伎なのだと思います。
たしかに時代そぐわないテーマもあるでしょう、
聞きにくいセリフも多々、
あまりの荒唐無稽さに呆れることも、
でも、歌舞伎が生みだした表現のスタイルは、
そのあとの演劇や映画に色濃く反映されています。
見得を切る、というのがありますが、
これは、映画の無かった時代のストップモーションですね。
弁慶の飛び六法などは、さしずめ映画のスローモーションでしょう。
そんな細かいことはともかく、
人の心の下世話さ、可笑しさ、間抜けさ、高尚さ、尊さ、透明さ、
そんなものがびっしりと詰まっているのが歌舞伎と思います。
ストーリーや主題が分かりやすい「歌舞伎十八番」の中のどれかあたりがやはりとっつきやすいでしょうか。
「助六」「暫」「鳴神」「勧進帳」エトセトラ、、、
踊りなら「鏡獅子」「連獅子」「藤娘」、、、
白波五人男なども、格好良いですね。
贔屓の役者を決めてみるのも面白いですね。
私は孝夫時代の仁左衛門に一時はまりました。
あの人は、なんといっても声が良いですね。
とにかく、良く通る声で歌舞伎座の三階席でも良く聞こえるほど。
助六(これは市川家の芸ですが)を演じたときも、
啖呵の切り方、立ち姿、踊り、
そんなこんなが本家の団十郎より助六らしいと思えるほど。
(もちろん団十郎も良いのですが、、、)
共演の玉三郎も美しかったですね。
書き出すときりがありません。
いずれ記事で書きたいと思います。
とにかく、歌舞伎座は銀座四丁目から五分でいける別宇宙です。
ぜひ!幕の内弁当を頂きながら、味わいましょう。
あっ、cocoさんは京都でしたっけ???
by e-g-g (2007-08-28 23:44)
◎テルの風景屋さん お立ち寄り、ありがとうございます。
by e-g-g (2007-08-29 21:00)
え~!知らなかった!平成中村座をTVでやってたんですか!?
勘三郎は大好きな役者さんで、お父さんより上なのでは。
踊り良し、芝居良しです。
この人、付き合っていた女優さんが死んでから、その人の芸魂が乗り移ったのでは、と思います。1年くらいあと、玉三郎と一緒の舞台を見ましたが、完全に玉三郎を食ってました。
襲名披露は、ナケナシの財布をはたいて歌舞伎座へ。このときは玉三郎とのバランスも良く、二人の掛け合いを安心して見れました。うまかった!
仁左衛門も好きですよ。立ち居振る舞いが美しい。歩く姿が奇麗なんです。
またゆっくり芝居談義を聞かせてください。
by anan (2007-08-29 21:29)
◎ananさん
「法界坊」は、父の先代勘三郎も得意としたが、「うちのオヤジのビデオを見たが、つまらなかった。私は古い脚本通りにやるので、こっちの方が良いのでは。ただ、『双面』の踊りはさすがでしたが…」と笑わせた。
と、これは7月7日付の東京新聞の記事です。
ところで、芸魂が乗り移った云々という話し、ワタシはこういうのに疎くて、こんど教えてくださいマセ
最近、芝居談義ができるほど通ってないナァ、歌舞伎座
by e-g-g (2007-08-30 11:07)
こんばんは♪
>あっ、cocoさんは京都でしたっけ???
そうなんですが、私は当時かなり色々追っかけやっていまして、歌舞伎まで手が回らずに今まで来てしまったのです…
それに京都でも私は北のほうなんですよ。だから本当の京都人の人から見ると私なんかは蝦夷かも?(笑)
友人には片岡孝夫さんが好きで『孝夫さん、孝夫さん』と本当にうるさかった?人がいて、私の会社のPR商品をよく欲しがられました…
それに玉三郎も好きな友人が写真を見てはため息をついていたし。
日本の文化をもっと知らないといけないなぁと最近特に思い出しているのですが、eguchiさんのように詳しい方が近くにいないので残念です。
もうすぐ名古屋では顔見世があるようです。
勿論、京都には南座があり、もう何度も何度も前は通っていたのですが…中に入ったのは数回です…お隣のそば屋さんのにしんそばが美味しいです(笑)
でもいつもながらeguchiさんは知識の宝庫ですね。
又記事楽しみにしています。
実は落語も生で聞いてみたいと思い出しています(*^_^*)
by coco (2007-08-30 18:28)
eguchiさん、こんばんは。
子供のころ、家のそばに歌舞伎の口調でサーブする、甘味処がありました。
最初のお水を出す時も、「立田川」とか言いながら出すんですよ。あんみつとかあべかわでもその通り書いてないんです。すべて歌舞伎の演目。細かいことは忘れてしまいましたが、歌舞伎は身近でした。
また思い出したら書きますね。
by anan (2007-08-30 19:28)
◎cocoさん
ワタシの知識なんて多寡がしれてますよ、ホントです。
歌舞伎にしても、いっときはまりましたけど、そう足繁く通っているわけではありません。
ただ、なんていうんでしょうね〜
歌舞伎もオペラも映画も、ドラマ作りに共通する要素がありますよね
ドラマの盛り上げ方だったり、芝居のテンポだったり、
役者の際だたせ方とか、その他諸々
そのあたりの手際が見えてくると面白くなるわけですね
で、たとえテレビの小さな画面(ほんとにうちのテレビは小さいんです)からでも、おっ!こりゃ本物だ!というのが伝わってくると
ググッと引き込まれるわけです
と、なんだかだらだら書きました
ま、こんな感じで見てます。
そろそろ、先週末に録画しておいたワーグナーのローエングリーンも、見なくては
落語は、実のところ生で接してません。
でも、究極のドラマのカタチではありますね
小三治が好きなんですけど、最近どうしてるのかな、と。
あぁ、京都のにしんそば、食べたい!
by e-g-g (2007-08-30 20:55)
◎ananさん
おっと、それはお洒落なお店ですね〜
かつては生活の中に歌舞伎の言葉とか引用とかって、いっぱいありましたね。
いま、ぱっと思い出せませんけど、
日常会話の端々に歌舞伎の比喩がありました。
少なくとも、私の親の世代では共通言語として活き活きと機能していたのでしょうね。
思い出したら、ぜひおしえてください。
by e-g-g (2007-08-30 20:59)
cocoさん、eguchiさん、ananです。
かねてより、一度京都の南座で、歌舞伎見てみたいと思っています。
前は何度も通ってるんですけど、中に入ったことありません。そのあと祇園でお食事なんて、いいなぁ。夢ですが…。
今日ふと思いつき、歌舞伎口調の甘味処跡に行って、昔のことを尋ねました。わかる人はいませんでしたが、大家さんに聞いてもらうよう、名刺を置いてきました。なにか反応があるかも。当時のセリフやメニューが残っていたら、面白いと思うのですが…。
by anan (2007-08-31 14:52)
◎ananさん
きっと店主が大の歌舞伎好き!だったんでしょうね〜
追跡調査、何か見つかると面白い、乞うご期待ですね。
京都、南座、行ったことありませんけど、
こちらも風情がありそうな。。。
by e-g-g (2007-09-01 00:54)
少しだけお邪魔します。
学生の頃、友達と歌舞伎座に毎月通っていたことがあります。新橋演舞場も、建て直す前の劇場にいったことがあります。
詳しいことが憶えられないんですが、常磐津や清元の音、芝居小屋の雰囲気が好きで、それを楽しんでました。
今の勘三郎さん、段々先代に似てきましたね。お父さんは女形はあまりしませんでしたが、今の勘三郎さんが勘九朗さんだったころの「野崎村」の村娘、お光が忘れられません。その時、お染が玉三郎、久松は今の片岡仁左衛門さん(当時の孝夫さん)だったかと思います。
お芝居もコンサートも、エンジンがかかると行くのですが、最近足が遠のいてます。TVで観られればラッキーです。
勘三郎さんも団十郎さんも、益々楽しみですね。
by JF (2007-11-27 13:00)